生後半年頃までの赤ちゃんだけに見られる「ギャラン反射」を知っていますか?

 

片側の背中をさすると、その方向にお尻をプリッと動かすようすが「かわいい!」と、ママやパパを夢中にさせてしまうとか。

 

今回は、ギャラン反射について、なぜ起こるのか?時期はいつまで?しない場合は?といった疑問にお答えします。

 

また、赤ちゃんには他にもいろいろな原始反射(新生児特有の動き)がありますので、あわせて紹介します。ぜひ参考にして下さいね。

ギャラン反射とは?いつからいつまで見られるのか

「ギャラン反射」は、うつぶせにした赤ちゃんの背骨に沿ってやさしくなで下ろすようにさすると、赤ちゃんがそちら側へお尻をプリッ!と動かす反応のことをいいます。

これは、くすぐったいから逃げようとしている…など、自分の意志でお尻を動かしているわけではなく、人間の赤ちゃんに生まれつき備わった反射運動=「原始反射」の1つだそう。

 

ロシアの神経学者ギャラン博士(Johann Susman Galant)が発見したことから「ギャラン反射」と呼ばれています。

 

実はこの「刺激のあった側に身体を曲げる」という動きは、生まれてからの身体の発達に備え、お腹の中ですでに始まっているそうです。

 

そして脳と身体の連携が進んでくる生後4~6か月には自然に消えていくとのこと。まさに「期間限定」なのですね。

赤ちゃんのさまざまな原始反射

ギャラン反射以外にも、新生児から生後半年頃までの赤ちゃんに共通してみられるさまざまな動きのことを「原始反射」といいます。

 

「反射」とは、自分の意志とは関係なく、何かのときに自動的に出る身体の反応のこと。

 

大人でも熱いものに触れた時などはとっさに手を引っ込めたり、目に水が入りそうになれば目を閉じたりしますよね。

 

また学生時代には、脚を組んで膝を木槌でコンと叩くと脚がぴょこんと上がる「膝蓋(しつがい)反射」の検査を受けた人も多いのではないでしょうか。

 

これらの動きは、外界のできごとが脳に届いて処理されるのではなく、脊髄で命令が下されることで起こります。

 

他の動物と比べて大きな脳を持つ人間の赤ちゃんは、神経や運動が未発達な状態で生まれてくるため、こういった反射が数多く残っています。

 

たとえば次のような原始反射は、育児中にママやパパが見かけたり、検診で医師や保健師が行うのを見たりしたことがあるのではないでしょうか。

モロー反射

新生児から見られ、赤ちゃんの頭を少し浮かせてから落とすような動きをすると、両手をわっと広げて驚いたようなしぐさをします。

 

大昔、赤ちゃんが親にしがみついて移動していた時代、落ちないようにしていた名残りだと考えられています。

 

そのほかにも、とつぜん音が鳴ったときやベビーバスのお湯につけたときなど、日常生活でモロー反射はよく見られるため、育児経験者なら「懐かしい~」と感じるのでは。

 

モロー反射は生後2~4か月には次第に消えてゆくとされていますが、まれに6か月ころまで続くといいます。

足踏み反射

新生児の両脇をかかえて身体を前に傾け足を床につけると、まだ歩けないのに、脚を交互に動かして歩くような動きをします。

 

足踏み反射は生後2か月までに消失するとされています。

吸啜(きゅうてつ)反射

生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ他のことはなにもできなくても、生まれた直後から口に触れたものを何でもくわえて吸おうとします。

 

言うまでもなく母乳を飲むためで、すべての哺乳類の赤ちゃんには吸啜反射が備わっています。

パラシュート反射

「パラシュート反射」は生後9~10か月の赤ちゃんに見られます。

 

赤ちゃんを抱き上げ、うつぶせのまま下に降ろそうとしたり、前に倒そうとしたりすると、パッと両手を広げて身体を支えようとします。

 

この動作は、赤ちゃんがやがて歩き始めたときの転倒に備えて起こってくるといわれており、しっかりと1人で歩けるようになると消失します。

ギャラン反射をしない子もいる?

ギャラン反射は他の原始反射と比べると検診などでチェックされる機会は少なく、母子手帳や産院で渡される冊子などにもあまり書かれていないため、そもそもギャラン反射の存在自体を知らないママ・パパも多いのでは。

 

しかし、中には「うちの子、ギャラン反射がなくて心配…」という人もいるかもしれません。

 

たしかに、今回紹介したような原始反射は、まったく見られない・または逆にいつまでも消失しないという場合、なんらかの発達上の問題が隠れているケースもあります。

 

ただ実際は、背中のさすり方によってたまたま赤ちゃんが反応しなかっただけ…という話もよく聞きます。

 

「一番下の子が生まれたばかりの頃、家族でギャラン反射を見てみたくて背中をさすってみたのですが、長女と次女がやっても無反応。私(ママ)がやっても、ちょっと身体を傾ける程度でしたが、パパがやると面白いようにお尻をフリフリしていました」

 

と、3人のお子さんを育てているIさん。

 

また反射の出方も、片足をひょこっと持ち上げるように動く子もいれば、わかりやすくお尻を振る感じの子、よくよく見るとわずかに動く程度の子などいろいろで、かなり個人差があるようです。

 

「ギャラン反射がない」という場合よりも、消失する時期を大幅に過ぎても続いている場合には注意した方がよいといえるでしょう。

おわりに

今回の記事で初めて「ギャラン反射」を知った!という人もいるのではないでしょうか。

 

新生児~生後半年くらいのお子さんがいらっしゃる方は、安全には十分気をつけながら、この期間限定のかわいい動きを動画を撮影してみると良い思い出になりそうですね。

 

※本記事は、医療機関や公的機関の公開している情報をもとに構成しており、医師の診断に代わるものではありません。お子様の発達や健康に不安がある場合は専門家への受診をおすすめします。

文/高谷みえこ

参考/一般社団法人 日本小児神経学会 https://www.childneuro.jp/modules/about/index.php?content_id=29