9/1は、防災の日。この日をきっかけに、「防災のこと」について、いま一度考えてみませんか?

 

インスタグラムや著書『おしゃれ防災アイデア帖』(山と溪谷社)にて、「暮らし目線」の無理ない防災を発信しているMisa(@ruutu73)さんに、「日々の暮らしになじむ防災の備え」について聞きました。

在宅避難も想定した備え「防災リュック以外の視点も」

「お子さんがいらっしゃる場合は、家の外で避難生活を送ることはとてもハードルが高いと思います。考えてもみてください、何日も知らない人が周りにいる慣れない場所で、子どもたちと過ごす。『大きい声だしたらダメだよ』とか言いながら…。私には、無理!と思ったんです(笑)」

 

津波で家が流される、浸水する、揺れで家が潰れる…など、危険性が伴わなければ在宅避難を考える方も多い。

 

「そのため、防災リュックの中身をパンパンにしておくよりも、在宅避難しながら普段の暮らしを継続できるような備え、非常時も家族が不安にならずに家で過ごせる仕組みを考えました」

まずは「水と火と電気」を確保

いざというときの備えがまったくできていない…そんな家庭が、まず用意すべきものは、「水」「火」「電気」の3つ、とMisaさん。

 

「水」はその家庭にあった形態をストック

「『水は、どんなものを備えたらいいですか?』と質問を受けることもありますが、各ご家庭にあったものがいちばんです。

 

量については『1人につき1週間分』とマニュアルにあったとしても、それを100%やるのは大変だったりしますから、それぞれ家族の基準でいいと思うんです。全部が全部頑張らなくても。我が家の場合は『とりあえずしのぐために3日間分』を備蓄しています」

 

Misaさん宅では、普段も飲んでいるペットボトルの飲料水に賞味期限をわかりやすく記載して、置いてあります。備えているのは、2のものと、子どもが飲みやすい310mlの2種類。

 

「火」はカセットコンロの用意を。ガスの燃焼時間の把握を

「災害時、電気は比較的復旧が早く、ガスは時間がかかると言われています。そのため、自宅の環境によっても備えは変わります。もしキッチンがガスコンロの場合は、カセットコンロやボンベが必要な備えです」

 

ボンベの燃焼時間は、「1本およそ60分」。それが知識としてあるだけで、あとどれくらい使えるか、という目安に。そこから、自分の家族構成に応じた必要本数が見えてきます。

 

「また、備蓄を普段から使って慣れておくことが重要です。『ローリングストック』という考え方ですね」

 

例えばボンベを備えていても、ずっと使っていないものに火をつけるのは怖いものです。保存状態にもよるものの、ボンベの使用期限の目安は7年以内と記載しているメーカーも。普段の暮らしで使いながら、不足したストック分は買いたして備えるのがこの「ローリングストック」という方法。

 

「日頃から使っていれば、『もし電気が止まってもカセットコンロなら10分ほどで簡単にごはんが炊ける』と。そうした経験があると、やむくもに食べ物をストックしなくても大きな安心材料になると思います。ちなみに、カセットガス10本は無印良品のワイドのファイルボックスにおさまるサイズなんですが、そうした収納もセットで考えられるといいですね」

 

「電気」はモバイルバッテリーとライトが必須

「停電に対する備えとしては、モバイルバッテリーとライトが必須です。ですが、充電をせずに置いておくだけだと、いざというときに役に立ちません。わが家では家で充電する時もモバイルバッテリーを使用し、いつでも充電を満タンにしています」

 

普段の暮らしに組み込むことで、災害時に収納場所を探す必要もなくなるそう。

 

「明かりについては、停電=懐中電灯という考えがなんとなくありますが、今はもっと便利なものがたくさん出ています。おすすめは、広範囲を照らせるランタンや両手が空くヘッドライト。子どもを抱っこしたり、両手で荷物抱えたりしながらの避難もしやすいですから。ランタンは、普段から間接照明として置いといても素敵だな、というものを取り入れるのもいいですね。災害用にとしまい込むのではなく、普通の暮らしでどんどん使うのがいいと思います」

 

「水」「火」「電気」。その3つから備えについて考え始めると、関連した必需品が頭に浮かび、必要なものが次第に見えてくるそう。

子どもがいる家庭での備え

小さな子どもがいると、想定外のことが起こったりします。そのために、私たちは何を備えておけばいいのか?伺いました。

 

ビッグサイズのオムツと携帯トイレ

「まず、トイレ関連。自分ひとりなら避難所のトイレがどれだけ汚くても我慢できますが、子どもがいるとそれも難しいと思うので…トイレのことは考えておくべきです。自宅で避難する場合に、水が止まって自宅のトイレが使えなくなった場合にも使えます。

 

子育てでオムツが余ったら、備えとして活用するのがおすすめです。わが家では余ったビッグサイズのおむつは、もしもの備えにしています。その場をしのぐなら小学生くらいまでオムツが使えたりもしますし、ゴミ袋と合わせて使えば非常用トイレとして活用できます。防臭袋も持っておくと安心です。また、携帯トイレを備えておくのもいいでしょう」

 

高いところのインテリアを見直す

「備蓄のほか、災害時に注意したいのは、物の落下です。子どもと一緒にいるときは、地震が来たらパッと抱きかかえ避難させることができますが、ある程度の年齢になってくると、買い物に行く間だけお留守番してもらうということもありますよね。

 

その間に、もし地震が起こったら…。そういった想定もしておいてください。我が家では、寝室は落ちてくるものがないから何かあったら逃げてね、などと、普段から子どもたちに教えたりしています。

 

また、高い場所に置くインテリアを見直しました。昔は割れやすい素材の雑貨を飾っていたりしましたが、災害時は落ちてきて怪我をしても、すぐに病院に連れて行ける状況ではありません。飾るものは極力割れない素材を選び、飛んできそうなものを全部撤去。どうしても飾りたい…という場合は、安全なコーナーなどに。これは災害時というよりは、日常で意識するべきこと。おのずとモノを選ぶときの視点も変わりました」

 

「災害への備えでいちばん大切なのは、『自分の頭で考えること』。例えば、誰かのおしゃれな暮らしを見てマネしても、続かない…ということってありますよね。それって、やっぱり自分の暮らしに合ってないから。自分が心地いいと感じるものは何かと考えてみると、意外と続きやすかったり。それは、防災も同じことだと思います。普段の暮らしに備蓄をグイグイ取り込む『ローリングストック』方式を、ぜひ取り入れてみてください」

 

PROFILE @ruutu73さん

無理なく続けられる備えを発信している整理収納アドバイザー。「シンプルに簡単に」という整理収納の観点から、そして小さな子どもを持つ母親目線から防災を考え、発信している。著書に『おしゃれ防災アイデア帖』(山と溪谷社)。防災専用アカウントは、@kurashi_bosai。

取材・文/松崎愛香