かつては「裕福な家庭」「優秀な子」のためのもの、というイメージが強かった中学受験。しかし最近では、多くの家庭がチャレンジするようになっています。
気になるけれど、何から始めればいいのかわからない…。そんな保護者向けに、「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は、女子の保護者の心得第二弾です。男子と比べて、一般的に心身の発達が早い女子。中学受験においては、どういう対応が望ましいのでしょうか…?
女子は算数にこだわらなくても受かる
「中学受験は算数しだい」という説を耳にすることがありますが、女子の場合はさほど気にしなくても大丈夫です。
女子校や共学校の場合、男子校に比べると理社の配点が高く、4教科均等配点という学校も少なくありません。4教科の合計点をいかに取るかが勝負なので、女子に関しては皆さんが思っている以上に国理社に力を入れたほうがいい。
算数で苦手な単元があったら、思いきってそこは捨てて、他の単元、他の科目に力を入れましょう。
得意科目から広く浅く学習する
男子校は算数の出来で合否がわかれるので、算数から強化していくことをおすすめしていますが、女子は好きな科目から着手していくのがいいでしょう。まずはそこから「やればできる」という自信をつけさせましょう。
ただし、「理科の植物」など、好きな単元ばかりを深掘りをするのはよくありません。多くの女子校の問題は「広く浅く」学ぶことを求めています。基本問題を広くカバーするイメージで臨みましょう。
算数には、苦手意識を持つ子が多いです。とくに大手塾の算数は男子難関校に合わせたカリキュラムになっていて、多くの女子には過剰な内容。中堅レベルの成績の女子にとっては負荷が大きいので、無理にやらせる必要はありません。基本問題ができればいい、というスタンスで大丈夫です。
学習計画は本人にたてさせる
小学生のうちは男子より女子の方が「いつまでに何をやればいいか」という見極めができる傾向にあります。また女子は精神的に大人な分、自分で納得しないと勉強に身が入らない。
保護者としてはあれこれアドバイスしたくなるでしょうが、まずは本人に学習計画をたてさせ様子を見守ってみてください。うまく計画がたてられない場合は、1日刻み、3日刻みなどスパンを短くして学習計画を立てる練習をしましょう。
「テストの点が悪かったのはテレビやネットを見る時間が長かったから」「クラスが落ちたのは苦手分野の勉強が足りなかったから」などの理屈が通じやすいのが女子のいいところです。学習計画を自分で立てることは自省の機会にもなり、そのこと自体が勉強のモチベーションにもなります。
偏差値重視から離れる手助けを
女子の場合、本人のがんばりや達成度を軸に褒めたり叱ったりする方法が響かないことが多いです。
「この問題ができるようになったなんてすごいじゃない」と褒めても、「クラスが上がってないから意味ないじゃん」とふてくされたままだったり、逆に「こんな計算ミスをするなんて!」と注意しても、「でも90点取ったからいいじゃん」と開き直ったり。
これは、周囲を客観視できているからこその反応です。
そういった子どもには、あくまでもデータをもとに建設的なアドバイスをするのが理想です。
また、客観的な数字に敏感だからこそ、偏差値重視の志望校選びをしないよう、保護者が注意を払うことも必要です。
早い段階から、併願校すべてに関して「この学校はここが素敵だよね」「こんな素敵な先輩、卒業生がいるよ」といった考え方を親子で浸透させてください。そうしないと、第一志望に失敗したときに心のシャッターが固く閉ざされ、中高生活に影響しかねません。
学習環境がモチベーションを左右する
人間関係や客観的な数字とは別に、女子のモチベーションを左右するものがあります。それは学習環境です。
視覚面での感受性が豊かな子が多く、文房具や学習環境の清潔感などがモチベーションに大きく影響します。お気に入りの文房具を揃えたり、勉強する場所をきれいに整える時間を作ったりする、そういうちょっとしたことでストレスが減って勉強に集中できるようになることがあります。
これらについては、おうちの方がちょっと気を配れるといいですね。
女子の場合は、好きな科目から取り組んで、自信をつけながら総合点を上げていく。その上で本人に学習計画を立てさせて、やる気を引き出すのが理想です。
保護者は、子どもが偏差値重視になっていないか、様子を見ながら気持ちを解きほぐすことを心がけましょう。