「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は、最近話題の「お得校」について。いったいどんな学校がどう「お得」なのか、実例をあげながら教えていただきます。
学校ランキングで話題の「お得校」とは
中学受験の情報を扱うメディアでは、「東大合格者数」「医学部進学者数」などさまざまな学校ランキングが発表されています。そのなかでも、最近保護者の注目度が高いと感じているのが「お得校」ランキングです。
「お得校」とは、入口(入学時の偏差値)に比べて、出口(大学進学実績)がいい学校のこと。
6年間の面倒見のよさで結果を出し、人気を集めています。
お得校は、「東大合格者数」といったその学校の成績上位5%の進学実績ではかるものではありません。これは学校の指導力というより、生徒自身の能力と努力によるところが大きいからです。
見るのは、進学実績上位5%ではなく、ボリュームゾーンです。
僕の頭の中でぱっと今「お得校」として浮かぶのは、男子校だと攻玉社、女子校だと頌栄女子学院、普連土学園ですね。生徒をしっかり育てて早慶上智にたくさん合格させています。
もう少し入りやすい学校で言うと、男子校の佼成学園、女子なら桐朋女子。GMARCHにたくさん合格させています。
「お得」な指導方法には個性がある
人気上昇中の「お得校」ですが、その教育内容には、個性があります。大学入試が多様化するなか、それぞれの学校が、それぞれ異なる作戦を持って大学入試に臨んでいるからです。
たとえば、
「小テストや補習をこまめに実施して、学力をしっかり身に付ける」攻玉社、佼成学園、東洋大京北、都市大附属。
「探究学習に力を入れ、論文で総合型選抜(旧・AO入試)を狙う」普連土学園、桐朋女子、恵泉女学園、富士見丘、聖学院。
「海外研修制度などを充実させながら英語4技能を高める」頌栄女子学院、昭和女子大昭和、芝浦工大柏、かえつ有明、東洋大京北、専修大松戸、大宮国際など。
ちなみに英語4技能とは、英語の「聞く、読む、話す、書く」スキルのことで、TOEFL、IELTS、英検などは、この測定を目的にしています。
海外進学や留学を視野に入れている家庭なら、広尾小石川も要注目でしょう。新しい学校なので進学実績は未知数ですが、インターナショナルコースの生徒と交流できるのが魅力です。
また、千葉県や埼玉県、東京都多摩エリアなど、郊外の学校は、放課後学習に力を入れて「塾・予備校いらず」をうたっているところも多い。八王子にある穎明館もその一つですね。
「お得」が合わない子どももいる
開成や灘などの難関校にお得感はないのですが、「自分の興味を自分のペースでとことん追求できる」「ずっと受け継がれてきた行事の盛り上がり」「卒業生の人脈」などの良さがあります。
精神年齢の高い子どもなどは、そうした環境のほうが魅力を感じるかもしれません。むしろ面倒見のよい学校が合わない可能性もある。
そのあたりは、やはり子どもの性格と家庭の方針によって決めることになるでしょう。
面倒見がよく、進学実績を上げているのが「お得校」です。
その「面倒見」の内容は学校によって違うので、学習指導法を見極めた上で、子どもと家庭の方針に合った学校を受験するようにしましょう。