両親がいるにも関わらず片方の親がほとんど1人で育児を担っているようすが、店舗を1人のスタッフで営業するさまに例えて「ワンオペ育児」と呼ばれるようになってずいぶん経ちます。ママ友同士やSNSで「うちはワンオペで~」という話もよく聞きますが、ふと、「パパはお風呂は入れてくれるけど、それ以外はほとんど私。これもワンオペ?」と疑問に思うことがあるかもしれません。

 

そこで今回は、子育て中のママ・パパ50人にアンケートを実施。世間ではどこまでをワンオペととらえているのか、またママやパパは自分の家庭をワンオペだと考えているのかなどを質問してみました。

目次

「ワンオペ」とは?もともとの意味

「ワンオペ」は「ワン(1人)オペレーション(作業、進行)」を略した和製英語です。

 

もともとはチェーンの飲食店やコンビニなどで、深夜など人手のたりない時間帯を中心にスタッフ1人だけに店舗を任せているようすを表した言葉ですが、その後、家事・育児・介護などにも使われるようになりました。

 

なかでも、おもに母親がほぼ1人で子供の世話をする「ワンオペ育児」は2017年の流行語大賞にもノミネートされ、広く知られています。

ちなみに、英語には「ワンオペ」に相当する言葉はないそう。

 

英語圏の国々では両親の一方だけがほぼすべての育児をするというケースは少なく、男女ともに育児を理由に定時で退社したり子供の病気で休んだりするのは当然と考えられているからだそうです。

これってワンオペ?アンケートで聞いてみた

今回は、子育て当事者のママやパパたちは、どこからを「ワンオペ」と考えているのか、アンケートで質問してみました。

 

結果は以下のとおり。

 

  • 平日は1人が家事と育児を担当し、週末は夫婦で分担する…ワンオペ育児だと思う人35%
  • ほぼ1人が育児を担当し、もう1人はたまに手伝う程度…ワンオペ育児だと思う人74%
  • 平日も週末も1人が家事と育児をすべて担当する…ワンオペだと思う人100%

 

週末はある程度分担できていても、平日にずっと1人が子供を見ているのは「ワンオペである」と感じる人が3人に1人はいることが分かります。

 

6歳未満の子供がいる母親の育児時間は平均3時間45分なのに対し、父親はその4分の1以下の49分というデータもあり、先進国の中でもここまで差が開いているのは日本だけという結果に。

 

平日のワンオペで夫婦の片方が負担を感じているのをあきらめてしまうのではなく、パートナーも効率的に仕事を進め残業しなくてもすむような業務改善と、職場側も「仕事で結果を出したいなら育児どころではない」という空気をなくすなどの意識改革が必要だといえるでしょう。

ワンオペ育児がすべて悪いんじゃない。大切なのは

さて、上記のアンケートで「自分自身がワンオペ育児をしている」と認識している人に意見を聞いてみました。

 

すると、こんな意外な言葉も。

 

「ワンオペは大変だけど、食事メニューから読む絵本、叱る基準まで完全に自分の裁量で育児ができて楽しい面もありますよ」(Kさん・3歳児と1歳児のママ)

 

「僕は父親ですが、妻の出張が時々あり、数日間ワンオペ育児をするときがあります。いつもはママママという息子が僕に100%頼って駆け寄ってくるのはうれしいです」(Fさん・2歳児のパパ)

 

と、ワンオペ=悪い、ではなく楽しい面もあるようです。

 

ただ、

 

「普段はなんとかやれてますが、ちょっと体調が悪いときや仕事を持ち帰ってきたときなど、自分に余裕がないとワンオペは辛いですね」(Wさん・5歳児と3歳児のママ)

 

などの声も。

 

そしてもっとも「辛いこと」として共通していたのは次のような内容でした。

 

「平日の夜、夫が飲み歩いているならともかく、仕事で帰れないのだからそこはあきらめてます。それよりもワンオペ育児できついのは、気持ちを分かってもらえないこと。いつも大変だよね、ありがとうと言ってくれれば、いや思ってくれるだけでもいいんですけど…それがないと孤独で辛いです」(Mさん・4歳児と1歳児のママ)

 

「時短家電を揃え、家事も外注したりシッターさんや病児保育を利用したりしてワンオペで乗り切ってきました。ただ夫があまり育児に関心がないので…子供が成長すると、精神的なワンオペも辛いですね」(Yさん・中1と小5のママ)

 

など、実際の育児参加もさることながら、誰かの「大変さを分かってくれる」「ありがとうと言ってくれる」「話をうんうんと聞いてくれる」があればワンオペも乗り切れる!という意見が多かったのが印象的でした。

おわりに

「ワンオペ育児」の大変さは、シングルの人はもちろんですが、パートナーがいる人も、どれだけ相手が育児に関われるかだけでなく、親と子の性格、実家や地域・友人とのつながりなどによっても大きく変わります。

 

特に、コロナ禍で帰省や友人とのランチなども難しくなっている今、少しでも夫婦や気を許せる相手と話したり、インターネット越しにでもコミュニケーションできる機会を作り、「孤独なワンオペ」を回避できるように工夫したいですね。

文/高谷みえこ
参考/「共同参画」2018年5月号 | 内閣府男女共同参画局 https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2018/201805/201805_02.html