昨年はコロナ禍で中学入試の面接が中止となり、密を避けるために入試回数が増えるなど大きな変化がありました。2022年の中学入試はどうなるのでしょうか。保護者の心構えについて、進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに聞きました。
2022年はコロナ禍前の入試がベースに
今後どうなるかはまだわかりませんが、現状はコロナ禍でも感染対策を行いながら、以前のような日常を送っている印象です。
塾では対面授業や模試が行われていますし、学校側も感染対策を意識して説明会を開催しています。入試では、昨年中止した面接を再開する学校も少なくありません。
このことから、2022年はコロナ禍前をベースに考える入試となるでしょう。
世間ではコロナ禍で世帯年収が減り、受験者数が減る予想もありましたが、今年は2020年と比較すると受験者数が約10%増加する予測です。
増えるのは、偏差値でいうと真ん中よりも少し下の層。コロナ禍で受験を検討したというよりは、大学入試改革への不安がもともとあった方が多いと思います。
入試回数が増え、併願バリエーションも増加
2022年の入試では、会場の密を避けるために午後入試が増えてきます。結果として、受験生1人当たりの受験回数が増加し、併願のバリエーションが増えることが予想されます。
これはコロナ禍でネット出願の対応が大きく進んだことも要因のひとつ。受験生はぎりぎりまで悩んでから出願できるようになりました。
そうなるとわからなくなるのが倍率です。これまでは1月20日時点で受験生の動向を見て予想していましたが、それができなくなりました。例年は狙い目だった入試日がとんでもない倍率となる可能性もあり、併願作戦は立てにくくなるでしょう。
トータルで考えると、倍率が高くなっても低くなっても、後半の日程は勝負しにくくなります。
1月入試の位置づけは変わるか
例年、雰囲気に慣れるために、2月の本命受験の前に1月入試の埼玉県と千葉県の学校を受験する生徒が大勢いました。
先ほども言ったように、コロナ禍でも日常生活は戻りつつあります。
それでも、新型コロナウイルス感染症にかかってしまえば、入試は受けられなくなる。だから万が一に備え、早めに多くの学校を受験しておこうと、入試を前倒しする家庭は増える可能性があります。
感染症を恐れて1月入試を控えるという読みもありますが、僕は、1月入試の位置づけにおいてもコロナ禍前の2020年の入試と同じような傾向になると見ています。
チャレンジ校より安全校へ出願を
チャレンジ校を多く受けるというよりは、早めに合格を取りに行く家庭が多くなるでしょうね。結果として、全体的に安全志向になるでしょう。そうすると同じ日程に受験者が集中し、一問のミスが合否を分ける状態になることも考えられます。
入試問題では、昨年から中堅校の難易度が低くなった印象があります。コロナ禍で受験生の学習ペースが落ちていることを考慮して出題されているからでしょう。問題の難易度が下がり、簡単な問題で合格できる可能性が出てきたのです。ただし、その分合格点は高くなりますから、受かりやすくなるわけではありません。
コロナ対策を打っておくのが親の役目
子どもは受験もコロナ禍も初めての経験ですが、順応性を持って毎日を楽しんでいます。
むしろ、注意すべきは保護者です。保護者の不安は子どもに伝染します。ナーバスになりすぎないためにも対策をしっかりと打ちましょう。
不安になる理由の大部分は、新型コロナウイルス感染症による、入試への影響ではないでしょうか。
そういう意味では、1月に小学校へ通わせるべきか、悩む保護者は多いかもしれません。また、昨年は有給を取得して、感染症対策をした保護者がいました。感染のリスクを考えて、出勤したら子どものいる家には帰らない選択をする保護者もいるかもしれません。
不安を取り除くためにも、塾にはいつまで通わせるか。受験生がかからなくても、保護者がかかったらどうするかを考えておきましょう。
塾に行けなくなった場合を考えて、勉強方法を確保しておくことも大切です。保護者が見るほかに、オンラインや対面式の家庭教師も人気。塾側も昨年の経験を積んできていますから、オンライン対応などの考えがあるはずです。心配であれば、クラスターが起きた場合や過去問の添削方法などを事前に確認しておくといいでしょう。
入試当日は車移動を選択することも増えるでしょう。昨年は駐車場の貸し出しをしていた学校がありましたが、今年はどうなるかまだわかりません。感染対策を兼ねて前泊する家庭も増えると思います。
2021年は感染状況に応じて、学校側が中学入試の面接を中止するなどの対応を行いました。2022年の中学受験でも同様のことが起こる可能性はありますから、学校の動向も確認しておきましょう。 … 2022年の入試では、併願を考える際に安全校を選択し、早めに合格を取りに行く家庭が多くなると思います。
入試前には子どもを不安にさせないためにも、まずは保護者が自身の不安を取り除く対策をしっかりと行いましょう。
取材・構成/ゆきどっぐ