子供にキツい態度をとる母親

リモートワークの最中や家事で忙しいときに限って「ねえママ、聞いて~」。

 

子どもに悪気はないのはわかっているものの、つい「忙しいから後にして!」とキツイ言い方をしてしまい、自己嫌悪に陥る人も少なくありません。

 

子どもの心を守りながら、親の都合を理解させるにはどうすればいいのか。教育評論家の親野智可等さんにヒントを伺いました。

親の状況を考えない子どもに思わず悪態…そんな自分を変えたい

── 忙しいときに子どもに話しかけられると、ついイラッとして突き放すような言い方をしてしまいがちです。どうすれば、子どもを傷つけずに、親の状況を納得してもらうことができるのでしょうか?

 

親野さん:

お気持ちはよくわかります。子どもは親の状況をいっさい考えず、余裕がないときに限って話しかけてくることが往々にしてありますよね。

 

思わず、「お母さんは忙しいの!」などと言ってしまいがちですが、それが続くと子どもは、「自分はママにとって一番大切な存在じゃないんだ」と感じてしまう。こういうときは、いったんボールを受け止めてあげることが大切です。

 

こんな出来事がありました。新幹線で隣に座っていた人が、売り子さんにコーヒーを注文したときのこと。売り子さんは、別のお客さんの対応中だったので、「少々お待ちください」と伝えたのですが、隣の人は明らかにムッとした様子でした。

 

この場合、「ありがとうございます。すみませんが少々お待ちいただけますか?」と言えばよかったと思います。つまり、「ありがとうございます」がボールを受け止めるひと言であり、これだけでお客さんは安心して待てるわけです。いきなり「少々お待ちください」だと、門前払いされたように感じてしまうんですね。

ほんの数秒でも子どもを目を合わせるだけで全然違う

── 軽いワンクッションがあるかないかで、受け手の心情もずいぶん変わってきますね。

 

親野さん:

忙しくて手が離せないときは、ほんの数秒でいいので、子どもと目を合わせ、「よくできたね」とか「そうなんだ、よかったね」と受けとめてから、「お母さん今、これをやらないといけないの。終わったら話を聞かせてね」と伝えましょう。

 

いったん軽く受け止めるだけで、子どもの気持ちが少しは満たされ、心が和らぎます。余裕のないときはなかなか難しいものですが、こうしたことを頭にとめておくだけでも、違った対応ができると思いますよ。

 

子どもはあっという間に大きくなります。一緒に過ごせる貴重な時間を楽しみ、今しかできないコミュニケーションを大切にしたいもの。

 

そのためには、親自身が心を開放して、子どもとの時間を楽しみましょう。“こういう風にしつけなければ”“親たるもの、子どもの能力を伸ばさなくてはならない”と気負いすぎると、どうしてもうまくいかないし、子どもにかける言葉も否定的になりがちです。  

 

── 確かに、子どもと濃密な時間が過ごせるのは、せいぜい小学生くらいまで。いわば、期間限定ですよね。

 

親野さん:

反抗期だってそうですよ。ですから、今の子どもの姿をまるごと愛おしみ、一緒に過ごす時間を100%エンジョイしてほしいなと思うんです。そういう意識で子どもと向き合っていると、たとえイライラするような出来事があっても、むやみに感情的に叱らなくて済むようになると思いますよ。

 

Profile 親野智可等さん

教育評論家。本名・杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。Twitter、YouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」などで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。Twitter、YouTube、Blog、メルマガ、講演のお問い合わせなどは、インターネットで「親力」で検索してホームページへ

取材・文/西尾英子