「防災グッズの中には、子どもの視点で見て必要なものも加えましょう。特に子どものメンタルを上げてくれるアイテムは、子どもたちが笑顔になれるので必須です」
今回は、国際災害レスキューナースとして活躍する辻直美さんに、子連れだからこそ準備しておきたい防災グッズを教えてもらいました。
防災グッズに子ども用アイテムは入ってる?
家にある防災グッズを思い浮かべてみてください。水や食料など、命にかかわる最低限のものは、ほとんどの人が準備していると思います。
では、そのなかに「子ども用のアイテム」は入っていますか? おむつやミルクは入っているけれど、意外に子ども用のおもちゃなどの娯楽用品は、見落としがちではないでしょうか。
たとえば、避難所で数日間過ごすことになった場合をイメージしてみましょう。
避難所は暗い雰囲気のことが多く、どうしても気分が落ち込みがち。でも、子どもたちは、遊ぶことで不安な気持ちを吹き飛ばしています。
「こんなときに遊ぶなんて」と良い顔をしない大人もいます。しかし、不安と緊張が入り混じってピリピリしているなかで、子どもたちが遊んでいる様子は、周囲を元気づけてくれることも。
以前、私がレスキューで訪れた避難所でも、「子どもたちが遊ぶ笑い声が、希望の光だと感じた」と話してくださった方がたくさんいました。
防災バッグの中身には、子どもが飽きずに楽しく過ごせるようなアイテムを準備しておくことをおすすめします。
子どもがいるからこそ準備したい防災アイテム
大人だけであれば必要がないアイテムも、子どもにとっては非常時を乗り切るために不可欠なことがあります。
ここでご紹介するものは、いっけん優先度が低く感じるかもしれませんが、子どもがいる家庭にはぜひ準備してほしいものばかり。ぜひ、お子さんと一緒に相談しながら防災グッズに加えてくださいね。
機嫌よく遊べるおもちゃ
子どもが気に入っているおもちゃがあれば、防災リュックに入れておきましょう。かさばらないような小さめの人形やブロック、積み木などがおすすめです。
電車の中やレストランでの待ち時間などでも、こういったアイテムがあれば、子どもは夢中になって遊ぶので、機嫌よく過ごすことができますよね。
同様に、避難所など慣れない場所でも落ち着かない、泣きわめく、グズる…といった事態を避けられるでしょう。
手頃なものがなければ、メモ帳と筆記用具、新聞紙などでも十分子どもの遊び道具になります。
食べ慣れたお気に入りのお菓子
非常時は、普段と違った環境でハイテンションになってしまう子どもも多く、ご飯を食べてくれないことが多々あります。そういう場合に役立つのが、ちょっと口に入れられるようなお菓子です。
たとえ避難所に救援物資が届いたとしても、小さな子が好むようなお菓子はまず入っていません。
ぜひ、備えのひとつとして、自分の子どもが好んで食べているお菓子を用意しておきましょう。お腹も持ちますし、何より心がなごむのではないでしょうか。
排泄対策グッズも子連れ防災の必需品
意外に見落としがちなのが排泄対策のグッズです。
子どもはトイレを長くは我慢できません。無理に我慢させることが体調を崩す原因につながったり、ストレスの原因になったりすることも。
また、ライフラインが整っていなければ、おもらしをしても洋服や下着が洗えない、着替えもない…といった事態に陥りかねません。だからこそ、排泄対策は万全にしておきましょう。
ペットシーツとゴミ袋で非常用トイレに
ホームセンターなどで災害時の非常用トイレが販売されていますが、実際に必要な個数をストックすると結構な金額に。
実は、防災用のトイレを買わなくとも、ペットシーツ(ペット用の尿吸収シート)とゴミ袋があれば非常用トイレの代用になります。
ペットシーツは、100枚入りが1000円程度で買え、家計にもやさしいのでおすすめです。
手作りトイレの活用方法
使い方は簡単、トイレの便器にゴミ袋を二重にしてかぶせます。そのなかに吸収面を外側にしたペットシーツを敷き、排泄します。
新聞紙があれば、小さくちぎってひとつかみほどかぶせ、上側のゴミ袋だけを外してしっかり口を結べば、処理も簡単。新聞紙は、消臭効果と目隠しの役割を果たしてくれます。
ペットシーツは、ほかにもいろいろ使えます。水を含むとヒンヤリするので氷のう代わりに。また、嘔吐後の処理にも使用可能です。使い勝手が良いので、防災リュックだけでなく、普段から外出用のポーチに入れておいてほしいアイテムです。
ちなみに、生理用ナプキンやおむつなども、高分子ポリマーが入っているのでペットシーツと同じように使えます。もしも、サイズアウトしたおむつが残っている場合は、防災用として利用するのもいいですね。
子どもの笑顔を守るアイテムを忘れずに
おむつ(排泄対策グッズ)、お菓子、おもちゃ、そしてお茶や水…これらのアイテムは、いつも子どもとお出かけするときに鞄に入れているものと同じではありませんか?
そう考えると、すでにママたちは、日頃から災害対策ができているということになります。
防災は決して面倒でも、特別なことでもなく、日常の延長にあります。
今あるものが防災に使えないかを考え、楽しみながら備えをしていく。この行動こそが、結果的に家族の命を守ることにつながるのではないでしょうか。
PROFILE 辻 直美(つじ なおみ)
取材・構成/水谷映美