車椅子の母と介護する娘
Care Livingさんとお母さま

6年間の自宅介護の末、2020年9月に90歳のお母さまを看取ったCare Llivingさん(58歳)。

 

16年住んだアメリカから単身Uターンして始まった“ソロ介護”を支えてくれたものとは——?

体重33キロ、歩くこともできなくなっていた母

── お母さまの介護が始まった経緯を教えてください。

 

Care Livingさん:

ひとり暮らしの母が、84歳のときに脳梗塞で倒れて入院したのをきっかけに、当時住んでいたアメリカから16年ぶりに帰国して、実家に戻りました。

 

その1年前に父が急逝したのを機に、日本に帰って母と同居しようかと考えていた矢先のことでした。

 

私はアメリカ人の夫を亡くしてひとりでしたし、働きながら通っていた大学の卒業も決まって、区切りがついたところだったんです。

アメリカ在住時のCareLivingさん
アメリカ在住時のCare Livingさん

── 退院されたとき、お母さまはどのような状態でしたか。

 

Care Livingさん:

50キロあった体重が33キロまで落ちて、噓みたいに痩せてしまっていました。4か月入院して、退院した翌日に転倒して骨折してしまい、また病院に戻ったんです。やっと家に帰ってきたときは、歩くこともままならない状態でした。

 

私は16年間日本を離れていたこともあって、当時はケアマネジャーの存在も知らなかったんです。

 

「要介護って何?」というところから、自宅での介護がスタートしました。

数回の介護離職、スーパーの仕事も続けられず

── Care Livingさんは、当時お仕事をされていたのですか。

 

Care Livingさん:

帰国してから何度か就職はしましたが、結局続けられなくなって離職しました。

 

退院後、母の体重が48キロまで戻ってだいぶ動けるようになったので就職しましたが、1年もたたないうちに母の脳梗塞が再発して、辞めざるをえませんでした。

 

容体が安定したので、近所のスーパーならとまた仕事を始めましたが、母の調子が悪くなると続けられなくなって。それからは母の年金でやりくりしていたので、生活は大変でしたね。

夜中のトイレ介助で睡眠不足になるも…

── ひとりで介護をされていて、いちばん大変だったのはどんなことですか。

 

Care Livingさん:

夜間のトイレの介助ですね。

 

ベッドの横に置いてあるポータブルトイレに移ろうとして転倒し、骨折したこともあったので目が離せなくて。そのうち下着の上げ下ろしも自分でできなくなり、介助が必要になりました。最後の2年間は1時間おきに起こされて、しんどかったですね。

トイレに立つ母親
当時のお母さま

── 1時間おき! 失礼ですが、オムツを付けて休んでもらうことはできなかったのでしょうか。

 

Care Livingさん:

それは、私にはできなかったですね。

 

母は認知に問題がなく、プライドの高い人だったので。もちろん、オムツで朝までぐっすり眠れる方もいると聞きますし、ケースバイケースだと思います。ただ、オムツを付けると、蒸れて皮膚炎になりやすいなど、それはそれで大変なんですよね。

ソロ介護をやりきれたのは、介護サポートがあったから

Care Livingさん:

寝不足が続いてイライラして、母にあたってしまったこともあります。

 

私は、2週間に1度のペースで2泊3日のショートステイを予約して、その日をゴールに設定してがんばっていました。当日は、母を見送ったらお昼寝をしたり、昼間からお酒を飲んだりして(笑)。

 

── ショートステイなどの介護サポートは必要ですね。

 

Care Livingさん:

そうですね。最終的には週4日デイケアに通い、訪問リハビリを週2回、訪問マッサージを週4回お願いしていました。

 

サポートがあったからこそ、母は亡くなるまで寝たきりにも認知症にもならず、最期まで尊厳が保たれたと思っています。

 

── お母さまが亡くなったのは、2020年9月と伺いました。看取られて1年、いまのお気持ちを教えてください。

 

Care Livingさん:

2020年7月末に入院してからはコロナ禍で面会はできませんでしたが、最後はお別れをさせてもらえましたし、90歳の大往生。なんの悔いもありません。

 

母は明るくて前向きで、80歳を過ぎてもひとりでアメリカに遊びに来てくれるほどの旅行好き。東京が大好きで、いつか住んでみたいといつも話していました。父と同じお墓には入りたくないという希望を聞いていたので、納骨は東京のお墓にしました。

納骨時の写真

同居してからはちょっとしたことでケンカもよくしたけれど、それも親子ならでは。大変なこともありましたが、親孝行が間に合ってよかったと思っています。

 

 

大変なこともあったと思いますが、お母さまを介護された日々を振り返り、笑顔で話してくれたCare Livingさん。「親孝行が間に合った」という言葉が印象的でした。次回は、介護に必要な情報をどのように集め、どのようなサポートに支えられたかについてお聞きします。

 

PROFILE Care Livingさん

2020年9月に6年間の自宅ソロ介護を卒業。Twitterやnoteで、介護で工夫していたことや気づいたことなど、介護中の人に役立つ情報を発信している。

取材・文/林優子 写真提供/Care Living