「絶対にメッセージを送ったのに、相手に届いていないと言われた」、「急ぎの用件で返信が欲しいのに、まだ上司は確認すらしてない…」。イライラしがちな“情報の行き違い”トラブルをなくすには?プロコーチとして多数の現場をみてきた斉藤由美子さんにうかがいました。
メッセージを読まない側が100%悪い?
最近では、メールやSNS、ビジネスチャットツールなどでのやりとりが普及したことで、「送った」VS「読んでない」とか、「早く返信が欲しい」VS「それならそう伝えてよ」といった行き違いのトラブルが多く起こっています。
メッセージを送った側からすれば、メッセージを読み落とした受け手側に非があるように思うでしょう。しかし、「メッセージの送信」が「相手には伝わっている」と、同義で考えるのは危険です。
そこにあるのは「メールを送った」事実で、「相手に伝わった」わけではないからです。リアクションが返ってこなくても、自分は送ったから“非はない”と、ただ待っているだけでは、仕事が遅れてしまいます。
コミュニケーションで「伝える」ことは大事ですが、一方通行的に伝えて終わりではなく、相手の反応をみて「伝わったか」を意識した伝え方も大事なのです。電話や対面ではないツールでは、相手の反応が確認しづらいので、送った側が注意する必要があります。
例えば、返信が必要ならば、「○日までに返信をください」や、タイトルに「要返信」と添えましょう。返信がなければ、「先日メールを送ったのですが、読んでいただいていますか?」と念押しをする。緊急時には、送信後に電話で一報しておくのも手です。
このような、相手が自分の想定で動いてくれないことも想定しながらコミュニケーションをとるようにすれば、行き違いも少なくなりますし、丁寧な人という好印象を持ってもらえるはずです。
ビジネスチャットツールの使い方をルール化
情報共有の行き違いを防ぐためには、メッセージのやりとりをする仕組み自体に問題がないかも一度考えてみましょう。
ビジネスチャットツールは、ここ数年で導入する会社も爆発的に増えました。気軽にメッセージやファイルのやり取りができ、業務の効率化が期待できます。
一方で、やりとりの量が増えて大事な情報がすぐに流れてしまう問題点があります。時間の余裕がないときにうっかり読んでしまい、あとで返信するのを忘れたり、少し離席しただけでメッセージが溜まり、追うのに苦労した方も多いのではないでしょうか。
また、複数のビジネスチャットツールを使っていたり、1つのツール上にチャットルームが乱立すると、自分が必要な情報がどこにあるのかわからなくなることも。人によっては、追伸的に別の案件の連絡を書き込んでしまう場合もあるかもしれません。
効率アップのためのツールのはずが、業務を余計に複雑化させ、時間のムダやトラブルを招く恐れもあるのです。こうしたトラブルを防ぐためにも、ツールの特徴をメンバーで一度整理しておきましょう。
例えば、「きちんと保存したい情報はメールで送付する」や「別の案件の内容を含めない」などの運用ルールを決めて、共通の認識を作ることが大切です。
ビジネスでは、コミュニケーションに行き違いがあっただけで、業務にもその後の人間関係にも響いてきます。些細なミスが大きなトラブルにならないように、仕組みをつくっていきましょう。
監修/斉藤由美子 取材・構成/大浦綾子