オピニオン特集スライダー用画像

再婚などにより、血縁関係のない親子が家族になる「ステップファミリー」。家族のカタチが複雑なぶん、問題が生じるとなかなか解決に至らず、再び離婚の道をたどってしまうケースも少なくないといいます。

 

日本でも数少ないステップファミリーの支援団体の主催者であり、自身もまた3度目の結婚でステップファミリーとなった新川てるえさん。数多くのステップファミリー夫婦の悩みに関わるなかで見えてきたのは、「親子の関係に執着する人ほどうまくいかない」という現実です。

「次こそは幸せに…」と再婚を急ぐカップルの落とし穴

── 「ステップファミリー」の夫婦がぶつかりがちな問題には、どういったものがあるのでしょうか?

 

新川さん: 

ステップファミリーは、それぞれの組み合わせによって多様な家族のカタチがあります。抱える問題もそれぞれ違って非常に複雑なので、ひと言で言い表すのは難しいのですが、夫婦の問題が起こる場合、たいていは子どもに関する悩みが原因となってギクシャクしてしまうケースが多いですね。

 

そもそも離婚に関する相談窓口は日本全国にあるのに、ステップファミリーはそうした場所がほとんどなく、情報も圧倒的に少ない。そのため、有益なアドバイスを得られず、ひとりで悩みを抱えて、離婚を繰り返してしまうケースも少なくないんです。

 

私は、ステップファミリーの支援団体を主宰していますが、圧倒的に多いのが「継子を愛せない」という継子との関係性や「実子と板挟みになって辛い」という悩みです。

 

── とても難しい問題ですね…。

 

新川さん:

そもそも他人の子どもを育てるわけですから、自分のイメージ通りにいかなくて当然だと思わなくてはいけません。ただし「なぜうまくいかないのか」には、れっきとした理由があります。

 

それは、ステップファミリーに関して圧倒的に知識不足のまま、結婚・再婚をしてしまっているということ。

 

ステップファミリーになるのはどういうことか、想定される問題にはどんなものがあるか。どういう心構えで再婚するのが望ましいのか── そうした情報収集や事前勉強をまったくせず、勢いで再婚してしまったがゆえに、壁にぶつかって悩んでしまうケースがすごく多いんです。

ステップファミリーのイラスト

── 再婚するときに「事前勉強が必要だ」という認識を持っている人のほうが少ないかもしれません…。

 

新川さん:

それが問題なんです。ステップファミリーの場合、通常の再婚とは違った家族の形態になるわけですから、慎重に考え、周到に準備をするのは当然のこと。

 

それなのに、“幸せになる!”という思いだけで突き進んでしまい、“想像していたのと違った…”“こんなはずじゃなかった”と肩を落として私のもとを訪れる方が多いんですね。

 

最近、バツ2やバツ3の方が増えてきていますが、それは、ステップファミリーがうまくいかなかったケースが増えているからだと思っています。

「他人の子もわが子のように愛せる」は幻想

── 「継子を愛せない」という悩みには、どんなアドバイスをされるのですか?

 

新川さん:

そもそも他人の子どもを自分の子どものように愛せると思うこと自体が幻想です。でも皆さん、“わが子と同じように愛すべき”“本当の親子のような絆を結ばなくては”と思って頑張りすぎるから、ひずみが生まれて辛くなってしまうんですね。

 

ですから、無理をせず肩の力を抜くことが大事。ステップファミリーの理想形は、「野生の王国」。つまり、群れで暮らす野生動物の仲間のような関わり方や距離感がいいと思っています。

野生動物が理想の家族と説明するイラスト

── 野生動物の集団生活にヒントがあったとは!意外です。

 

新川さん:

どうやっても本当の親にはなれないし、それは子どもだってわかっていますから、いきなりグイグイ距離を詰めて踏み込みすぎると「本当の親でもないくせに…」と反発する気持ちが出てきますよね。

 

欧米では、ステップファミリーのことを「パッチワークファミリー」ともいいます。直訳すれば「つぎはぎ家族」。

 

要はいきなり一枚のきれいな布をつくろうとするのではなく、夫婦の関係性、継子との関係性など、パーツごとにゆっくりと関係性をつくりながら、最終的に一枚にまとまればいい、という考え方です。最初から「家族にならなくちゃ」と焦ってしまうからうまくいかないんです。

 

例えば、付き合って間もないタイミングで子どもを巻き込んでデートをするカップルがいますが、あれは絶対やめたほうがいいです。

一番大事なのは継子ではなく、パートナーとの信頼関係

── そうなのですか!?「子どもが懐いているのが再婚の決め手」というのは、よく聞く話ですが…。

 

新川さん:

子どもは親を喜ばせようとして懐いているようにふるまうもの。ですから、「うちの子と彼は最初から仲が良いから…」といった希望的観測は当てになりません。

 

ステップとしては、まずはパートナーの関係がすごく大切なんです。2人のパートナーシップがきちんと確立したことを実感してから、子どもを入れてデートをする…という具合に段階を踏むといいと思います。

 

そもそも子どもの親になるために結婚するわけではありませんよね。ですから、パートナーとしっかり話し合いができるような関係をつくっておかないと、壁にぶつかったときに話し合いができなくなったり、相手に遠慮してうまくいかなくなってしまう。

 

ステップファミリーこそ、夫婦の絆や信頼関係を築くことが何より大事なんです。

 

PROFILE 新川てるえさん

新川てるえさん
作家・家庭問題カウンセラー。3度の結婚、離婚経験を生かし、1997年に情報サイト「母子家庭共和国」を開設。2014年子連れ再婚家族を支援するNPO法人「M-STEP」の理事長に就任。著書に「子連れ婚のお悩み解消法 ―継子・実子・住居・お金をどうするか」(さくら舎)など。

取材・文/西尾英子 イラスト/えなみかなお