「いまネットで話題の〇〇だけど」と職場で話したら、「よく知らない」と言われてしまったこと、ありませんか?自分はニュースアプリやSNSで何回も目にしている話題なのに、なぜ反応が薄いのだろうと不思議に感じますね。
これにはネット情報ならではの理由があります。
今後ますます加速する情報社会では、私たちはネット情報の伝達の特性を知っておくことが大切です。
便利だが偏りやすいネット情報
ネットサービスのほとんどは、その人が欲しい情報を優先して表示するように作られています。
私たちが見ているニュースアプリ、TwitterやInstagramなどのSNS、検索サイトでの結果が表示される順番、YouTubeやサブスクリプション形式の動画配信など、同じサービスを使っていても、表示されている内容は人によって異なるのです。
利用される情報はサービスによって異なりますが、例えば過去に検索したキーワード、よく見ているカテゴリ、フォローしているアカウント、いいねやコメントでリアクションしているアカウントの情報が分析されています。そのおかげで、私たちは欲しい情報にすぐたどり着くことができ、関連する情報をおすすめしてもらえます。
とても便利なシステムなのですが、最近ではメリットよりもデメリットが注目されるようになっています。それは、「エコーチェンバー」と「フィルターバブル」と呼ばれる現象が起きるからです。
エコーチェンバーとフィルターバブルとは
エコーチェンバーとは、SNSなどで自分と似たような考えや趣味嗜好を持つ人たちばかりが集まることにより、その意見が正しいと信じ込む現象です。
自分の考えを発信すると似たような意見が返ってくるため、閉じた空間で音が反響する状態に似ているとして「エコーチェンバー(反響室)」の言葉が使われています。
冒頭の例もそうですが、SNSでは同じカテゴリに興味を持っている人や、似た価値観を持っている人をフォローしています。あるネットの記事を誰かが投稿すれば、それについての意見や感想はほぼ同じ。内容に感銘を受ければシェアします。似たような価値観を持つ人たちの間では何度もシェアされるため、次第に自分の考えが大多数と同じ意見だと勘違いし、偏ってしまうのです。
しかし、Aさんが「評価が高い」と感じた記事でも、Bさんはまったく目にしていないことがあります。なぜなら、「フィルターバブル」によってそれぞれの見ているコンテンツが異なるからです。
フィルターバブルとは、個人の検索履歴などをサービス側が学習することで、見たい情報が優先され、興味を持たない情報が見えなくなること。自分の考えの「バブル(泡)」に入り込み、外部が見えなくなってしまう状態を指しています。
「ニュースアプリを開けばダイエットの話題ばかり。みんなダイエットが気になるのね」と思ったら大間違い。以前にダイエット関連のニュースを閲覧したからかもしれません。
以前見たジャンルが優先して表示されることは、何となく推測できますよね。問題は、見えなくなってしまった情報です。
新聞やテレビであれば様々なカテゴリの情報が目に入り、「このスポーツ、意外と楽しそう」というような出会いがあります。しかし、フィルターバブルの中にいると気づくことができません。ネットでは、自分が興味を持たない情報は自然には入ってこないので、自分の価値観がアップデートされる機会を失ってしまうのです。
ネットで正しく情報を得るためには
いつでも手元にスマホがあることで、私たちはたくさんの情報に触れています。でも、エコーチェンバーやフィルターバブルにより、偏った情報のなかにいる可能性も。どうしたらいいのでしょうか。
まずは、SNSでの対策です。SNSでは自分の好きなアカウントをフォローしていたいですよね。それは変えなくてもかまいません。でもフラットに情報を発信しているアカウントも追加でフォローしましょう。おすすめは大手メディアのアカウントです。複数フォローしておくと、世の中一般の情報が手に入ります。
また、SNSで見かけた情報をうのみにせず、自分で調べなおすことも大切です。誰かの意見を読むよりも、調査データを検索する習慣を付けましょう。
SNSを見ていると「新型コロナウイルスのワクチン接種後、副反応でみんな発熱している!怖い!」と感じてしまいますが、発熱していない人は投稿していない可能性が高いのです。副反応についての調査データを検索して確認すれば、正しい情報を得られます。検索するときに、自分の意見が正しいと感じてその情報ばかりを選択する「確証バイアス」に陥ることもありますので、できるだけ冷静に。
そしてニュースアプリや検索サイトの情報が偏ってきたなと感じたら、アプリを再インストールしたり、検索履歴を消す方法があります。ニュースアプリで履歴をリセットできない場合は、複数のアプリを使うなどして情報の偏りを防ぎましょう。
「ニュースはSNSで十分」「同じ考えを持つ友人たちだけいればいい」といった意見も悪くはないのですが、情報を取捨選択する際にはリスクをはらみます。ネットの情報は自分の意志と関係なく絞り込まれているケースがあることを忘れないようにしましょう。
文/鈴木朋子