育児中の皆さんは、パパがお子さんの送迎をしたり、公園で遊んだりしているときに誰かから「イクメン」と言われたことはありますか?
またパパは自分のことを「イクメン」だと思っているでしょうか?
しかし、実はこのイクメンという言葉、最近では男性でも「おかしい」と感じる人が増えているとか。
今回は、アンケート結果も参考にしつつ、「イクメン」という呼び方の是非について考えてみたいと思います。
「イクメン」という呼び方、嫌いな人が75%も
「イクメン」は2010年前後からメディアに登場し、今では厚生労働省のプロジェクトにもなるほど一般化した言葉ですが、2019年に実施されたアンケートでは「どちらかといえば嫌い」と「嫌い」を合わせて75%以上の人が拒否感を示しています。
嫌いな理由は、おもに次のようなもの。
- 女性は育児をするのが当然と思われているのに、男性が同じことをすると賞賛されるのはおかしい
- 夫婦ともに子育てするのが自然なのに、わざわざ言葉を作るのがおかしい
- 男性の職場での負担が重いのに、もっと子育てすべきというプレッシャーを感じる
ただ、イクメンという言葉ができたおかげで、親世代の「男が子育てなんて」という風潮が薄れた、送迎のために仕事を切り上げやすくなった…などのプラスの効果を感じている人も一定数いることが分かっています。
「イクメンっておかしい」と感じる男性も多い
子育てはつねに母親の役目で、たまに父親が「手伝う」と「イクメン」と賞賛される…そこに違和感を抱く女性はとても多いですが、同じように「おかしい」と感じる男性も増えてきています。
お笑いコンビ「ハライチ」の岩田勇気さんは、過去に出演したテレビ番組で
「自分の子供を育ててイクメンって意味分かんない」
と話し、子育て中の女性を中心に「よく言ってくれた!」と絶賛の声が集まりました。
また、2018年にイクメン・オブ・ザ・イヤーを受賞したタレントのりゅうちぇるさんも、インタビューでこんな風に答えています。
僕が特別だと思いません。男がちょっと育児や家事を手伝っただけで褒められるのはおかしい。だって2人の子どもなので。
一般の男性でも同じように考えている人が増えていることが、SNSの発信などからもうかがわれます。
立場でガラッと変わる「イクメン」のとらえ方
今回は、いま子育て中のパパ・ママたちにも「イクメン」という言葉をどう感じるか聞いてみました。
「普段、家事はもちろん、おむつ替えも何もしない夫。本当は、自分の子供だから家にいるときはしっかり世話するのが当然と考えてくれる人なら最高だけど、理解できないみたいなので、イクメンって呼ばれることで気分良く子供と関わったり、世話をしたりできるのならその方がいいかと割りきってます」(Kさん・33歳・1歳児のママ)
「イクメンなんて言われなくても、自分ごととして育児をする。僕だってそうしたいんです…。でも、妻は育休中で24時間頑張ってくれてる。僕は平日は出勤してる。どうしても妻の方が育児のメイン担当者になるのはやむを得ないですよね。自分から進んで何かすると迷惑がられるというか、妻のやり方を邪魔しないようにと思うとどうしても一歩引きがちになっちゃいます」(Eさん・37歳・3歳児と0歳児のパパ)
「家にいるときは、自分にできることを探したり妻に確認したりして、基本的な育児や家事はやっているつもりです。でも、それをイクメンとおだてられるより、普通に”ありがとう””お疲れさま”と言ってもらえる方がうれしいです。自分も妻には感謝の言葉をを忘れないようにしています」(Hさん・30歳・2歳児のパパ)
いま子育てをしているパパ・ママが子供だった時代は、サラリーマンの夫と専業主婦の妻という戦後の高度成長期にもっとも多かった家族の形から共働きで協力して家事育児をする夫婦が少しずつ増え始めた時期にあたります。
そのため、子育てに対するイメージもまだ過渡期であり、家族ごと、夫婦ごとにとらえ方が大きく違うのではないでしょうか。
「イクメン」を進める企業も多いけれど…
現在、男性が仕事への影響を心配することなく安心して育児に関われるような取り組みも進められています。
2022年4月からは、妻が出産した男性社員も産休(出生時育児休業)が取れるようになり、職場側はそれを社員に伝える義務が課せられます。
育休も合わせてかなりの時間をかけがえのない子供や家族との時間に充てられるようになるのは喜ばしいことですが、実際には職場の理解がなかなか進まない会社も多いのが実情です。
おわりに
「母親は24時間育児してもイクハハとは言われないのに、父親が同じことをするとイクメン?おかしい」
「イクメンという言葉で父親が子育てに関わりやすくなるならそれでいい」
比べてみると、どちらの意見も分かりますよね。
今はまだ「イクメン」をおかしいと感じる人とそうでない人の差が大きい時代なのかもしれません。
英語やフランス語やには「イクメン」に該当するような言葉がなく、普通に「父」と呼ぶそうです。
多くのパパが十分な育休を取ったり、定時で帰宅して子供をお風呂に入れたりすることが特別ではない社会になるまで、まだしばらくは「イクメン」という言葉も使われ続けるのかもしれませんね。
文/高谷みえこ
参考/「イクメン」どう思う? - フォーラム:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/opinion/forum/099/
イクメン企業アワード2020|育てる男が、家族を変える。社会が動く。イクメンプロジェクト https://ikumen-project.mhlw.go.jp/company_award/2020/