2021年9月1日、デジタル庁が始動しました。

 

新たな省庁の誕生とあって、ニュースでも大きく取り上げられましたね。デジタル庁の発足により、私たちの生活の何が変わるのでしょうか。

デジタル庁ができた理由

日々の生活のなかで、デジタル化によって便利になったと感じるシーンはよくありますよね。

 

今やスマホがあれば、銀行口座への振り込みやキャッシュレス決済での買い物、公共交通機関の利用など、様々なことができます。一方で、デジタル化があまり進んでいないところもあります。そのひとつが国や地方自治体による行政サービスです。

 

私たちは引っ越しをするとき、現住所の役所に行き、転出届を出します。さらに引っ越し先の役所に行き、転入届を出します。会社を休み、書類に書き込みを行い、印鑑を押し、順番を待って対面で手続き…考えただけで疲れてしまいますね。

 

こうした行政サービスのデジタル化は以前から課題とされていたものの、進んではいませんでした。そして新型コロナウイルス感染症に直面、デジタル化の遅れが顕著な課題となったのです。

 

定額給付金や支援金の遅れ、ワクチン予約の手続き、接触確認アプリ「COCOA」など、なぜこんなにも混乱しているのか、政府に不信感をおぼえた人も多いでしょう。

 

こうした問題は、「縦割り行政」が原因のひとつとして挙げられています。そこで、省庁を横断してデジタル化を進める「デジタル庁」を発足し、システムを統合することでデジタル化を推進することになりました。

デジタル庁で何が変わるの?

デジタル庁は各省庁のデジタル部門を改革できるように、組織のトップに内閣総理大臣を置き、すべての省庁を管轄できるようになっています。さらに、デジタル相、デジタル監が配置され、職員は約600人(うち約200人は民間採用)で構成されています。

 

平井デジタル相は、「デジタル庁では3つの柱に重点的に取り組む」と述べています。

デジタル庁で重点的に取り組む3つの柱

  • 行政のデジタル化
  • 医療・教育・防災をはじめ、産業社会全体にわたるデジタル化
  • 誰もが恩恵を享受できるデジタル化

順に解説していきましょう。

 

1つめの、「行政のデジタル化」は、スマホだけで行政手続きが完了するようにシステムを統一化すること。また、デジタル化の基盤となるマイナンバーカードの普及も目指します。

 

2つめは、「医療・教育・防災をはじめ、産業社会全体にわたるデジタル化」。医療や教育に関してもデジタル化が推進されます。健康保険証のデジタル化やデジタル教科書の利用などが進みます。防災におけるデジタルデータの活用や、産業に役立つデータの共有も行われます。

 

3つめは、「誰もが恩恵を享受できるデジタル化」。デジタル庁のミッションは、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」です。デジタル化の推進は、ITが得意な人と苦手な人とで分断を生むことがありますが、こうした事態を起こさずにデジタル化を推進するということですね。

 

今後は、運転免許証のデジタル化、オンライン診療など、私たちの暮らしが楽になる仕組みが構築されそうです。冒頭に挙げた引っ越しも、スマホを使って60秒で手続きが完結するようにシステムが整えられていく予定です。

 

さらに、ガスや水道などの公共料金も手続きできる、「引越しワンストップサービス」も推進されています。児童手当や予防接種など、子育てに関する行政手続きもスマホで完結するような施策が進められていきます。

 

実は、日本のデジタル化は世界で後れをとっています。国連の経済社会局(UNDESA)が2020年7月に公表した電子政府に関する調査では、国連加盟193カ国のなかで日本は14位。「デジタル敗戦」と言われることもあります。

 

しかし、脱却の一手としてデジタル庁が発足しました。私たちの暮らしがデジタル化で便利になり、新たな産業が生み出されれば、国の豊かさにも繋がりそうです。デジタル庁は今後5年で一気にデジタルの基盤を作り上げる目標を掲げています。今後のデジタル庁の動きに期待したいですね。

文/鈴木朋子