書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称:ビリギャル)の著者・坪田信貴先生に、親が子どもに言ってはいけない言葉を伺います。今回は子どものテストの点を見たあとの言葉がけについて。ヘタをすると、将来にわたって禍根を残すことになるかもと ——。
── 「テストの点を見てもうちょっと頑張れと言ってはいけない」と先生は著書でご指摘されていました。よく言われてきましたが、何と言うのが良いのでしょう。
坪田先生:
「(テストの点を)どう思ったの?」と聞きます。こちらではなく、本人がどう評価しているのかをとらえない限り、親が指導しても響かないですよ。
もしかしたら、90点だったことを本人は喜んでいるかもしれないし、100点を取ろうとして90点だったことを悔しがっているかもしれない。友達との勝敗、先生からの指摘など、点数をめぐっての悲喜こもごもがあるかもしれない。
それがわかって、受け入れてから、結果に対して分析なりをしないと効果って出ないと思う。
「次は頑張りなさい」という言葉は、「私は何もわかっていないけど、『とにかくやりなさい』」と言っているのと同じ。
仕事でも何もわかっていない上司が「とにかく頑張れ」と言ってきたら全然、尊敬できないし、なんだったら馬鹿にされると思うんですよね。親も同じです。
── テストで98点とったのに「2点はどこに行ったの」と言われて育ち、自己肯定感が低くなった人の話も聞きます。そこから失敗が怖いと思ってしまうそうで。
坪田先生:
そうなんですよね。子どもにそう言う親は「あなたにそれができるの」という話にもなってきますよね。
親がそこまでできたのかと。そのときは、親は評価者だから上司的な立ち位置なんです。子どもも小さいうちはそれを受け入れているんです。
面白いのは子どもにとって親はスーパーマンなんです。でも子どもが年齢を重ねれば、親って普通の人だなって気づくじゃないですか。
── 大人になってみるとなんであんなに怒られなければならなかったんだろうと思いますね。
坪田先生:
そうですよね。普通の人であればまだいいぐらいで、冷静に考えると日本人の半分は偏差値50以下ですからね。偏差値ですから。そう考えたとき、半分の確率で普通以下の学力の人になるわけじゃないですか。
── たしかに。
坪田先生:
そう考えたら、子どもを偉そうに評価する親は、その反発で子どもが大人になってからバカにされますから。
ずっと親から欠点を指摘されてきたら、立場が変わると同じことをされるわけです。こんな諸刃(もろは)なことはないんじゃないですか。
子どもの自己肯定感とか下げつつ、成功しても自分の存在が危うくなるという。
── それを避けるために、親は子どもに「一緒にこの計算してみないとか」とやってみると。
坪田先生:
子どもを手助けする姿勢を親がやってきたら、今度親が年寄りになってきたら、その立場になるわけですよ。
「ご飯もなんでまともに作れないの」と子どもから言われるんじゃなくて、「お母さんもそうなったよね、手伝うよ、一緒にやっていこうね」となるか、どっちがいいかですよ。
将来、親に復讐するようになるか、ならないか
── テストひとつじゃないんですね。将来の親子関係が関わってくるんですね。
坪田先生:
そうです。子どもから復讐されてしまいますよ。
さらに、子どももダブルバインド、板挟みになって苦しむわけです。親孝行しないといけない自分がいる反面、散々叱られたり、馬鹿にされ、自己肯定感を下げられたので、もう嫌だと。
それってすごい不幸なんですよね。だから、親を避ける方向になりがちです。
── 教え子でもそういうお子さんを見かけますか?
坪田先生:
いちばん上の教え子はもう39とか40歳ですが、いますね。子どものころ、そう言われた子は家にあまり帰らない。電話が親からかかるとイラッとすると言っています。そうなりますね。
── 親に言われた言葉で呪いにもなるんですね。
坪田先生:
そう、親が子どもに「鼻が低いね、高くなれ、高くなれ」と遊びのつもりで言っているかもしれないけど、それがすごいコンプレックスになったりするじゃないですか。
── 橋の下から拾ってきたとか、ありますよね。
坪田先生:
そうそう。親がコミュニケーション下手なんですね。
—— でも、その行く末を考えると、下手のひと言では済ませられないですね。
PROFILE 坪田信貴(つぼたのぶたか)
取材・文/天野佳代子