動画を自撮りする女性

TikTokといえば、若者がダンスを踊っているSNSというイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。

 

サービス開始当時は、投稿されるコンテンツの多くが「リップシンク動画」と呼ばれる口パク動画でしたが、実は今のTikTokはジャンルが広がり、ビジネス面からも見逃せないサービスになっています。

おすすめ機能が優れているTikTok

まず、TikTokについておさらいしましょう。TikTokはバイトダンス社が運営する短尺動画サービスです。最長で3分の動画を投稿することができ、ジャンルはダンス、Vlog(日常を写すビデオブログ)、DIY、料理、教育など、様々なコンテンツが投稿されています。

 

日本経済新聞社が米国アップアニーに依頼した調査(※1)によると、TikTokは、世界のSNSアプリダウンロード数で第1位となっています。TikTokは2021年7月、世界の月間アクティブユーザー数が10億であることを発表、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで人気が急上昇しています。

 

日本国内で見てみると、前述の調査ではLINE、Instagramに次いで3位。10代女性が6.7%と低めであるものの、40代までの男性と女性のユーザーは10%前半になっており、各世代がバランスよくいることがわかります。10代女性が低いことは人口比が少ないからではないかとApp Apeは推測しています(※2)

 

「自分には面白くなさそうだからインストールしていない」「インストールはしたものの見ていない」「子どもに見せられたけどよくわからなかった」といった人も多いかもしれません。

 

TikTokはその人が興味を持ちそうな動画を表示してくれる「おすすめ」フィードが魅力です。でも、あなたの好みを知るまでに少し時間が掛かります。面白いと思った動画を飛ばさずに見たり、好きなキーワードで検索したり、気に入った動画を「いいね」したりしているうちに、だんだんとあなたにとって面白い動画が表示されるようになります。

 

つまり同じTikTokでもユーザーは、それぞれ異なる動画を見ているわけです。興味のないジャンルで人気の動画をおすすめされることもありますが、面白くなければフリックですぐに飛ばせます。この「レコメンドシステム」とスマホ時代のスピード感が人気の理由です。

TikTokで突然売れる小説やドリンク

さて、そのTikTokで最近、本やドリンクなどが売れ始めていることをご存じでしょうか。

 

TikTokはダンスをよくシェアされる場所だったため、ダンスや音楽に強いという特徴があります。瑛人の「香水」という楽曲はTikTokで人気となり、2020年12月のNHK紅白歌合戦に初出場するほどのヒットとなりました。

 

最近では、音楽だけでなく本も売れています。TikTokでユーザーが紹介したことをきっかけに、4年前の小説『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(スターツ出版文庫)が3か月で7.5万部の増刷となりました。出版社はある日、突然実売が跳ねあがっていることで、TikTokでの人気を知ったそうです。

 

同様の事例は、飲料でもありました。トクホ飲料「ファイブミニ」(大塚製薬)もTikTokで人気になり、ある日、突然コンビニの1日の販売数が2倍になりました。こちらもユーザーからの自然発生で、担当者は人気の理由を知るために1日中ネットを調べたそう。30代以上にとってはよく知られているロングセラー商品ですが、若い女性には新鮮に見えたことでヒットに繋がりました。

 

どちらも自然発生で生まれた事例ですが、このようにTikTokがダイレクトにビジネスと結びつく実績が増えてきています。また、自社ブランドの認知向上、人材募集などに役立てている企業もあります。特に若い世代にアプローチしたい場合、TikTokは有効に使えます。

公式アカウントは無料で利用できる

TikTokでは、「映え」や「盛り」はあまり必要ありません。等身大の投稿が人気になりやすいとされています。

 

他のSNSと比較すると、音声をオンにして視聴されることが多いことも特徴です。

 

また、広告も他のSNSのように飛ばされることなく通常の投稿のように自然と視聴されると言われています。TikTokerと呼ばれるインフルエンサーたちの投稿も人気です。

 

TikTokの公式アカウントは、「ビジネスアカウント」と呼ばれます。ビジネスアカウントは、無料で利用することができ、動画の再生時間や視聴回数といったデータや、フォロワー数の増減などが分析できるインサイト分析も見られます。プロフィール情報に公式サイトを設置することができるので、投稿はせずともビジネスアカウントを作っている企業もあります。

ハッシュタグチャレンジとは

企業が広告を出稿する際には、ハッシュタグチャレンジと呼ばれる、同じハッシュタグで似たような投稿を行うイベントと、オリジナルのエフェクト(顔にスタンプが施されるなど)を組み合わせるキャンペーンが効果的だと言われています。具体的な料金と内容は「TikTok For Business」から問い合わせることができます。

 

若者のエンタテインメントツールとして利用されるTikTokですが、今後はビジネス活用も増えていきそうです。自然発生のヒットが多く、TikTokでの正解はまだ模索中の企業が多く見られます。

 

すぐに積極的なビジネス活用に乗り出さなくても、今のうちにTikTokのノリを掴んでおこうと敏感な企業は動き出しています。

文/鈴木朋子

(※1)TikTokがFacebook抜き世界首位 SNSダウンロード数|日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC29ER50Z20C21A7000000/?unlock=1

(※2)TikTok、日米での利用の違いをアプリデータから読み解く|App Ape Lab
https://lab.appa.pe/2020-09/2020-09-23-tiktok-jp-us.html