「歯磨きを嫌がる子に悩む親御さんは多いかもしれません。まずは、親が必死になりすぎていないか、力が入りすぎていないかを振り返ってみましょう」
今回は、イヤイヤ期専門保育士の中田馨さんに、子どもが歯磨きを嫌がるときの声かけや対策法をお聞きしました。
「歯磨き=恐怖の時間」になっているかも!
「歯磨きをしっかりしないと虫歯になってしまう」「子どもを虫歯にさせてはいけない」という使命感から、無理やり子どもの体を押さえつけながら磨いている…というパパママもいるのではないでしょうか。
けれども、子どもの立場になって考えてみるとどうでしょう。
自分の2倍以上も体の大きな相手が、嫌がっているのに体を押さえつけてきて、口をこじ開けて歯ブラシを入れてくる…。想像しただけで、なかなかの恐怖ではないでしょうか。
さらに、「一生懸命磨かなきゃ」という強い思いから、子どもが動かないようにと力が入りすぎてしまったり…。必死になりすぎるあまりに笑顔が消え、怖い表情になっているかもしれません。
親が一生懸命になるほど、子どもにとって「歯磨き=痛くてこわい時間」となってしまって悪循環に。もしも心当たりがある方は、子どもを無理やり押さえつけて磨くことをやめることからスタートしてみましょう。
「歯磨きが嫌」を楽しいに変える3つのコツ
では、歯磨きが楽しいと思えるようにするにはどうしたらいいのでしょう。ここでは、3つのコツをお伝えします。
ネガティブからポジティブな声かけに変換
よく言ってしまいがちな、「しっかり磨かないと虫歯になるよ」という声かけ。この伝え方は少しネガティブなイメージがあるので、ポジティブな声かけに変換してみましょう。
たとえば、子どもの口の中を覗きながら「あ、夜ご飯で食べたお魚が歯の間にいるね。歯磨きでピカピカにしようか!」といったような前向きな表現が理想です。
明るく楽しげな感じで話しかければ、子どもも「よし! 歯をピカピカにしよう!」という気分になってくれるかもしれません。
テンションが上がるグッズを使用する
歯磨きをするときに使うアイテムを、子ども好みのもので揃えるというのもいいですね。
たとえば、子どもが好きなフレーバーの歯磨き粉を2つほど用意しておき、その日の気分で選んでもらうという方法。歯ブラシも、キャラクターがついたものであれば、子どもも喜んでくれるのではないでしょうか。
ドラッグストアへ行き、親子でいっしょに歯ブラシや歯磨きを選ぶというのも、歯磨きタイムが楽しくなるようなアイディアのひとつかもしれません。
また、子どもが好きな音楽をかけたり、親子で歯磨きの歌を歌ったりといった工夫もぜひ試してみてください。お気に入りのぬいぐるみを持ってきて、「いっしょに歯を磨こうか!」と遊びの延長のような形でスタートしても楽しいでしょう。
歯医者さんを味方につける
小さな頃から定期的に歯医者に連れていくのも、子どもにとってのよい経験になります。親としても歯科衛生士さんにいろいろな相談ができる貴重な機会になるでしょう。
ただし、歯医者さん選びはとても重要。できれば「小児歯科」や、子どもの気持ちに寄り添ってくれるような歯医者さんを選ぶのがコツです。周りのママ友などから、おすすめの歯医者さん情報を集めておくといいですね。
歯磨きを嫌がる子のなかには、「口の中でいったいどんなことが行われているのかわからなくて不安」という気持ちもあるでしょう。
子どもに手鏡を持たせて、自分の口の中でどんなことが行われているのか、「ちゃんと磨けてるかな?」といっしょに確認しながら歯磨きをするのもいいかもしれません。
「歯ブラシをくわえたまま走り回る」のは危険。そうならないためにはどうする?
歯ブラシを口にくわえたまま走り回る行為は、一歩間違えば命に関わるため、必ず注意しましょう。
もしも子どもが歯ブラシを持ったまま歩いたり走り出そうとしてしまったら…このときは体を張って止め、真剣な表情と態度で「危ないから、座って磨きます」と伝えます。
それでもやめないようであれば、歯磨きは中止する。歯ブラシを取り上げても構いません。危険な行為であることを、毅然とした態度で伝え続けることが、子どもの安全を守ることにつながります。
毎回歯磨き前に「ここに座って歯を磨こうね」とルールを伝えていくことも大切です。
親子の楽しい歯磨きタイムにしよう
歯磨きは毎日のことなので、できるだけ楽しい時間にしたいもの。
ポジティブな声かけをしたり、楽しいグッズを取り入れたりと、さまざまな工夫を試してみてはいかがでしょう。
「親が子どもの歯を磨く」という一方的な行為になるのではなく、親子共に楽しい時間にできるといいですね。
PROFILE 中田馨(なかたかおり)
取材・構成/水谷映美 イラスト/林ユミ