9/1は、防災の日。この日をきっかけに、「防災のこと」について、いま一度考えてみませんか?

 

「日々の暮らしになじむように」という観点から、そして小さな子どもを持つ母親目線から、防災を考え、情報を発信しているMisa(@ruutu73)さん。著書『おしゃれ防災アイデア帖』(山と溪谷社)でも、暮らしを楽しみながらもしもを支える防災のアイデアを発信しています。

「持たない暮らし」で、被災して震える思いを

かつてはシンプル&ミニマルライフを実践していたという、@ruutu73さん。「極力モノを持たない」という信念のもと、ストックを持たない生活を送っていたといいます。

 

「家からちょっと歩いたところに、24時間空いているスーパーもコンビニもあります。もし困ったときはそこに買いにいけば何でも手に入る、という感覚で当時は生活していました」

 

もちろん、水も、何も、用意していなかった…。そんなときに、2018年の大阪府北部地震を経験しました。

 

「大阪府北部地震が起きた当時、子どもはまだ、4歳と6歳でした。上の子が小学校1年生になったばかりで、下の子はまだ抱っこして走れるぐらいの頃です。

 

地震が起きたのが、朝の8時くらい。結構大きく揺れました。ちょうど上の子が登校したばかりだったので心配で、慌てて子どもを追いかけて学校まで様子を見に行きました。学校では校庭で児童が待機させられていて、そこに続々と保護者が様子を見にきていました。

 

『怖かったね』なんて話を交わしていたら、あるお母さんが、『万が一に備えて、お風呂の水を溜めてきたよ。阪神淡路大震災のときも最初は水が出ていたけど、だんだん茶色く濁ってきてそのうち止まってしまったみたいだよ』という話をしていて。そんなことも考えてもみなかった私は、自分の知識の無さにハッとしたんです」

 

「どうしよう…水も溜めてないし、備えてもいない。もし水が止まったら、飲み物がない!」と、Misaさんは慌ててコンビニに走ったといいます。

 

「向かったコンビニは割れ物が散乱し、開いてなかったんです…。びっくりしました。別のコンビニに走ったら、営業してはいたものの、水はすっからかん。カップラーメンやパンやおにぎりなどすぐ食べらられるものや、私がこの瞬間欲しい!と思うもの、ごっそりなくなっていたんです。『まだ地震が起きたばかりなのにこんなに早く?こんなことになるんだ…と、震える思いをしました」

 

幸い、自宅の水が止まることはなく、大きな被害はありませんでした。ただ、自分の行動に激しく後悔をしたというMisaさん。

 

「自分だけなら我慢できるし、自分だけなら遠いところにお世話になることもできる。でも、幼い子どもを2人抱えて、彼らの命を守れるのだろうか。どうして備えをしておかなかったんだろう。次、何かあったときのために、備えておかなければならない」

 

そのためには知識が必要だ、と思ったといいます。

私ができることは、何か。我が家に必要なものは、何か。

インターネットで『防災』『備え』などとリサーチすると色々な情報が出てくる割には、どれも似通っていて、当時のMisaさんにはどうも腑に落ちなかったそう。

 

「ついこの間までは、『モノを持たない』ミニマルライフを目指していたからこそ、場所もとるしお金もかかる備蓄に前向きになれず…。しかも実際役に立たなかったら、意味がない…ということにずっと引っかかっていました。

 

一方で、そもそも地震って本当にまた来る可能性があるのかというところも疑問になり調べました。そうすると、予測とかではなく、どこにいても地震が絶対に来るということは証明されているという事実を知りました。

 

そうなると、備蓄は必須。それなら防災リュックをただ置いておくのではなく、私らしい備えってなんだろう、と考えるように」

「暮らし目線」の防災をNPO法人から学んで発信

防災について本格的に学ぼうと、まずは市役所に問い合わせたそうです。

 

「その際に紹介されたのが『防災士』の資格でした。ただ、私みたいな普通の主婦が防災士の資格を取るってなかなかハードルが高い。しかもそこまでガッツリしたプロの視点を求めているわけでもない。

 

もう少し『暮らしに寄り添う』防災を学びたい、そう思って周りにもその思いを伝えていたんですよね。そうしたら『たまたまテレビで見たよ』と、NPO法人プラスアーツの存在を友人から教えてもらったんです。彼らの考え方が、とても暮らしに寄り添ったもので、早速問い合わせをしました。そこで認定講師の資格をとりました。

 

資格取得がきっかけで地域や幼稚園などで防災講座を開くようになり、その後、『おしゃれ防災アイデア帖』の出版にいたります。

 

「シンプルライフにまつわる本を出したときの編集さんに防災の話をしたら、『もっと発信できる道を見つけましょう!』と言ってくださって。『防災を暮らしをセットで考える』ということを強く伝えたかったので、ありがたい機会をいただきました。『備蓄を買って終わり』とならない、そういった防災のコツを、本では綴っています」

 

PROFILE @ruutu73さん

無理なく続けられる備えを発信している整理収納アドバイザー。「シンプルに簡単に」という整理収納の観点から、そして小さな子どもを持つ母親目線から防災を考え、発信している。著書に『おしゃれ防災アイデア帖』(山と溪谷社)。防災専用アカウントは、@kurashi_bosai。

取材・文/松崎愛香