東京五輪のスケートボード女子ストリートで、日本人最年少金メダリストとなった西矢椛選手(中央) と、銅メダルの中山楓奈選手(左)。2019年の「FISE」にて。
女子ストリートで、日本人最年少金メダリストとなった西矢椛選手(中央) と、銅メダルの中山楓奈選手(左)。2019年の「FISE」にて     ©FISEHIROSHIMA2019

日本勢メダルラッシュの要因は?

東京オリンピックでは、スケートボードやBMX、スポーツクライミングなど都市型(アーバン)スポーツが初めて実施され、日本勢も続々とメダルを獲得。

 

特にスケートボードは、5個のメダルを獲得するいっぽう、選手同士の仲の良さや、テレビでの独特の解説も話題になりました。

 

そんなストリートカルチャー発祥で、伝統的スポーツとは異なると言われる競技はどんなものなのか。

 

魅力や注意点などを、日本スケートボード協会の事務局長・横山純さんにうかがいました。

 

—— 今大会、スケートボードはメダルラッシュに沸きました。

 

横山さん:

協会として組織的な強化はしていませんが、日本人独特の器用さと練習に対する真面目さが好結果につながったのだと思います。

ネットより専門店へ

—— 日本人選手の活躍で“やってみたい!”という子どもも増えたと思いますが、どう始めればいいですか?

 

横山さん:

最近はインターネットでスケートボードも買えて翌日から滑ることもできますが、協会に加盟しているプロショップ(専門店)に行くことをお勧めします。

 

スケートボードの品質を管理していますし、店員がマナーや安全な乗り方を教えてくれます。協会もそのように指導しています。

 

それから初心者スクールへ行ってもいいですが、現在は満員のところが多いので、自分に合ったスケートパークを探すことですね。

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熱血コーチにはならないで

—— “うちの子どもにやらせたい”という親も増えそうですね。

 

横山さん:

親御さんは熱血コーチにはならないでほしいですね。親からの押しつけやお仕着せでやらせるのは、スケートボードではありません。

 

そうすると若者が興味を持たなくなり今回、オリンピック競技で採用された意味もなくなります。

 

お子さんに合った先輩やコーチを見つけたり、スケートパークを探すために車を出したりする程度にとどめてほしいですね。

画像提供/PIXTA

 

—— スケボーの魅力はほかにありますか? 伝統的スポーツとどういう違いが?

 

横山さん:

アーバンスポーツは、一般的な学校の体育や部活動とは違います。厳しい指導者の出したメニューを、言われるがままにこなすというものではなく、遊びの延長で楽しむものです。

 

自分で研究して新しい技ができるようになり、さらに楽しくなりながら、仲間を増やしていくスポーツだと思います。

 

だから、昔ながらの子どもの遊びである竹馬のような上達心をくすぐるような素朴な面もあります。

体育会系的な上下関係はないが…

—— スケートパーク探しが重要になりそうですね?

 

横山さん:

ただ、スケートパークに行けば、そこにはコミュニティがあり、ボス的存在の人物もいます。

 

先輩・後輩的な上下関係はありませんが、そんな人物にルールやマナーを教えもらいながら、技(トリック)を磨き、上手にできる人間が憧れの存在になります。

 

外国のスケートパークに行って言葉が通じなくても、技ができれば“なかなかやるじゃん”とハイタッチしてすぐ仲良くなれるのが、スケートボードの魅力です。

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国や順位は関係ない

—— 今大会、涙を流す日本選手に外国の選手が駆け寄り、担ぎ上げてたたえた場面も。国や順位にもこだわらないんですか?

 

横山さん:

いい滑りができればよくて、リスペクトの対象になり、国も順位も関係がないというのがスケートボードの文化です。

 

そこが伝統的スポーツとの違いで、そもそもストリート発祥なので、街中がフィールドです。

 

専用な競技場に行く必要はなく、ユニフォームを着ないで自分の好きなファッションで滑ることができる自由さがあるというのが、スケートボードカルチャーです。

 

—— 人によって、スケボーはヤンチャで恐そうな人がやるイメージもありますが?

 

横山さん:

スケートボーダーが必ずしも犯罪者になっているわけではないですし、伝統的スポーツをやっている人が何の問題も起こしてないわけではないと思います。

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ただ、スケートパークへのアクセスが悪く、魅力的な施設でないと、スケートボーダーが街に出て、騒音やゴミ問題を起こすことがあります。

 

イメージ悪化にもつながるので、行政とも相談して対処しなくてはいけません。

アーバンスポーツの魅力は伝わらなかった

—— 今大会では、46歳のベテラン選手もいましたが、大人でも楽しむことはできますか?

 

横山さん:

子どものように、飛んだり跳ねたりということは難しいかもしれませんが、楽しめると思います。

 

ただ今回の五輪はコロナの影響で無観客になり、スケボーに限らずアーバンスポーツの魅力をほとんど伝えられなかったと思います。

 

本来、アーバンスポーツの大会はロックフェスのような形で、観客とDJのあおりで一体となって盛り上がるコンテストでありパーティです。

 

広島で開催される「FISE」というアーバンスポーツの祭典があるので、そういう場にも行って雰囲気を知ってもらいたいですね

 

                                                                                                                                         

PROFILE 横山純さん

1964年東京都生まれ。13歳からスケートボードを始める。’93年、「AJSA-TAC日本選手権ジャイアントスラローム」優勝。’95年に「一般社団法人 日本スケートボード協会」の事務局長就任。東京五輪ではスケートボード事務広報を担当。