「俳句にボクシング、それから…」と話す、戸田菜穂さん。ハマるとどんどんのめり込むタイプなんだとか。話を聞いていると趣味は無限の広がりがあることに気づかされます。
いつからでも、何をやっても自分の世界は広がる!戸田さんが実際に経験してきた趣味について聞きました。
寿司屋での出会いから俳句クラブに
—— 戸田さんの趣味は俳句とのこと。俳句は敷居が高そう…と感じている人も多いかもしれませんが、戸田さんが感じる俳句の面白さとは、どんなところですか?
戸田さん:
日本語の奥深さについて知れることでしょうか。「歳時記」といって、四季の事物や年中行事についてまとめた書物があります。歳時記をひとつ持っていると、初めて知る言葉も出てくるし、こんな言い方もあるの!と新しい発見もあって楽しいですね。
俳句って難しい印象があるかもしれませんが、意外と気軽に始めやすい文学かなと思います。
—— そもそも、俳句を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
戸田さん:
小さい頃から国語が得意で、文章を書いたり、原稿用紙に向かう時間が好きでした。
ある日、お寿司屋さんでイラストレーターの矢吹甲彦さんと偶然お隣に。お話をしていくうちに、「こんな俳句を詠んだ」とか、「あの俳句は面白かった!」といった話で盛り上がると、「じゃあ、今度、『東京俳句倶楽部』(浅井慎平さん主催)があるから来ない?」と誘われたのが、始まりです。
当時、私は24歳でしたが、メンバーには新聞記者、コピーライター、落語家や大学教授など、なかには作家さんもいらっしゃって、普段会えない人たちの俳句を聞くのも新鮮でした。それから今までずっと続けています。
—— ちなみにどういう瞬間に一句浮かんでくるのでしょうか。
戸田さん:
私はボンヤリしながら言葉が浮かんでくるタイプではなく、机の前に座って俳句と向き合わないとできないタイプ。
ただ、普段からいろいろなものを見聞きしているので、その瞬間の一部分を切り取って使ってみたり、季語に取り合わせたり、試行錯誤しながら考えます。1句作るのに5分のときもあれば、1時間かかるときも。
また、句会は、家で1句、当日その場で3句考えます。飲食しながらの会ですが、喋りながらでも、できないとダメだよって言われます。あるときは集中しすぎて「菜穂ちゃん、そんな眉間に皺寄せて考えちゃダメだ」って、言われたことも(笑)。
あと、自分が俳句を作ることだけではなく、周りの人の俳句を聞いているのものも楽しいんですよ。自分が思いつかないような、色気のある俳句を読まれる方もいて、“なるほどなぁ”と思ったり。これがまた、イケてるおじ様方がいい句を作られるんですよ。
—— 戸田さんは、どんな俳句が好きですか?
戸田さん:
私はヒグラシの俳句が好きです。ヒグラシとは、明け方や日暮れにカナカナと鳴く蝉の一種で、初秋の季語としても使われます。ヒグラシの鳴き声には哀れさを感じたり、人の心にも染みるような気持ちになると言われているんです。
もし、私が今即興で俳句を作ったら、「蜩や私は私が好きと鳴く」とかでしょうか。
ボクシングにドハマり。しかしマネージャーが!
—— とても素敵な俳句ですね!ところで、俳句とは打って変わってボクシングもご経験があるとか。
戸田さん:
私は基本的にスポ根。なので、普通にスポーツジムに行って、何となく汗を流してやった気になる…のは好きじゃないんです!それより、多少ハードでも熱いところでしっかりやろうと思って、一時期ボクシングジムに通っていました。
サンドバッグは手にタコができるからやっちゃダメ、ってジムのマネージャーから言われたので、パンチングボールばかり叩いてました。20〜30代の頃ですね。
—— そもそも、なぜボクシングを始めようと思ったのですか?
戸田さん:
漫画『あしたのジョー』が大好きなので、その影響も多少あるのかもしれません。あと、単純に体を動かすのが好きなので。
練習は縄跳びから始まって予想通りハードでしたが、一時期はすごくはまっていました。しまいには、『あしたのジョー』の作者、ちばてつやさんに「菜穂ちゃんへ」と名前付きのサインを書いていただくほどです。
私、熱狂するといつもこうなんです(笑)。ボクシングは1年ほど続けましたが、背中に筋肉がつくほどのめりこみましたね。我ながら、けっこうたくましくなったと思います。
—— 戸田さんは、上品で文科系の趣味がお好きなイメージがありましたが、もともとスポーツもお好きだったんですね。
戸田さん:
学生の頃は『エースをねらえ』とか『アタックNo.1』などスポーツ漫画が大好きでしたし、自分でもテニスやバレーボールをやっていました。もともと負けず嫌いな性格もあるので、何かに夢中になるとスポーツでもなんでも一生懸命なんです。
PROFILE 戸田菜穂さん
取材・構成/松永怜 撮影/坂脇卓也