「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は中学受験に父親はどう関わるのが望ましいかについて伺います。「まったく無関心」なのも困るけれど、熱心すぎても子どもが追いつめられてしまう気が…。果たして?
中学受験に熱心な父親が増加中!
ここ10年くらい、中学受験に積極的に関与する父親が増えています。
塾の説明会や学校説明会に参加するだけでなく、日々の学習計画をエクセル(表計算ソフト)で細かく立てる「エクセルパパ」の話もよく聞くようになりました。
とくに2020年以降は、コロナ禍でテレワークが盛んになったことで、それに拍車がかかっています。父親が家にいる時間が長くなり、「どれどれ、どんな問題を解いてるのか見てやろう」と子どもの勉強する姿を見てしまうわけです。
そして、「なんだ、お前こんな問題も解けないのか」とかっとなり、子どもや母親に「今まで何やってたんだ」「なんだ、この勉強のやり方は」と責めたてる…。
それで追い詰められ、潰れてしまった子が少なからずいます。
「エクセルパパ」は家族の状況をよくみて
エクセルパパが駄目とは言いません。問題は、子どもの性格や家庭のライフスタイルに合っていないものを押しつけることです。
例えば3人きょうだいの長男が受験だとします。分刻みのスケジュールを父親が作って、冷蔵庫に貼ります。でも、母親にしてみたら、下に小さい子が二人いたら、突発的アクシデントで予定がずれることなんて多々あるわけですよね。
なのに父親が、アクシデントをいっさい考慮せずに、「なんでやっていないんだ」と責めたりしたら、子どもも母親もたまったものではありません。
きょうだいがいなくても、その日の夕食づくりの段取り、子どもの学校の部活や行事などで、夕方のスケジュールが30分ずれることなんていくらでもあるわけです。父親と母親の連携が取れていない計画はストレスのもとにしかなりません。
逆に、そこさえうまくいっていれば、エクセルで管理すること自体は悪くないと思います。
15分単位のスケジュールは無理がありますが、「何曜日はどのテキストの何をやる」を決める程度なら、むしろ子どもも母親も助かるかもしれません。
放任派も大まかな方針はすり合わせておく
昔は多かったタイプで、今もそこそこいるのが、子どもの教育にほとんどタッチしない父親です。
このこと自体は、別に悪いことではありません。「船頭多くして船山に上る」状態になるよりはよほどいい。
問題があるとしたら、子どもの学力や今の学校のレベルを知らずに、「御三家以外は受けさせない」などといきなり無理難題を押し付けてくるときでしょう。
子どもの日々の教育について母親がメインで担当するにしても、要所要所では情報を共有し、大まかな方針は夫婦ですり合わせておくようにしましょう。
大事なのは父親と母親の役割分担
「父親は関わるべきではない」とは言いません。逆に、「積極的に関わるべき」とも言いません。
大事なのは、父親と母親が役割分担をすることであり、関与のバランスをとることです。両方が子どもの受験にのめりこみ、両方が精神的に追い込まれ、子どもを追い込み始めたら、それこそ子どもは潰れてしまいます。
きょうだいがいるなら、保護者のうちどちらかが受験生をみて、もう片方が別のきょうだいに目を向ける。
一人っ子で、どちらかが中心となって関わっているなら、もう片方は控えのポジションでいる。あるいは関与を半々にする。そうやって、関わり方のバランスをとってください。
そして、どんな役割分担をするにせよ、夫婦がお互いをリスペクトしていることが大切です。マウントを取り合うのではなく、お互いの意見を尊重しないと、やっぱり受験はうまくいきません。それは、多くの家庭をみて感じているところです。
中学受験に父親がどこまで関わるかは、家庭それぞれでかまいません。
ただし、情報共有と大まかな方針の共有は必要です。ときどきでいいので、子どもの教育について、しっかり話し合う時間を作りましょう。
監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ