中学受験の正体17_公園で遊ぶ小学生男子

かつては「裕福な家庭」「優秀な子」のためのもの、というイメージが強かった中学受験。しかし最近では、多くの家庭がチャレンジするようになっています。

 

気になるけれど、何から始めればいいのかわからない。そんな保護者向けに、「中学受験の正体」をイロハから進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。

 

今回は、男子の保護者の心得について。「ジェンダーフリーの時代ですが、性差に着目した受験対策には意味がある」と富永さんは話します。

コロナ禍で、男子の心の成長が遅れている

まず、これはあくまでも「一般的な」男子論です。

 

一人ひとりの男子は、どこかに女子らしい要素を持っているし、その逆、女子も同様に男子要素を持っています。

 

大切なのは、子どもの個性を見極めること。さまざまな対策を知り、子どもに合わせたものをピックアップしていってください。

 

男子の傾向でよく言われるのが「女子に比べて精神的に幼い」というもの。この幼さは、無邪気で素直とも言えますが、メンタルの弱さにもつながるので、中学受験の際は注意が必要です。

 

以前は「男子は6年生の秋以降に爆発的に伸びるから、それまでは放任で」というイメージがありました。ですが、最近はずいぶん違っています。実際は、精神的に大人で先を見通せる女子の方が秋以降の頑張りがきく傾向にあります。

 

僕はこのコロナ禍で、子どもの幼さに拍車がかかっていると感じています。個人的には、今年の6年生の大人度は、コロナ前の4年生程度にとどまっている印象です。

 

男子の成長にはリアルな体験が必要

本などから学ぶのが難しい子どものうちは、小さな「対面」でのコミュニケーションの積み重ねがとても重要です。家庭の人以外との、トラブルや話し合い、触れ合いですね。

 

給食で牛乳の早飲みをしてこぼしているクラスメイトを見たり、ドッチボールで顔にボールが当たって痛い思いをしたり。徒競走で転んで泣いたり、下校中に騒いで怒られたり。

 

こうした何でもない日常を積み重ねることが子ども、特に男子を成長させる基盤になっていたのですが、コロナ禍で難しくなってしまった。

 

だから特に今は、精神的に追い込むような接し方や指導法はご法度です。大人が叱咤激励して追いつめると、精神的につぶれて「もう受験やめる」となりかねません。

早い段階で志望校を意識すべき理由

精神的に幼い子どもの保護者は、早い段階、できれば本格的な受験カリキュラムに入る新4年生くらいまでに目指す学校を見定めておくとよいでしょう。

 

男子の中学受験は、学校のレベルによってやるべき量と解くべき問題の難易度がまったく違います。

 

誰もが開成を目指すための勉強をする必要はありません。ただ、多くの塾では難関校狙いのテキスト、カリキュラムを用意している。目的意識のないままなんとなく「少しでも偏差値の高い学校へ」と思っていると、子どもに合わない勉強をするはめになり苦しい受験になってしまいます。

高望みしすぎると受かるはずの学校も危うく

的外れな勉強をさせられるほど、つらいことはありません。無駄にエネルギーを分散してしまい、本来受かるはずの学校さえ受からなくなってしまう子どもは実に多い。

 

特に男子は自分で志望校について考えないことが多いので、保護者がそのあたりを見極める必要があります。目標を早めに描いておくと、その学校に強い塾、勉強すべき内容が的確に選べて楽になりますよ。

志望校は偏差値で選ばなくていい

早くに志望校を定めておくといっても、偏差値で判断する必要はありません。偏差値は勉強次第で伸びますから。それよりも、保護者が教育理念に共感できる、本人の個性に合う学校を、子どもと一緒に考えて欲しい。

 

子どもには判断材料がないので、保護者の出番です。インターネットや書籍などで、いろいろな学校を研究してください。

 

親子で本当に行きたいと思った学校が難関校なら、そこに合わせた塾に行き、そこに合わせた勉強を始めればいい。本気で開成を狙いたいならSAPIXで、存分に勉強すればいいでしょう。

 

子どもの志望理由は単純でも構いません。「学校名がかっこいい」「学校にヤギがいる」なんて思いをきっかけに進学する男子は意外と多いですよ。

 

目指す学校が見えてくれば「いっぱい算数を頑張らないとね」「やるよ。僕あそこに行きたいから」というストーリーにつながります。ストーリーがあれば、男子は頑張ります。幼く純粋だからこそ出る馬力です。

 

中学受験の正体_matome1

男子は精神的に幼いからこそ、まずは親子で志望校を決め、そこに合った塾を選ぶのが理想。

 

無理のない受験が可能になるだけでなく、目的が定まることで頑張りもきくようになります。

 

中学受験の正体バナー

監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ