「中学受験の正体」をイロハから進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。

 

今回は、中学受験生活を送るなかで、ついわが子や自分自身にプレッシャーをかけてしまう保護者について。そうした保護者の特徴は?プレッシャーから子どもや自分の心を守るにはどうすればいいのでしょうか。

保護者の経験が足を引っ張る

「どうしてこんな点しか取れないの?」と怒り、家庭の空気を緊張させる。「もっとできるはず!」と子どものキャパシティ以上に勉強させる。不安が爆発してしまって、塾の保護者会や面談で泣いてしまう

 

本番が近づいてくると、こんなふうに子どもや自分自身の心を追いつめてしまう保護者がいます。

 

とくに要注意なのが、中学受験経験者です。

 

なぜなら、中学受験経験者のなかには、自分の体験にもとづく思いこみにとらわれている方が少なくないからです。

 

問題の難易度も、問われる内容の方向性も、保護者の時代と今では何もかもが違います。

 

学校の偏差値も激変していて、過去の併願校やここ20年で誕生した新興校が超難関校になるなどしています。

 

それなのに、「こんな偏差値しか取れないのか」「こんな学校を目指すのか」と子どもを責めたりするわけです。

 

僕は、中学受験経験者の保護者には、「自分のときとは比べないでください」と必ず言うようにしています。保護者の方だって、30年前の働き方と今の働き方を比べられたら辟易するのではないでしょうか。それと同じです。

努力型の秀才も要注意

中学受験経験者でなくても、努力型の秀才だった保護者も注意が必要です。

 

こうした人は「受験勉強はこうあるべき」という理想があり、「がんばれば上位校に受かるはず」と思いこみがちです。

 

そして、子どもの受験勉強がその通りにいっていないと、「こんなはずじゃない」「がんばりがたりない」とイライラして、子どもを追いつめてしまうのです。

 

学力というものは、そのベースとなる理解力、集中力、どこまでがんばれるかも含め、人によってまったく違います。

 

子どもと自分はそもそも違う人間であることを肝に銘じて、現実を受け入れるようにしましょう。

 

仮に勉強を110時間やれたとしても、ほとんどの子は偏差値70にはたどりつけません。ほとんどのサラリーマンが、124時間働いたとしても年収1億円稼げないのと同じなのです。

「なぜ受験させるのか」原点に戻ろう

目の前の数字にふりまわされ、子どもや保護者自身の心が追いつめられているときには、二つの方法が有効です。

 

まずは、「何のために受験させるのか」を、改めて問い直すこと。

 

「今狙っている志望校は、保護者である自分のプライドを満たすためのものでは?それよりも、最初はより良い環境を与えたい、部活に6年間じっくり取り組ませたいという気持ちではなかっただろうか?」などと原点に戻って考えてみるのです。

 

それを第一に考え、まずは、冷静さを取り戻しましょう。

 

二つ目は、わが子が「行ける」学校のなかから、「行かせたい」と思える学校を探すことです。

 

偏差値の高い学校=子どもの力を伸ばしてくれるとは限りません。大切なのは、自分の子どもがその学校で、自身の力を伸ばせるかどうか。

 

わが子の個性に合った教育をして、伸ばしてくれる学校を見定めるのが保護者の仕事です。

 

もちろん、考えに考えて、「わが家のゴールは、少しでも高い偏差値の学校に行かせること」なら、死に物狂いで勉強をさせたらいいでしょう。

 

でも、子どもの人生はその先も続くのです。中学受験の先にある長期的なゴールを見失わないようにしましょう。

 

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保護者の経験が、子どもの受験に通じるとは限りません。

 

「なぜ受験するのか」という原点に戻り、わが子の力を伸ばしてくれる学校を見定めるようにしましょう。

中学受験の正体バナー
監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ