「子どもが幼稚園や保育園に行きたがらないのは、大前提として『家族が大好き』『家にいたい』という気持ちのあらわれです。まずはその気持ちを受け止めましょう」
今回は、イヤイヤ期専門保育士の中田馨さんに、子どもが登園を嫌がるときの声かけや対策法をお聞きしました。
「行きたくない」という子どもの理由は?
慌ただしい朝に「幼稚園に行きたくない」「保育園イヤだ!」と言われると、親の方も時間に余裕がないため、話を聞かずに一方的に急かしてしまったり、叱ってしまったり…。
けれども、子どもが登園を嫌がる場合の多くは、「パパやママと一緒にいたい」「家で遊びたい」という気持ちが根底にあります。
まずは、「ママと一緒にいたいんだね、ママも◯◯ちゃんと一緒にいたいよ」と子どもの気持ちを受け止めましょう。
そのうえで、普段から園で頑張っている子どもに対して、「いつもがんばってるね」と声をかけてあげてください。完全にはイヤイヤがおさまらない場合でも、子どもを認め、かけた言葉は、きっと子どもに届くはずです。
「行きたくない」を笑顔に変える3つのポイント
家を出る前、幼稚園や保育園に着いてから、そしてパパやママと離れるとき…ぐずったり泣いてしまったりする子どもの姿を見ると、親としても少し辛いですよね。
そんなときこそ、親子共々1日を気持ちよくスタートできるような声かけや行動を意識してみましょう。
朝のお見送りは、親子で一日頑張れる合図を決める
パパやママにぜひ試してほしいのが、お互いに一日頑張れるような2人だけの合図を決めることです。
たとえば、園やバス停で別れるとき、「いってらっしゃい!」の挨拶とともに毎回決まったアクションをするのはどうでしょうか?タッチや握手、ハグなど、なんでも構いません。
ちなみに私の場合は、タッチ・ハグ・チュ!というのがお決まりの流れでした。「さあ! 今日も一日頑張ろう!」とお互いに気合いが入るやりとりを作ってみてください。
特に良い合図が思い浮かばないという人には、10秒間ハグがおすすめ。7秒以上触れ合うと、オキシトシンという幸せホルモンが溢れてくると言われています。
朝のひとときの中で、他の誰も介入しない親子だけの濃密な時間を作る…たった10秒程度でも、子どもは安心して満たされた気持ちになります。
また、あるママの話ですが、子どもが小さい頃から「朝出かけるときに必ず握手をする」ことをお別れのルーティーンにしていて、成人した今でも続いているそうです。
お迎えのときは「今日もがんばったね!」と笑顔で再会
保育園に預けることを、「自分が働いているから長時間離れなくてはいけない」「子どもにかわいそうなことをしてしまっているかも」と自分を責める必要はありません。
仕事を頑張ることは、ママが元気に、ママらしく過ごすためのひとつの方法なのだと私は考えます。
ですから、お迎えに行ったときも、「遅くなってごめんね」ではなく、明るく「ただいま!今日もがんばったね!ママもがんばったよ!」と笑顔で再会しましょう。もちろん、幼稚園の場合も同様です。
お迎えから始まる親子の時間をぜひ大切にしてください。
連休明けは前日から生活リズムを整えておく
普段はそこまで登園を嫌がらない子どもでも、大型連休や夏休み、年末年始など長い連休明けは、園に行きたがらないことがあります。
大人だって休み明けは仕事に行きたくないと思うもの。誰だってそんな気持ちを持つこともありますよね。
生活リズムが崩れないように、連休最終日(園が始まる前日)は、園の生活リズムに戻しておくとよいかもしれません。そして、園がはじまる日の朝は早めに起こして、余裕を持って準備ができる環境づくりを心がけましょう。
園でトラブルが起こっている可能性も
場合によっては、幼稚園や保育園でなにか嫌なことや困りごとがあって、登園を嫌がっている可能性もあります。特に、入園や進級したての頃は、新しい環境や園の生活リズムに緊張したり、馴染めなかったりする子どももいます。
直接話が聞けそうな場合は、正直な気持ちを尋ねてみましょう。また、毎日の様子を見ていて、気になることがある場合は、園の先生に相談するのもひとつの方法です。
「先生にお話しておいたから大丈夫だよ」「なにか困ったら、すぐに先生に言ってね」と伝えておくと、子どもも安心できるのではないでしょうか。
朝やお迎えのときなど、普段から園の先生とコミュニケーションをとっておくと、なにか困ったときの意思疎通がスムーズです。
保育士さんを信頼して預けよう
子どもの気持ちは日々変わるもの。この間までは楽しく通っていても、ある日突然泣いて登園したがらないケース、また反対の場合もあるでしょう。
親が仕事をお休みできる日や、一日一緒に過ごす余裕があるときは、園をお休みして一緒にゆっくり過ごすのもいいと思います。
しかし、「今日は預ける」と決めたら、たとえ泣いていても園に連れていき、そこから先は先生に委ねましょう。親側の気持ちが揺らぐと、それが子どもにも伝わり、ぐずぐずが後を引くこともあります。保育士は百戦錬磨なので、安心して任せてくださいね。
PROFILE 中田馨(なかたかおり)
取材・構成/水谷映美 イラスト/林ユミ