「いざというときに命を守るためには、防災を“非日常”と捉えず、“日常”にしておくことが重要です。
たとえば、電気や水道、ガスのない生活を体験するのも、大切な“防災教育”に。ぜひ家族で実践してみてください」
今回は、国際災害レスキューナースの辻直美さんに、家族で楽しみながら防災を実践するコツを教えてもらいました。
我が家の「防災の日」を作ろう
防災を日常にするためには、身近なことから取り組むことがいちばん。
たとえば、地震が起こったときに物が倒れたりしないように、部屋の片づけをする。防災リュックの中身をチェックする。散歩がてら、避難ルートを確認することも、大切な備えのひとつです。
コロナ禍で外出が難しい今だからこそ、お家時間を利用して防災に取り組んでみるのもいいですね。 おすすめは、家族の「防災の日」を作ること。
思い立ったときに取り組むことも、もちろん素晴らしいですが、できれば月に1度、もしくは2か月に1度「防災の日」を設けてみましょう。
定期的に防災を意識することができ、非日常から身近なものへと変わってくるのではないでしょうか。
ガス・水道・電気がない生活を実践「防災チャレンジ」
「防災の日」には、普段なかなか取り組めないことをぜひ、実践してみてください。
特にチャレンジをおすすめしたいのは、ライフラインである電気・水道・ガスを使わずに過ごすこと。
すべてのライフラインを使わずに過ごすのが難しい場合は、部分的に挑戦するのもいいと思います。
カセットコンロで防災クッキング
はじめに試してほしいのが、防災クッキング。電気もガスも使えない状況で調理するためには、カセットコンロとガスボンベがあると便利です。
まずは、飯ごうや鍋でご飯を焚いてみましょう。ご飯がうまく炊けるようになったら、パスタに挑戦したり、レトルト食品を使ってアレンジ料理を試したりするのもいいですね。
実際に調理する体験を積み重ねていくことで、いざというときの“生き抜く力”につながるでしょう。
1日水3リットルで過ごしてみよう
一般的に、大人1人が1日に必要な水の量は、3リットルと言われています。内訳は、1リットルが手や体を洗うなどの生活用水、2リットルは飲料・料理用水です。
とはいえ、普段の生活で何にどのくらいの水を使っているのかがわからないと、節水も難しいかもしれません。
蛇口を捻って流れてくる水の量は、1秒間に約200cc。5秒間出しっぱなしにするだけで、1リットルの水を使っている計算に。
トイレに関しては、1回水を流すことで約4リットルもの水を使っているんです。 被災時は、水を節約しなければならないため、使い方を工夫することが重要です。
手を洗うときなどは、ペットボトルを使ったシャワーが便利です。ペットボトルいっぱいに水を入れて蓋をして、下から5〜10cmのところに一箇所キリなどで穴を空けると、節水効果バツグンの蛇口が完成。
蓋を緩めると水が出てくるので、水を無駄遣いすることなく利用できます。
水分補給の方法も、コップに注いでゴクゴクと飲んでいては、あっという間に水がなくなってしまいます。非常時、限られた水しかない場合は、工夫しながら水分補給をしなければなりません。
生き抜く知恵としては、ペットボトルのキャップに水を注ぎ、口をつけずに飲む方法があります。定期的に少量のどを潤すことで、感染症のリスクを抑えることもできます。
身の回りのものを照明代わりに
夜間に電気が使えないときのためには、懐中電灯などのライトが必需品。実は、身の回りにあるものでも照明として代用できます。
たとえば、懐中電灯の上に水を入れたペットボトルを置くだけで、明るさが広がるランタンに。 また、非常食として用意しているツナ缶(油漬け)を使ったキャンドルもおすすめです。
缶の中心にキリや缶切りの先などで穴を開けて、ティッシュをこより状にねじって紐のようにしたものを、穴の中に差し込みましょう。
しばらくすると、ツナ缶の油がティッシュの先まで浸透してくるので、火をつければツナ缶キャンドルの完成です。
約1時間ほど、照明の役割をしてくれるだけでなく、火が消えたあとは、おいしくいただくことができます。
このツナ缶キャンドルは、キャンプでも大活躍。子どもたちもとっても喜びます。実は、電気やガス、水道がない生活って、キャンプとよく似ているんです。
アウトドアが好きな人は、キャンプに行く際に、防災についても意識してみるとよいかもしれません。
“失敗”より“経験”が大切!防災を楽しもう
防災チャレンジを実際に試してみると、うまくいかないことがたくさん出てくるでしょう。
はじめはご飯がうまく炊けないかもしれません。水も、途中で使い切ってしまうかもしれません。
でも、それは当たり前のこと。失敗したっていいのです。 うまくいかなかったら、何が原因だったかを家族で話し合う。次はこうしてみようか?と再挑戦してみる。
その経験があってこそ、いざという時、行動できる“生き抜く力”につながるのです。 ぜひ、家族で楽しみながら、「防災の日」に挑戦してみてくださいね。
PROFILE 辻 直美(つじ なおみ)
取材・構成/水谷映美