スキンシップをとる親子

子どもとのコミュニケーションにおいて、カギになるのが「共感的に聞くこと」。そのためには、ひとまず子どもの話をそのまま受け止めることが大事だといいます。

 

とはいえ、親としてつい口をはさみたくなる場面も…。「子どもを正しく導く聞き方」を教育評論家の親野智可等さんがレクチャーします。

子どもの話をつい遮ってしまう…その行為がNGの理由は

── 子どもが話し始めたら「まずは受け止めることが大事」と伺いました。とはいえ、望ましくない言動などがあると、親としては、ついさえぎって注意したくなってしまうもの。そのまま聞いていてもいいのでしょうか?

 

親野さん:

「共感的に聞く」というのは、何もかも子どもの言うとおりにするということではありません。大切なのは、その“順番”なんです。

 

わが子を正しい方向に導こうと考えるのは、親として当然の心理ですから、子どもの話があまり好ましくない内容だと、つい「こうしなきゃダメだよ」「だから言ったでしょ!」などとストップをかけ、コントロールしようとしがち。

 

しかし、これだと、子どもは心の中にあるものを吐き出すことができないまま、ストレスをため込んでしまうことになります。これでは精神衛生上、よくありません。

 

子どもが話しはじめたら、まずは“聞き切る”ことに専念しましょう。今、子どもが抱えている思いや不満をすべて吐き出さないと、新しいことが入る余地も生まれません。

否定的な言葉で注意すると「自分が否定された」と感じることも

── 確かに、話をしている最中に正論で遮られると、大人でも心を閉ざしてしまいがちです。子どもの話を聞ききったあとは、どんなふうにアドバイスすれば耳を傾けてくれるでしょう?

 

親野さん:

1度肯定したあとに自分の意見を述べる「YESBUT方式」という会話のテクニックを聞いたことがある人も多いでしょう。でも、一回の「YES」だけでは十分ではないので、共感のコミュニケーションでは、さらに一段階上の「YESYESBUT」が有効です。

 

例えば、「●●ちゃんにこんなことを言われてムカついた」という話なら、「そっか。そんなこと言われたら悲しいよね」と共感します。さらに、子どもが「だってこの時もああでこうで…」と言ったら、また「そういうこともあったんだ。困るよね」と共感します。

 

このように、共感的にたっぷり聞くことで、マイナス感情を処理してあげることができます。そのあとで、「じゃあ、●●ちゃんは、なんでそういうふうに言ったんだろうね?」「あなたにはいけないことがなかった?」「じゃあ、あなたはどうすればよかったかな?」などと問いかけ、振り返らせるんです。

 

すると、「う~ん。●●ちゃんもやりたかったかもしれない」「わたしも嫌なこと言っちゃった」「もっとこうすればよかったかも…」と、みずから気づけるようになることが多いんですよ。

 

── 本人のマイナス感情を出し切らせることが大事なんですね。

 

親野さん:

そうなんです。その上でもし、何かアドバイスをするときは、“こうしなきゃダメ”ではなく“こうするといいかも”と、できるだけポジティブな言葉を使うと、子どもも素直に受け入れやすいものです。否定的な言葉で言うと、言われたほうは自分が否定されたと感じてしまうので気を付けましょう。

 

また、話を遮らずに最後まで聞くことで、子どもがいろんなことを話してくれるようになるので、抱えている悩みや問題の本質がわかり、解決の糸口が見つかりやすくなります。

 

「習い事を辞めたいと言っているけれど、どうやら先生との相性が悪いだけで、本心は続けたいみたい。それなら別の教室を探してみよう」などと、適切な解決策がとれるようになるでしょう。

 

Profile 親野智可等さん

教育評論家。本名・杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。Twitter、YouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」などで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。Twitter、YouTube、Blog、メルマガ、講演のお問い合わせなどは、インターネットで「親力」で検索してホームページへ

取材・文/西尾英子