模試の結果

かつては「裕福な家庭」「優秀な子」のためのもの、というイメージが強かった中学受験。しかし最近では、多くの家庭がチャレンジするようになっています。

 

気になるけれど、何から始めればいいのかわからない…。そんな保護者向けに、「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。

 

今回は、小学6年生秋から本格化する外部模試について。保護者はどういう心構えで臨めばいいのでしょうか?

その模試は子どもの学力にあっているか

受験学年になると、さまざまな模試を受けることになります。

 

外部模試とは、塾内テストではなく、外部生も交えて受けるもの。一般的には、受験生のなかの立ち位置や志望校の合格可能性をはかるテストとしてとらえられています。

 

首都圏では、サピックスの「サピックスオープン」、四谷大塚の「合不合判定テスト」、日能研の「全国公開模試」、首都圏模試センターの「合判模試」が有名です。また、各塾では難関校を対象にした志望校別の模試も実施しています。

 

まず知っておきたいのは、模試によって受ける受験生の学力層が違うということ。

 

学力層は、首都圏模試、四谷大塚と日能研、サピックスの順に高い傾向にあります。

 

大手塾の生徒はそれぞれの塾の模試に加えて、自分の学力に合った模試、ライバルがたくさん受けるような模試を受けましょう。

 

四谷大塚や日能研の模試での偏差値が50を切っている場合は、首都圏模試も受けた方がいいですね。サピックス生でも、成績が下位4分の1なら首都圏模試を受けることをおすすめします。

 

偏差値50以下というのは、学力がその模試を受けている層の真ん中より下ということ。その子にとってその模試自体が「難しすぎる」または「相性が悪い」可能性があります。

 

レベルの違う模試を受けることで、その子が得点できない理由を分析してください。

模試は偏差値を見るものではない

外部模試を受けるときに、保護者が忘れてはいけないのは「模試はアウトプットの練習だ」ということです。

 

模試が返却されると、保護者はどうしても「全体の中での立ち位置(順位)や偏差値」を気にしてしまいます。しかし中学受験の模試は、受験生が小学生であるがゆえに、そういったものの測定が難しい。

 

例えば、外部生内部生が一緒に受ける模試では内部生の方が圧倒的に有利です。環境や問題形式に慣れているかどうかが、子どものテスト結果に大きく影響するからです。

 

とくに夏前は、塾によって学習の進度も違う。その点からも内部生は優位です。

 

中学受験の模試は、受験に必要な学習を一通り終える小学6年生の9月以降になって、初めて公平性が保たれるものなのです。

保護者は「全体の流れ」を把握する

保護者は採点結果ではなく、全体の流れをチェックしてあげましょう。

 

「計算ミスが多いな」「最後の難問にこだわりすぎて、見直しができなかったんだな」といった目線でのチェックです。そして「計算ミスがもったいないから、最後の10分は必ず見直しに使おうね」とアドバイスできれば効果的です。

模試の復習に意味がない理由

模試の復習には、あまり意味がないと思っています。

 

例えば「理科で浮力の問題が全然できなかったから、浮力の復習をしなきゃ」と思うかもしれませんが、実はその分野が志望校ではまったく出題されない可能性もある。

 

重点的に学ぶべき内容は、志望校によって変わってくるので、苦手の克服は過去問に取り組む際にやればいいでしょう。

模試の結果が壊滅的だったら

模試は場慣れの練習とはいえ、「想像を絶する低い偏差値」「ほとんど白紙で壊滅的」で、何からどうすればいいのかわからないという場合もあるかもしれません。

 

そうした不安は塾の先生に相談してください。ある程度の塾では、データや経験にもとづき、塾生の立ち位置をだいたい把握しています。保護者が模試の結果で一喜一憂するのではなく、プロに相談するのが一番です。

 

第一志望の合格可能性が20%以下など、成績が芳しくない場合も同様です。子どもに直接あれこれ言わず、その成績を持って塾の先生と今後の対策を話し合いましょう。

志望校別模試を全塾・全回分申し込むべき理由

上位校に関しては、その学校に特化した「志望校別模試」が各塾で実施されています。該当する学校を志望している場合は100%受けてほしい。

 

理由は、一般的な模試よりも合格判定の精度が高いからです。

 

記述の採点など、家庭での自己採点が難しいものを、客観的にやってもらえるのもメリットです。

 

複数の塾で実施しているのなら、とりあえず申し込みだけは全塾・全回分の申し込みをするのがベスト。もしスケジュールの都合がつかず受験できなかったとしても、問題は入手できます。

 

志望校別模試をやるような上位校は、問題に癖があることが多く、さらには過去問の数にも限りがある。より多く実戦を積む意味でも、問題はできるだけ多く手に入れておいた方がいいでしょう。

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模試の結果が返ってきたら、保護者は全体の流れをチェックし、アドバイスする。

 

「模試は場慣れの練習」ということを忘れずに、「偏差値」や「合格判定」の数字に一喜一憂しないことが大切です。

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監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ