コロナ禍でアメリカ人の夫と離婚し、ひとり息子と久しぶりに日本に戻った女性の動画配信が話題になっています。22回(!)も引っ越したことがある元看護師の人生観と半生に迫ってみました。
多額の違約金を払って引っ越しをキャンセル
「最近は、京都の一戸建てに引っ越す予定でしたが気が進まなくなり、多額の違約金を払いキャンセルしたところです」
そんな訳ありの近況を語るのは、京都府在住のKeiさん(52)。アメリカで離婚寸前だった昨年5月、YouTubeに「アラフィフ熟年離婚シングルマザーKei」というチャンネルを開設しました。
「身近な人に、私の離婚までの近況報告をする軽い気持ちで始め、2、30人くらいの登録者しかいなかったのですが…」
着の身着のまま日本に帰国したころから視聴者が増え、日常の苦労話などを公開すると、共感するメッセージが多く寄せられるように。
コロナ禍で多様な仕事をする人たちが増えていると、朝日新聞の特集でも取りあげられました。
YouTuberとしての収入のほうが多くなった
「最初は、コロナ禍での無謀な帰国という状況に、興味を持った人が多かったと思いますが、最近は私の好きな手芸や、何気ない日常を紹介するようになり視聴者層も変わってきています」
チャンネル登録者数は2万人を超え、各動画の視聴回数も5万以上。17歳の息子さんと細々と食べていくほどの収益を得ているそうです。
「私はもともと看護師をしていましたが、夜勤を除く日勤のみの勤務でしたら、今のYouTuberとしての収入のほうが多くなりました。
現在のように個人事業主として仕事をするほうが、時間の融通がきき、息子のそばにいることもできるので利点も多いですが、イヤな思いをすることもありますね…」
同じ場所で2年以上、働いたことがない
高知県出身のKeiさんは、子どものころは引っ込み思案で先生から注意される程だったそうです。看護学校を卒業後、高知の病院でしばらく働き、その後、広島県や兵庫県を転々…。
「特に若いころは飽き性というか、知らない所が好きというか、ひとつの場所に2年以上いたことがほとんどありません。
職業柄、仕事も見つけやすく住み込みの職場も多かったので、兵庫の次は大阪に行き、看護学校に入り直した後は神奈川や東京で働いていましたね。
神奈川で出会ったのが、軍関係の仕事をしていたアメリカ人の元夫でした」
転勤が多く結婚後は、フロリダ、ワシントン、バージニア、ハワイや韓国で暮らしていたこともあったそうです。
「ですから引っ越しは苦ではなく、今回も一軒家に移り、猫を飼って本格的なDIYを始める予定でした。
でも、今まで引っ越しが多かったので、1か所にこれからずっと住むのが怖くなったというか…。息子が巣立った後も、ひとりで知らない土地で暮らす自信もなく…」
積極的な愛情表現のなさが離婚原因
新しい環境に移ることに苦労はなくても、生活にはなじめなかった過去があるKeiさん。
「アメリカは車社会で、食事は高くて、おいしくありませんでした。言葉もそうでしたが人との距離感も日本とは違うのでおっくうになり、引きこもりのようになってしまいました。
次第に夫との距離もできて、離婚の原因としては彼と私の思う愛情表現が違うということでした。
アメリカ人的と言えるのかもしれませんが、妻の側からのスキンシップや積極的な愛情表現がなかったのが不満だったようで…。
ただケンカをしたとか嫌いになったわけではないので、今でも連絡は取り合っています
非常にまれなケースだと弁護士も驚いていましたが、私が子どもを引き取って帰国することや財産分与にも同意してくれたので無事、日本に帰国することができました」
“セレブ”“楽をしている”と言われるけれど…
KeiさんがYouTubeを始めたのは、そんなときでした。
「最初はホテル住まいで住民登録もできずに苦労しましたが、その後、京都のUR賃貸物件に落ち着くことができました。
私のことを“セレブ”だとか“楽をしている”と言う人もいますが、まったくそんなことはありません。
YouTuberを仕事とすることで、時間の使い方は自由ですが、24時間YouTubeのネタ作りが頭を離れず、動画の編集も大変なので辞めようと思ったことは何度もあります。
“息子のためにもきちんと働くべき”と言われることもあり、YouTuberへの偏見もあり最近はコメント欄を閉鎖してしまいました」
そんなこともあり、KeiさんはYouTubeのほかに、ほかにふたつの仕事と掛け持ちすることを考えているそうです。
「まずは、手芸の販売とアンティークの修理です。昔から洋服作りやキルトなど手先を使う作業は得意だったので、これを活かした仕事もしていきたいです。すでに売れた商品もあります。
それから、週に数回ですがデイサービスで働くことも考えています。“仕事をしろ”という批判に応えてというわけではなく、好きなことをして食べていくためです。
YouTubeもこれからは、離婚ネタではなくハンドメイドや私なりの“丁寧な暮らし”を発信することを目指したいので、視聴者数が減る可能性もあります。
視聴者数を稼ぐために、自分がしたくないことを無理して発信するつもりはないので、そのときのために、3足の草鞋(わらじ)がいいかなと。
こういうライフスタイルを、ほかの人にもお勧めすることはありません。仕事は仕事、プライベートはプライベートできっちり区切られた生活が向いている人もいると思いますからね」
好きなことをすればストレスや物欲はなくなる
もの作りの道を歩むことに決めたKeiさんは、こんな将来像を描いているそうです。
「私の本当の人生は50代から始まったと思い、これからは好きなことをして生きていきたいですね。
人間は好きなことをしていれば、余計なストレスや物欲がなくなり、それだけお金もかからなくなることがわかりました。
現在の1LDKのマンションも気に入っていますが、終(つい)の棲家を見つけて、みんながこうなりたいと思うような理想の暮らしができればと思います」
国際交流のボランティアもしてみたいというKeiさん。これからは、夫婦問題、異文化コミュニケーションから手芸、看護まで幅広い分野での活躍が期待できそうです。
PROFILE Keiさん
1969年、高知県生まれ。看護師として、広島、兵庫、神奈川などで勤務。2001年に米国人と結婚。‘20年にYouTuberデビュー、離婚。現在は長男と京都で暮らす。
文/CHANTO WEB NEWS 写真提供/Keiさん