NOYOUTHNOJAPANのメンバー

U30世代に対して、議員とインスタライブに取り組むなどInstagramで政治や社会問題について発信している団体『NO YOUTH  NO  JAPAN』。代表の能條桃子さん(23)は、自身のデンマークの留学が活動の原体験になっていると言います。子どものころから選挙の会話をするデンマークと、政治や選挙の話はタブーとされる日本の違いとは?

ポップコーンを食べながら党首討論を見るなんて!

—— 「NO YOUTH NO JAPAN」は、議員とインスタライブを発信するなど積極的に政治や社会問題について発信していますが、もともとは能條さんのデンマークでの留学体験も影響しているとか。

 

能條さん:

大学3年生のときに、社会や政治、世の中についてもっと学ぼうとデンマークに留学して、日本とデンマークの視点の違いを感じることになりました。

 

たとえば私がデンマークで感じたのは、社会を「作る側」「作られる側」とで分けるのではなく、「みんなで社会を作っている」意識のもと、人々が世の中に関わっているということです。

 

日本では議論が苦手だったり、同質を良しとしますが、デンマークでは議論は当たり前に見る光景でした。しかし、必ずしもその議論に折り合いをつける必要もなく、まずは相手の意見を知ることを大事にしているので、議論へのハードルが低いのかもしれません。

 

さらに、ジェンダーギャップ指数120位の日本に対して、デンマークは14位(2019年)。日本の低投票率に対してデンマークの投票率は80%を超えるなど、日本との相違を多々感じました。

 

—— デンマークの人たちは選挙に対して、どのように向き合っているのでしょうか。日本との違いを感じる点はありましたか?

 

能條さん:

日本の選挙は、候補者について誰かと会話をする機会は少ないですよね。1人ひとり、黙って投票用紙に名前を書いて、投票箱に入れて終わります。街では街宣カーが走っていますが、名前を連呼するだけなので、正直ちょっとわかりにくい。

 

デンマークの選挙ってワクワクするんですよ。みんなでソファーに座ってポップコーンを食べながら、党首討論を見て、あーでもない、こーでもないって盛り上がるんです!

 

普段から友達との会話で選挙の話が出てくるし、選挙期間になると、街中に選挙小屋と呼ばれるスタンドがたくさん建ち並び、選挙に立候補する人の周りに人が集まって政策について話をしたり、質問を聞いたりします。

 

選挙小屋の周りには、大人だけでなく子どもたちも取り囲んでいて、学校の宿題で候補者の政策について聞いてくることが課題となるなど、フラットな雰囲気で候補者とコミュニケーションをとっていますね。

 

また、討論会も毎日どこかで行われていて、大学生向けに大学で開いてくれることもあるんですよ。すると、普段お酒ばかり飲んでいる子が、意外といい質問をするとみんなが拍手したりする場面もあったりします(笑)。

デンマークでの市民の選挙活動の様子

選挙の話をしようとすると「意識高い系」と言われ

 —— そう考えると、なぜ日本は選挙に無関心な人が多いと思いますか。

 

能條さん:

日本では、逆に政治に関心を持つ方が難しい気もしますね。学校や親から選挙について教育を受けてないし、話し合う習慣もない。

 

選挙に対して、共通言語が少ないことも影響しているのでしょうか。たとえば、みんなが知っているドラマや映画の話なら、知っている人の話で盛り上がることができる。でも、選挙の話となると、すらっと名前が出にくいでしょう。

 

デンマークでは政局ごとに主張したいことや特徴を答えられる人が多いですが、日本では政治や選挙について話をすると、「意識高い系」として引かれてしまうんですよね。

 

—— たしかに、そういった意識高いイメージはあるかもしれません。しかし、本来、意識高いことをするのは悪いことではないんですけどね。

 

能條さん:

以前は大学の飲み会でもこういった活動を話すと、友達から「大丈夫?」「新興宗教に入ったみたい」といった反応ばかりでした。「そういう反応が今の社会を作ってるのではないかな」と内心思いながら、心の声として済ませていましたが。

 

それが、ここ最近は少しずつ変化してきて、私たちのInstagramの記事を拡散してくれる人が出てきたり、久しく会っていなかった友達からジェンダーについて話をされたりと、以前に比べてだいぶオープンに話せるようになってきた印象はあります。

 

少しずつメディアの露出が増えてくると、異質とされていたものが普通のものとして捉えてもらえるようになってきたのかな、という印象はあります。

LINEニュースしか見ない若者にも伝えていきたい

 —— そもそも、「NO YOUTH  NO JAPAN」を立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか。

 

能條さん:

2019年の参議院選挙のときに、私はデンマークに留学中でしたが、日本でも選挙をもっとわかりやすく伝えられたら、もっと選挙について理解できて、みんながワクワクするようなものになったらと思いました。

NOYOUTHNOJAPAN作成ガイドブックの一例(2019年)

そこで、デンマーク留学中の日本人の友だちや日本にいる友達を中心に声をかけて、インスタで選挙の解説をつくりました。活動を呼び掛けて、気づけばlineグループのメンバーが400人ほど集まりました。

 

各々がSNSを拡散したり、芸能人や著名人も活動に興味を持ってリツイートしてくれたこともあって、インスタを開設して2週間程度でフォロワーが1万5000程度まで増えました。

 

今回の選挙は盛り上がった!と思ったのも束の間、実際の投票率は過去最低でした。そこで、一時的な活動で終わる予定でしたが、ちゃんと団体を作って本格的に活動をしようと決めました。

 

最近の若者はテレビも新聞も読まないし、ニュースはlineニュースだけ見ている人も少なくありません。私たちの団体が、若者に対して政治や社会問題を発信することで、一緒に社会参加していけたらと思っています。

 

PROFILE 能條桃子さん

2108能條さんプロフ
1998年生まれ。「NO YOUTH NO JAPAN」代表。2019年7月参議院選挙でInstagramメディアを開設し2週間で1.5万人のフォロワーを集める。若者の政治参加、教育や社会制度を学びにデンマークに留学し、19年10月帰国。若者の政治参加を日本でカルチャーにすることを目指している。慶應義塾大学大学院1年生。

取材・構成/松永怜