教室で談笑する女の子

かつては「裕福な家庭」「優秀な子」のためのもの、というイメージが強かった中学受験。しかし最近では、多くの家庭がチャレンジするようになっています。

 

気になるけれど、何から始めればいいのかわからない…。そんな保護者向けに、「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。

 

今回は、女子の保護者の心得について。男子と比べて、一般的に心身の発達が早い女子。中学受験においては、どういう対応が望ましいのでしょうか

女子には「説得より納得」が必要

今回は中学受験における女子の特性についてお話しします。

 

ただし、ここで話すのはあくまでも一般論。性別がどちらであれ、誰もがそれぞれ女子らしい要素、男子らしい要素を持っています。大事なのは子どもにあわせた指導。わが子にあてはまる部分があれば、ぜひ取り入れてみてください。

 

では、多くの女子に見られる特性を考えてみましょう。

 

一般的に女子は、精神的な成長が早いと言われています。その分、自分の成績を客観視しながら、志望校合格に向けて努力できる子が多いですね。

 

また、社会性が高く、人に対して敏感です。

 

そういう子が求めているのは、大人との対等な関係であり、そのうえで自分の気落ちに共感してもらうこと。

 

相手が単に親や先生というだけでは言うことをききません。それどころか、いったん「この人はダメ」と本人が決めてしまうと、心のシャッターが下りてしまって、いくら理屈としては正しいことを言っても、聞き入れてくれません。

 

僕はよく「説得より納得」という言い方をしています。志望校選びにしても勉強のやり方にしても、本人の納得なしには進めることができないのです。

相性のいい外部コーチを見つける

最近「東大タレントや高学歴アイドル、女子アナ」に憧れて、受験を頑張る女子が増えたと感じています。女子は男子に比べて他者に敏感です。だから「あんな風になりたいから〇〇中学に受かりたい」と憧れをモチベーションに変換できる。

 

そうした傾向のある子におすすめなのは、本人が人間的に共感またはリスペクトできる第三者を見つけ、外部コーチになってもらうことです。

 

塾の先生や学校の先生など、子どもが信頼できる大人を探し、託してみてください。その人に上手に導いてもらえると一気に成績が化けます。

 

ただし、いい外部コーチが見つかったからといって丸投げはいけません。子どもは、大人の態度をよく見ています。「うちの親は自分から逃げている」と見抜かれたら、それこそ心のシャッターが下りてしまいます。

 

保護者は、介入しすぎないよう気をつけつつ、日ごろからわが子をよく観察し、本人の話に耳を傾け、気持ちをしっかり受け止めること。そのうえで、本人が信頼する外部コーチと連携することが大切です。

 

なお、思春期に親を極端に嫌うことはよくあります。それにショックを受けて過剰に落ち込んだり、好かれようとすり寄ったりはしないでください。ますます反感を買ってしまいます。「そういう年頃」と動じないことが大切です。

女子の塾選びは「雰囲気」を重視

男子校の入試は学校によって難易度に大きな差があります。そのため、特に難関校に関しては、「開成を目指すならサピックス」というふうに、その問題を扱える塾、先生が限られます。

 

一方、女子校および共学校は、入試問題にあまりくせがありません。だから、本人の目的意識さえしっかりしていれば、どこの塾でもどの教材でも合格は狙えます。

 

ただ、先ほどふれたように、女子は先生との相性でやる気が変わる傾向があるので注意が必要です。男子の場合は「今日どの先生に習ったか」さえあやふやな子がいたりするものですが、女子は「今日の先生の服かわいかった」など、先生の様子までよく観察しています。

 

指導歴30年で難関校に300人合格させましたというベテランでも、本人との相性が合わなければ意味がない。あくまでも「本人にとって」いい先生であることが重要です。

 

そういう意味で、クラス替えや先生の異動の多い塾だとしっくりこない、という女子は多いかもしれません。信頼できる先生がいて、保護者も本人も相談しやすい雰囲気がある、そういう塾を選ぶといいでしょう。

気が弱い子・プライドが高い子は早めの入塾も

状況を客観視できる女子は、6年生秋以降「ここが頑張りどころだ」と見通しをつけ、努力して成績を上げることができます。

 

ただ一方で、弊害が現れる場合もあります。男子は友人の成績などはあまり気にしないのですが、女子は周囲をよく見ている。

 

他者との比較で「自分はこのくらい」と過小評価してしまい、努力をしたがらない、あるいはちょっとした失敗でひどく落ち込んでしまう子もいます。

 

テストで悪い点をとったときも、本人は十分にそのことがわかっています。保護者は日頃からわが子と他の子とを比べて追いつめたりすることのないようにしましょう。

 

失敗を極端に恐れる、失敗への耐性が低いといった子は、受験に向けたカリキュラムがスタートする新小43年生の2月)よりも前から通塾を開始することを考えてもいいかもしれません。先にスタートを切ることで、自信を育てつつ、競争や失敗にも慣れていくことができます。

 

中学受験の正体_matome1

外部コーチや周囲との人間関係が、成績ややる気に影響しやすい女子。

 

親子間の距離を適度に保ちながら、塾の先生と連携して見守ることが大切です。

 

中学受験の正体バナー

監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ