一般的に、悪いイメージの強い「ネガティブ思考」。

 

もし育児中のママやパパに「お子さんには、ポジティブ思考とネガティブ思考どちらになって欲しいですか?」と聞けば、大部分の人がポジティブ思考を希望するのではないでしょうか。

しかし子育てする側のママは、意外とネガティブ思考の自覚があったり、「ポジティブに考えられない」と悩んでいる人も多いようです。

 

なぜ育児中にネガティブ思考になりやすいのかを考えてみると、そこには思わず「なるほど…!」とうなずいてしまう理由がありました。

「ネガティブ思考」とは?

そもそも、「ネガティブ思考」とはどのような意味でしょうか。

 

英語の「negative」は、消極的・否定的な様子をあらわし、ネガティブ思考は「なにごとも悪い方に考える」という意味になります。

 

よく似た言葉に「マイナス思考」もあります。

 

ネガティブ思考とマイナス思考には厳密な区別はなく、どちらも

 

  • 過去に起きたことに対し、悪い意味づけをしてしまう
  • 現在の状況を否定的にとらえてしまう
  • 未来に起きることを悪い方に予想し「失敗したらこんな悪い状況になる」と不安を抱く

 

といった特徴があります。

育児ストレスはネガティブ思考になりやすい!?

過去に、20代から60代以上と幅広い年代の男女を対象に「あなたはプラス思考ですか、マイナス思考ですか」とたずねたアンケートによると、自分がプラス思考寄りだと考える人が全体の44%だったのに対し、マイナス思考寄りと考える人は26%でした。

 

ところが、30~45歳の働く女性に限定した別のアンケートでは、「ネガティブ思考になってしまうことがある」と答えた人が全体の60%に上り、全世代と比較すると2倍以上も多いことがわかります。

 

もちろん上記の35~45歳の女性が全員育児中というわけではありませんが、子育て世代の女性がネガティブ思考になりやすい傾向は読み取れるのではないでしょうか。

 

育児中にネガティブになりやすいのには、次のような理由が考えられます。

睡眠不足

東洋大学の松田教授によると、人は「レム睡眠」中にストーリー性のある夢を見ることで昼間のできごとを記憶として整理・定着し、怒りや悲しみなど負の感情を鎮静するといいます。

 

しかし睡眠時間が短いとレム睡眠も短縮され、その結果、本来行われるはずの記憶や感情の調整が十分にできずにネガティブな感情が残ってしまう…と考えられているそうです。

 

3時間おきの授乳や夜泣きのある乳児期はもちろん、職場復帰後は、毎日終業後に子供のお迎えと食事やお風呂を済ませて寝かしつけたあと洗濯や掃除などの家事もあり、慢性的に睡眠不足…という人はとても多いのではないでしょうか。

疲れとストレス

睡眠不足に加え、育児は体力のいる大仕事です。

 

1人でももちろん大変ですが、2人3人と子供をワンオペで育てるのは、いくら子供がかわいくて幸せだとしても体力的に大きな負担なのは間違いありません。

 

また、イヤイヤ期やトイレトレーニングといった忍耐力が求められる時期の子育ては、精神的にもストレスがいっぱい。

 

さらに子供が保育園で熱を出せば仕事の段取りを考えて休みを取らなくてはならず、子育て期には多方面でストレスが絶えないといえるでしょう。

 

ある研究では「ストレスフルな状態のときには、嫌なことやネガティブなことを繰り返し思いう浮かべやすい」という結果が報告されています。

無理にポジティブ思考にならなくていい

ここまで読んで、

 

「それじゃ子育てしている限り、ずっと私はネガティブなの?」

 

とイヤになってしまった人もいるかもしれません。

しかし、無理にポジティブになろうとしてもうまくいかないのもまた事実ではないでしょうか。

 

以前にも紹介しましたが、日本人には、遺伝的にセロトニンを運ぶ神経伝達物質(セロトニントランスポーター)が少なく、失敗した場合のことを優先的に考えてしまう「悲観型」の人が多いそう。

 

災害の多い環境や、慎重で控えめな人が評価される国民性などがその原因ではないかといわれています。

 

そして育児といえば、予期せぬアクシデントがつきもので、わが子に事故やケガが起きないか目を配る日々の連続です。

 

それならいっそ、ちょっとネガティブなくらいのほうが子供を危険な目に遭わせなくてすむ!ととらえてみては。「ポジティブになれない…」と自分を責めずにいられそうですよね。

おわりに

お笑いコンビ「オードリー」の 若林正恭さんは、自身の著書の中で、「ネガティブを潰すのはポジティブではない。没頭だ。」と述べています。

 

育児中には映画やスポーツなどの趣味に好きなだけ没頭するのはなかなか難しいかもしれませんが、ある人にとっては一生懸命仕事をすることがそれに当たるのかもしれません。

 

またある人にとっては、パパとお子さんが公園に行っている1時間に漫画を読んだり、お花を飾ってお茶を飲んだりすることで「ネガティブでない時間」が生まれると思います。

 

そんな「ネガティブでない時間」が毎日少しずつでも作れるように、夫婦で話し合い工夫していけるといいですね。

文/高谷みえこ
参照/プラス思考の人とマイナス思考の人、どちらが多いか調査 アンケート結果 : 何でも調査団(@niftyニュース)https://chosa.nifty.com/relation/chosa_report_A20130412/2/index.html
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『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』若林正恭 著/角川文庫