10月、来年春からの保育園の入所申し込みがスタートした地域も多いことでしょう。
育休中などで確実に保育園を希望する人もいれば、保育園にも幼稚園にも空きがありどちらに通わせるか迷っている人もいるかもしれません。
「将来の教育費も考えれば早く仕事につくべきだけど、小さいうちは親と一緒がいいとも聞くし…」と、かんたんに決められない人も多いのではないかと思います。
また、すでにお子さんがいずれかの園に通っている人も、SNSや世間話で「保育園育ちの子より幼稚園育ちの子の方が学力が高い」「幼稚園育ちの子はおっとりしていてすぐ大人に頼る」「保育園育ちの子は性格がきつい」など、通っていた園で子供の将来が左右されるような発言を耳にするとさらに気になってしまいますよね。
そこで今回は、保育園と幼稚園はどう違うのか、実際にお子さんが保育園または幼稚園に通っている(通っていた)ママの体験談も参考に、本当に子供たちの育ち方に違いがあるのかを考えてみました。
保育園と幼稚園はそもそもどう違う?
まずは、制度の面から保育園と幼稚園の違いを確認してみましょう。
保育園は生活と育児を担う場所、幼稚園は教育の場所
保育園を管轄しているのは、人々の生活に関わる業務を担う「厚生労働省」です。
保育園は、勤務中の保護者に代わって子供たちを保育するための「児童福祉施設」という位置づけです。
遊びを通じて人との関わりかたを身につけたり、食事やお昼寝といったお世話をしたりしてもらえます。
対して幼稚園は教育を担う「文部科学省」が管轄しており、保育は家庭で行うという前提のもと、年齢に応じた教育を行う施設…という位置づけとなります。
活動は教育的な目的を持ったカリキュラムに沿って進められ、トイレトレーニングなど生活面のお世話は基本的には行われません。
「認定こども園」も
現在では、2006年にスタートした「認定こども園」制度も存在します。
認定こども園は内閣府が管轄する「教育・保育を一体的におこなう施設」とされており、保護者の働き方を問わず入園できます。
保育・教育の内容は以下の4タイプに分かれます。
・幼保連携型…幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能をあわせ持つ単一の施設として、認定こども園としての機能を果たすタイプ
・幼稚園型…認可幼稚園が、保育が必要な子どものための保育時間を確保するなど、保育所的な機能を備えて認定こども園としての機能を果たすタイプ
・保育所型…認可保育所が、保育が必要な子ども以外の子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えることで認定こども園としての機能を果たすタイプ
・地方裁量型…幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定こども園として必要な機能を果たすタイプ
※内閣府HPより
変わりつつある保育園・幼稚園の区別
サラリーマンの夫と専業主婦の妻というモデルが圧倒的に多かった昭和の時代とは異なり、働き方も家庭のありかたも多様化した現在では、幼稚園・保育園(こども園)のありかたも変化してきています。
保育園向けの「保育所保育指針」(3歳以上児)の「ねらい」や内容を見てみると、幼稚園向けの幼稚園教育要領と全く同じことが書かれています(※保育士/教師、子ども/幼児など呼称のみ一部異なります)。
つまり、どちらに入園しても、その子の成長や学びのゴールは同じところを目指しているということ。
多くの保育園では年長になるとお昼寝の時間がなくなるなど、小学校入学が近付くほど、園での活動や生活パターンの違いはなくなっていくといえるでしょう。
保育園はたくましい、幼稚園はお利口というけれど…
とはいえ、「保育園卒の子は自己主張が強くたくましい」「幼稚園卒の子は行儀がよくおっとりしている」といった評判はときどき耳にします。
はたしてそのイメージは本当なのでしょうか。
ここでは実際にお子さんが保育園や幼稚園に通っている(通っていた)ママたちの体験談をいくつか紹介します。
保育園ママの体験談
「保育園に通う子は、集団の中で生き残っていけないから自己主張が強いというイメージがありますが、5歳の息子はむしろ忙しい私に気を使ってくれることが多いと感じます。専業主婦の姉の4歳の子は、妊娠中の姉がつわりでしんどそうでも、遊んでくれるまで全力でだだをこねているそうで。どっちがいい・悪いではなく、保育園と関係ないのでは…という気がしてます」(Kさん・5歳児のママ)
「いま住んでいるところは待機児童がなく、勤めに出ていなくても保育園に入園できます。それで2歳から保育園に入り、パートを始めました。近所の幼稚園ママが行事の準備に駆り出されたりPTA活動が大変そうなのを見て、保育園でよかったー!と思いましたが、幼稚園は運動会とか音楽会の準備をしっかりやるので、入学後も行事慣れしている感じ。ウチの子は低学年のうちは慣れない練習についていけずに苦労しました(笑)」(Iさん・4年生と6歳児のママ)
幼稚園ママの体験談
「夫の転勤で、上の子が小学校2年生のときに転校。上の子は保育園→学童でしたが、下の子は保育園の空きがなく、私も転居に伴って退職してしまったので幼稚園に通いました。そしたら入学後に下の子に宿題をやらせるのに四苦八苦して…!長女は学童で宿題を済ませてきていたので、こんなに宿題で手こずるとは知りませんでした。子供の性格もあるのかもしれませんが、学習習慣はむしろ保育園→学童組の方が早く身につくのではないかと思います」(Wさん・4年生と1年生のママ)
「保育園の子は性格がキツイとか問題児が多いとかたまに聞きますけど…うちの子の幼稚園では、いつも固まっているママグループが気に入らない人の悪口を言っては無視するというのを繰り返していたため、そこの子供たちも同じように仲間はずれや誰かをいじめて楽しむ様子が見られて問題になりました。想像ですが、保育園の子はママ関係もあっさりしているので、ケンカとかはあっても陰湿ないじめを覚えるというのはなさそうな気がします」(Mさん・5歳児のママ)
結論・個人差のほうがはるかに大きい!
入学前の数年間の過ごし方が違えば、入学直後にはふるまいかたが違うことも当然あるでしょう。
しかしそれは、保育園同士でも規模が違ったり、公立幼稚園と私立幼稚園との違い、さらには園ごと・学年ごとのカラーによっても変わってくるもの。
さらに家庭での過ごし方の影響もとても大きいため、もし保育園と幼稚園のどちらに通っていたかで子供の性格や態度に影響があるとしても、「なんとなく」といった範囲にとどまるのではないでしょうか。
この先も「やっぱり保育園は…」「幼稚園の子って…」という話題を持ち出したがる人に出会うかもしれませんが、できるだけ自分では先入観を持たずに1人1人の子供を見ていきたいですね。
文/高谷みえこ
参考/「認定こども園概要」 子ども・子育て本部 - 内閣府 https://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/gaiyou.html
厚生労働省「保育所保育指針」番号入り全文 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000160000.pdf