早期リタイア

1児の母・なみへいさん(42歳)は昨年、株式投資などの不労所得で生活するFIRE(早期リタイア)を実現しました。会社を退職し、家族との時間を楽しんでいます。

 

一般的に“FIREは特別な人がするものというイメージがありますが、なみへいさんは元々普通の会社員だったそう。FIREするまでの経緯や秘訣を伺いました。

年収は100万円台から…投資を始めて人生変わった

昨年、早期リタイアを実現したなみへいさん。これまで、さまざまな経験を重ねてきました。

 

「大学卒業後、バックパッカーとして海外放浪しました。帰国後、就職した会社は、年収100万円台。食費もまともに出せず、公園の雑草を天ぷらにして空腹をしのぎました(笑)。家賃が払えずにテント生活をしたことも。その後、数回転職をし、年収も上がっていきました」

 

投資を始めたのは2008年。転職して、上司から自社株の購入を勧められたのがきっかけでした。

 

「投資は勉強しないと大損するイメージでした。でも、他の社員からリーマンショックのときも株で得したとの話を聞き、意外でした。長期運用であれば損をしない場合もあると知り、やり方次第だと思いました」

 

そこで、少しずつ株の勉強を始めることに。自社株など、投資先が1か所だと株価が下がったときにリカバーできないと学び、米国株の投資信託なども始めました。

 

「最初の頃、取引は銀行の窓口で。資産運用窓口の人に、それこそ基本中の基本の株とは何かから教えてもらいました」

 

ところが知識が足りないため、勧められるがまま、手数料の高い投資信託を購入することも少なくありませんでした。

 

「購入するときの手数料が3.6%。投資商品を持っているだけで2%かかる場合も。せっかく利益が出ても、ほとんどが手数料に消えていくんです

 

なかなか資産が増えないため、銀行から、手数料のかからないネット証券口座へと変更することに。

 

「とはいえ、銀行で基礎的な知識を教えてもらったのは、本当に助かりました。高い手数料は勉強代だったと思っています。自分でも本を読み、知識を深めていきました」

ほったらかし投資で思いがけない効果が

結婚・出産後も投資を続け、月に30万円ほど積み立てていましたが、忙しくて基本的には放置気味だったそう。でも、このほったらかしが功を奏しました。

 

「“複利効果の恩恵があったんです。後で確認してみると、一時的には損失もあったものの、結果的に資産は増えていました」

 

株式は、長く保有すればするほど利益を得やすくなります。もともとの元本に、運用で得た利益も加わり、利息が発生するのです。これを複利効果といいます。なみへいさんは、損失があった際も、損切りなどをせず長期保有していたのが功を奏しました。元本と利息の合計金額が増え、結果的に雪だるま式に資産が増えていきました。

 

また、投資を続けるうちに学んだのは感情に流されないこと。徹底的に自分ルールを守っています。

 

「利益が20%出たら売ると決めています。欲を出すと暴落する場合も少なくないので堅実に。また、株価が下がっても焦って損切りせず、5%下がったら20%買い増しています。コロナ禍で暴落したときも、このルールを厳守したおかげで、資産は増えました」

コロナ禍でこの先の人生を考えてみた結果、FIREを決意

12年間投資を続けてきたおかげで、総資産は約4800万円を達成。転機となったのは、昨年、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務となったこと。多忙によるストレスを抱え、体調も崩しがちな時期でした。

 

「仕事を終えるとヘトヘト。子どもと遊ぶ余裕さえない生活を、今後も続けていくのか疑問を抱くように。じっくり考えた結果、自分にとって一番大事なのは家族。だったら会社を辞めて、株式投資の利益で生活し、自分自身と家族の時間を最優先にしようと決めました」

 

FIREを意識し始めてから、最初にしたのは固定費の見直しでした。

 

「毎月のお給料を1万円上げるのは難しいですが、固定費を1万円下げるのは比較的簡単。退職したら私の給料がなくなるので、普段の生活の支出を減らそうと考えました」

 

大家さんと交渉して家賃を下げる。電気・ガス料金は安い会社に変更。Wi-Fiプランや種類の変更、携帯電話を格安SIMへの乗り換えなど、徹底的に見直した結果、固定費はこれまでの約半分に。

 

「予想以上に効果があったのが、シャワーヘッドの交換です。5085%節水できるだけでなく、ガス代を14%も節約できました。資産の増加と固定費削減の2つの要素が揃ってFIREできたと思います」

夫もFIREに賛成。家庭の雰囲気もなごやかに

FIREを考えていると相談をしたところ、夫も快く賛成してくれました。

 

「夫も投資経験が10年ほどあるので、資産運用の配当金で暮らすことに抵抗はないようです。一緒にFIREしようと誘いましたが、いつでも辞められるなら、もう少し仕事を続けると予想外の反応でした」

 

退職後、子どもともたくさん遊べるようになりました。以前から興味があった家庭菜園もスタート。野菜の成長や収穫に興味を持った子どもの好き嫌いが減ったそうです。何より、自身のストレスが激減し、家庭の雰囲気が明るくなりました。

 

「時間ができたので、趣味のヨットで1級船舶免許を取りました。今年の夏は、ヨットで旅行に行く予定です」

FIREを実現するために大切なのは、どんな人生を生きたいか見極めること

投資でしっかりと資産を形成していたとはいえ、会社を辞め、資産運用の配当金で暮らす選択をするのは、少なからず勇気がいるはずです。なぜ、彼女は決断できたのでしょうか。

 

「自分にとって大切なものは何か、どんな人生を送りたいかを徹底的に考えたからだと思います。私は家族との時間を最優先にしたかった。すると、会社員生活は今の自分には必要ないと手放せたし、徹底的な固定費の見直しもできました。周囲に惑わされず、大事なものを見極めることが、FIREを実現する第一歩だと思います」

なみへいさんブログ https://www.ninjarijan.com/
※上記は、なみへいさん個人の経験談・感想であり、投資による利益を保証するものではありません。

文/齋田多恵