ワンオペ育児の忙しさや仕事・家事との両立で余裕がない毎日に、つい「子供を叱りすぎてしまう」と悩むママは少なくありません。
しかし、あまり目立たないものの、実は「子供を叱れない」という悩みを抱えた人も意外と多いんです。
今回は、子供を叱れないことで悩むママの心理や子供への影響、うまく叱れないときはどうすればいいいのかについて、体験談をもとに考えてみました。
ケース1:叱られたことがないから叱れない
Uさんには1歳5か月の男の子がいます。
比較的おとなしいお子さんですが、最近、少しずつ歩けるようになり、ちょっと手を離すと溝や道路の近くまでトトトっと進んでいってしまうこともあるそう。
また、食事どきにフォークを投げて遊んでしまうこともあり、Uさんは「いけないことはちゃんと叱らないと」と思うそうです。
「でも、どうしても、フォーク投げないでね…とか、そっちは危ないよ~と言い聞かせることしかできません。今までの人生で、誰かに強い調子で何かを言ったことがないんです」
「今思うと母親が過干渉で、何かを決めるときはいつも母の言うとおりにしてきました。そうしていれば怒られないので。3つ上の姉はよく反発して怒られたり、家から閉め出されたりしていましたが、私は怒られるのがとても怖かったんです」
「運良く、勤め先も穏やかで真面目にしていれば怒られる場面はありませんでした。夫はイトコの紹介でしたが、母のお気に入りのエリートのイトコだったので反対されずここまで来ました」
「でも、どうしても、生まれたこの子に怖い顔でダメ!と言ったり、大声で叱ったりできません。今は赤ちゃんだけど、そのうち厳しく叱らないといけない時が来そうで、そこで叱らなければこの子がちゃんとした大人になれないのでは…と心配です」
ケース2:過剰に怒られて育ったから叱れない
Kさんは4歳の男の子のママです。
「私が子供のころはしょっちゅう、理由も分からず突然父親に頭を叩かれたり、今の私からみると子供なら当たり前のような笑い声を出しただけで母親にうるさい!と怒鳴られていました。自分の子供にはそんなことはしたくないという気持ちが強く、また1回怒鳴ると昔の両親のようになってしまいそうで、怖くて大声で叱れません」
「でも、息子は4歳でやんちゃな年頃です。一度保育士さんに、お母さん優しいから~といわれたことがあるのですが、それって、もっとちゃんと叱れってことですよね…?」
ケース3:叱る基準が違うから叱れない
現在5歳のお子さんのいるSさんは、自分ではなく、当時2歳だったママ友親子のことが気になっていたそうです。
「支援センターで知り合ったママ友グループで仲良くなり、復職後も週末などに遊んでいました。あるとき小さな遊園地にみんなで出かけて。お昼はブッフェスタイルのレストランに入ったのですが、1人のお子さんが、食べないのに次々フルーツや料理を取ってくるんです。それも手づかみで…」
「私だったら最初に注意してやめさせるし、やめなかったら店から連れ出して叱るのですが、その子のママは、どうせ余るくらいあるんだから~とまったく叱りませんでした」
「赤ちゃん時代はみんな似たような感じでしたが、成長するにつれ、他の子のおもちゃを取り上げて泣かせても、言い聞かせて順番を相談させるとかもなく、子供同士で解決させればいいと。基準があまりにも違うと思い、疎遠になってしまいました。今はどんな風に育っているのでしょうか」
ケース4:発達上の理由で叱れない
Iさんの5歳のお子さんには発達に凸凹があります。
「他のお子さんだと、世間的にここはわが子に我慢させておけばうまくいく、という場面でなんとか言うことを聞いてくれると思いますが、うちの子は自分が納得しないとテコでも動きませんし言うとおりにしません。無理に、いいからこうしなさい!とか、ダメなものはダメ!と言うとパニックを起こして、もっと周囲に迷惑をかけてしまいます」
「さらに、私から何か働きかけなくても、突然なんらかの理由(横風が吹いたなど)でパニックになるとどうしようもないため、用事の途中でもあきらめて、泣き叫ぶ子を抱えて帰ることも。見ている人は、なぜ叱らないの?と思っていたかもしれませんね…」
「叱る」と「教える」「伝える」の違い
ここまで、色々な原因の「叱れない」ケースを聞いてきました。
しかし、大切なのは、大声を出したりきつく言って叱っているかどうかではなく、今その子がしていることが良いことなのかそうでないのかをきちんと「伝える」こと、それがなぜダメなのか、ではどうしたらいいのかを「教える」ことだといえます。
今まで機会がなかっただけで、もし子供が道路に飛び出すなど命にかかわる事態になったら、叱れないと悩むママでも思わず「ダメ!」と大声が出てしまうかもしれません。
そういった大切なことが日頃から子供に伝わっていれば、必ずしも声を荒らげる必要はなく、一概に「叱れない」「親としてダメなのかな…」と悩まなくても大丈夫なのではないでしょうか。
文/高谷みえこ