U30世代に対して、Instagramを中心に政治や社会問題について積極的に発信している「NO YOUTH NO JAPAN」。なぜ若者に焦点をあてるのか、また、積極的に議員とインスタライブを発信する理由とは何か。この団体が行っている活動について、代表の能條さんに話を聞きました。
被選挙権がない世代だからこそ、投票は超重要
—— 「NO YOUTH NO JAPAN」として活動を通して気づいたことはありますか。
能條さん:
私たちの団体は、「若者が声を届け、その声が響く社会へ」との思いから、政治や社会問題に関することをInstagramで発信しています。2021年8月時点でInstagramのフォロワー数は6.5万人。30歳以下の人が自ら考えて行動するきっかけを作っています。
Instagramでは、社会問題に関するガイドブックを作ったり、政治家とインスタライブを行うなど、今の世の中の現状や課題を伝えています。
メンバーは大学生がメインですが、下は高校生から上は30歳手前の方までがメンバーとして参加しています。政策に意識が向く女性ほど危機感があるのか、代表が女性だからなのか、メンバーの9割が女性です。
フォロワーも女性が多く、ジェンダーや選択的夫婦別姓制度、生理の貧困など、女性にとって身近なテーマを多く扱うことも関係しているかもしれません。
また、「NO YOUTH NO JAPAN」では一つの課題に絞らず、幅広いテーマを取り上げています。はじめは子育て支援に興味があった人も、そこから派生して違う課題に興味が広がっていくこともよくありますし、それが私たちの活動の狙いでもあります。
—— ちなみに、「NO YOUTH NO JAPAN」ではなぜ30歳以下をメインしているのですか。
能條さん:
選挙権は18歳からありますが、私が団体と立ち上げたときに実施された参議院選挙は、立候補できるのが30歳以上だったんです。“被選挙権がない”世代は、投票することでしか意思表示できないため、なおさら投票が大事だと思いました。(ちなみに衆議院選挙の被選挙権年齢は25歳)
もちろん、今の若者もいずれ若者ではなくなります。しかし、どの時代になっても、若者の声が届く社会の方が風通しはいい。最新の教育を受けている人たちの意見は大事にしていきたいと思っています。もちろん、自分が高齢者になったときも若者の意見をどんどん聞きたいですね。
——30、40代の人に対して思うことはありますか。
能條さん:
政治参加に関しては、世代は関係ないと思っています。ただ、以前、元オリンピック・パラリンピック組織委員会会長・森氏の女性蔑視に対する発言に対して署名運動を行ったときは、ジェンダーに対する意識は世代ごとに違うと思いました。
20代が「こんな発言は許せない、我慢できない」と思うことを、30、40代の人は我慢することで生き延びてきた。さらにもっと上の世代は、男女雇用機会均等法や、初めての女性正社員の時代だったと思うので、この問題に対して異論すら言えない世代だったと思います。
世代によって世の中の背景も違うので、それぞれの認識があっていいですよね。ただ、今おかしいと思うことは、やっぱりおかしいと声を上げたい。今の世の中を変えていくことは、この活動の積み重ねしかないと思うんです。
インスタで政治家の生の声を若い人に届けたい
——「NO YOUTH NO JAPAN」はどんな思いで活動をしていますか。
能條さん:
1つは、「自分たちが生きたい社会があるなら、そこに向かって作っていこう」という思いが前提にあります。今の社会は良くないけれど、変えられないと諦めている現状に対して声を上げたい。変えたいと思えば、大きくひっくり返さなくても、少しずつでも変えられると思っています。
もう1つは、若い世代の声がもっと大事にされる社会にしたいですね。これだけ少子高齢化の中で、若い世代の声が届かないどころか、若い世代の情報に社会が追いついてない実情があります。
同性婚や夫婦別姓など、私たちの世代の世論調査では大多数が賛成しているけど、全体ではそうでもなかったり、政治の世界ではもっと違う。そういったことが正直苦しいと思う部分もありますね。
——具体的にどんな方法で活動していますか。
能條さん:
まずはインスタグラムグラムメディアの運営です。政治や社会のことを知る機会って意外と少なくて、そんな機会をまずは提供するところから始めたいと思っています。
また、政治家とのインスタライブする企画を実施して、私と議員が会話をする様子をライブ配信します。以前は政治家がインスタライブなんて、考えられなかったことかもしれません。若い世代がいるところに政治家にきてもらって、どんな社会を思い描いているのかを聞いたり、若い世代が直接政治家に声を届ける機会をつくろうとしています。
ライブ配信を通じて政治家に自分の言葉で話してもらい、「とてもいいことを言ってる」とか、「思っていた印象と違うな」など、聴く側に政治家を判断する鑑識眼をつけてもらえたと考えています。街頭演説では、声を掛けたり間近で見るには抵抗があっても、ネット上ならそういったハードルも低いのではないでしょうか。
さらに、若い世代の意見が社会に届けられる組織としての機能も担いたいと考えています。若者の声はまだまだ届きにくい現状があり、若い世代で連帯して、声を大きくしていくことが無視されないために重要だと思っています。
そうして選挙や選挙以外の政治参加の手段を使って政治に声を届ける人が増えていけば、もっと豊かな社会になっていくのでは、と思いながら活動をしています。
PROFILE 能條桃子さん(写真中央)
取材・構成/松永怜