選挙割活動をする小嶋さんたち
写真提供/小嶋深月

センキョ割とは、投票済証明書や投票所の看板写真を、協力店舗で提示すると受けられるサービスのこと。飲食店でのドリンク1杯無料、来店しただけでお菓子がもらえるなど、店舗によって内容もさまざまです。

 

今回は、今まで投票はしていたものの、選挙に特別関心があったわけではなかったと話す小嶋深月さん(大学生)と久永公子さん(主婦)の2人にインタビュー。彼女たちが「センキョ割」活動に参加して見えたものとは?

「何となく楽しそう」がきっかけ

—— 小嶋さんが、センキョ割を始めたきっかけについて教えてください。

 

小島さん: センキョ割の活動をしていた友だちが、去年の都知事選(20207月)のときに声を掛けてくれたのが始めたきっかけです。

 

私自身、もともと選挙には行っていましたが、正直、あんまりわかっていない意識はありました。また、大学では教育学科に在籍していて、授業でも低投票率や社会参加について学んではいたものの、知識はまだまだ不十分。

 

そんな思いがあったところに誘ってもらったので、せっかくだし、センキョ割の活動をきっかけに理解を深められたらいいなと思ったんです。それに、何となく楽しそうな気もして。

 

—— 具体的にどのような活動をしましたか。

 

小嶋さん:

私は小学生のとき、神奈川県の箱根で暮らしていたんですが、いまコロナの影響で箱根の観光業もダメージを受けていると聞いて、自分でも何かできないかと。

 

去年10月に箱根町の選挙があったので、 センキョ割のイベントで街を盛り上げて、近隣や関東の人が訪れる機会を増やし、新たな顧客の獲得につながればいいな、と考えました。

 

具体的には、一軒ずつ店や施設に足を運んで「センキョ割」について説明し、取り組みの賛同者を募ります。

 

また、こちらが話すだけではなく、今地域が抱えている問題点や想いを聞く場面もありました。そうしてコミュニケーションを取っていくうちに、箱根湯本商店街のお土産屋さんをはじめ、『かっぱ天国』(露天風呂・足湯の施設)やホテルなど、いろいろな店舗がセンキョ割に賛同してくださいました。

箱根の店舗を回る小嶋さん

写真提供/小嶋深月

——小嶋さんが箱根に住んでいたからこその企画ですね。

 

小嶋さん:

そうですね。特にやりがいを感じたのは、今まであまりなかった、地域の方々と交流を持てたことです。

 

たとえば「繁忙期なのに思うように客足が伸びない」とか、そんな中でも「来てくださったお客さんに対しては何とか喜んでもらおうと頑張っている」など、地域の方から直接話を聞くことができて、自分でも気づかなかった視点に気づけました。

 

そして何より、今まで以上に箱根に親近感が湧きましたし、今住んでいる場所とは違う感情も深まりましたね。

 

箱根の学校を卒業した小島さんだからこそ出来たセンキョ割。改めて地域への思いや現状についても知ることができました。次に話を伺ったのは静岡在住の主婦・久永公子さん。3人の子どもの母で、動物愛護団体や読み聞かせのボランティアをしています。子どもが幼い頃は、幼稚園から高校までPTAの役員も務めました。

 

久永さんは、学生から社会人など計20人ほどのメンバーで、主に静岡県磐田市を中心に地域の「センキョ割」代表として活動しています。

各地域で選挙割活動は行われている

写真提供/佐藤寛子

選挙を通じて「地域」のことを考える

—— 久永さんがセンキョ割を始めたきっかけについて教えてください。

 

久永さん:

ある集まりで、たまたま市議会議員の友人からセンキョ割というのがあって、その団体の代表にならないかと誘われました。始めは選挙と言ってもせいぜい投票に行くくらい。これといった活動の実績もなく、自分が代表なんてと尻込みしたんです。

 

でも、20年ほど読み聞かせのボランティアをやってきた経験や、自分の言葉で考えて伝えるのは選挙も一緒だと思ってチャレンジしてみることにしました。

 

—— どんな人が集まって、具体的にはどんな活動をされていますか。

 

久永さん:

メンバーは、学生が20人程度、それに社会人が5人ほど参加しています。選挙が始まる数日前から活動を始めて、選挙が終わったらいったん活動を終えます。自分たちがムリのない範囲で活動を続けていますね。

 

たとえば、静岡産業大学の学長さんにセンキョ割について説明したときのこと。学長さんは、若い世代がそういった社会活動に参加することはとてもいいことだと賛同してくださり、生徒さんを紹介してくださったんです。

 

始めは2人の学生さんからスタートし、その後も代々、学生さんの中で引き継がれて今も活動を続けています。

 

私たちの活動は、それぞれの得意分野を活かして、外に出て店舗を回る人、選挙割の事務所のデザインを作る人、SNSの発信をする人など、おおまかに役割を決めて動いていますね。

国政や地方選など選挙が近くなるとミーティングも活発に
写真提供/佐藤寛子

—— センキョ割の活動を通して感じたことはなんですか。

 

久永さん:

始めは手探り状態でスタートしましたが、いざ活動を始めるとこれは一過性のものではなくて、続けていかないと意味がないなと思いました。人育てと言いますか、人が地域や街を支えていることを再認識しましたね。

 

なかには、もともと自分に自信を持てない学生さんもいました。しかし、センキョ割の活動を通して地域の方々と会話をしたり、準備や段取りなどを進めるうちに、少しずつ自信が高まったと聞いたときは、素直に嬉しかったです。

 

また、私たちが活動したからというわけではないですが、この6月の静岡知事選の磐田市の投票率が5%増えて、数字として結果が見えたことは嬉しかったですね。

取材・構成/松永怜