スマホを見る少女_pixta_67679807_M

夏休みが始まりました。

 

自由になる時間が増え、子どもたちがスマホに接する時間が長くなる期間です。そこで保護者が注意すべきポイントのひとつ、「自画撮り被害」についてお話しします。

児童ポルノ事件の約4割が「自画撮り被害」

「自画撮り被害」とは、子どもが自分で撮影した裸の写真を大人が送らせる犯罪です。

 

4月に公開された『SNS-少女たちの10日間』という映画をご存知でしょうか。チェコで制作されたこの映画は、幼い顔立ちをした女優達が12歳の少女を装い、スタジオに作られた子ども部屋のセットでSNSを使う様子を10日間追ったドキュメンタリー映画です。

 

映画では少女たちに近づく大人たちが、ビデオ通話で裸を見せるように要求したり、裸の画像を送るように説得する様子が映し出されています。映画のために用意した合成の裸画像を送ると、それをばら撒くと脅してさらに裸画像を要求します。とても子どもが太刀打ちできるような状況ではありません。

 

これはチェコだけで起きていることではなく、日本も同様の状況です。

 

全国の警察が2020年に摘発した児童ポルノ事件で、被害に遭った児童は1,320人。そのうち511人は自画撮り被害でした。被害者は中高生がほとんどですが、小学生も増えてきています。

 

どんな事件が起きているのか、東京都都民安全推進本部の相談事例を見てみましょう。

 

2021年5月、ネットで知り合った人とチャットしていた女子が顔写真を要求され、送ってしまった。すると、服を着ていない写真を要求され、断ると「顔写真を晒す」と言われた。

 

2021年3月、自称同年代の女子とオンラインゲームで繋がった男子が、個人情報をばらされたくなければ裸の写真を送れと脅された。

 

2021年1月、友達がSNSアカウントの乗っ取り被害にあい、それに気づかずにやり取りをし、家族が下着の会社を立ち上げるからサンプルをあげると言われて裸画像を送ってしまった。アカウントはその後削除された。

 

どの事例でも、子どもの裸画像を送らせる大人は言葉巧みに画像を要求し、時には脅して自画撮りを入手しています。

子どもに注意喚起したい「元YouTuberの事件」

自画撮り被害に遭ってしまった子どもたちは、「裸画像を送った自分が悪い」「もっとひどい目にあわされるかも」と考え、親や学校に相談できないことがあります。

 

そのうち、相手の要求がエスカレートし、わいせつ事件へと発展するかもしれません。子どもたちが自画撮り被害にあわないためには、どうしたらいいのでしょうか。

 

まず、知らない人とSNSで繋がらないことを約束します。でも、同じ芸能人を推しているアカウントなど、情報交換のために繋がりたがることもあるでしょう。その際は、大人がやりとりを確認し、写真を含めた個人情報をメッセージでやり取りしないといった約束をしておきます。

 

知らない人を避けるだけでなく、ネットの有名人にも注意が必要です。YouTubeやTikTokで有名、SNSでフォロワー数が多いといった人につい惹かれてしまうことがあるかもしれませんが、公的に見せている顔はその人の一部分かもしれないと伝えます。

 

2021年3月には、元YouTuberの男が当時15歳だった少女に、30〜50枚もの裸の画像を撮って送らせた疑いで逮捕されています。

 

なぜ送るのか、と疑問に思うかもしれません。しかし容疑者は、「30枚送ると通話」「50枚送れば会える」と少女に画像を要求し続けていました。憧れのYouTuberと知り合いになれて嬉しかった少女は、メッセージでの会話を打ち切られたくないばかりに言いなりになっていたのでしょう。

 

この問題は、少女が別のYouTuberに相談したことで発覚し、逮捕へと至りました。こうした事例は子どもにとって怖さが想像しやすいので、ぜひ話してあげてください。

自画撮り被害にあってしまったら

もし子どもが自画撮り被害に遭ってしまったら、相談窓口や警察に相談しましょう。

 

最寄りの警察署に出向くか、警察相談専用電話(#9110)や性犯罪被害相談電話(#8103)などに電話します。また、県が運営する若者向け相談センターなどの機関が、電話やメールでの相談を受け付けています。

 

大ごとにしたくない気持ちもわかりますが、これ以上被害を大きくしないためにもぜひ相談してみてくださいね。

文/鈴木朋子
参考/映画『SNS-少女たちの10日間』 http://www.hark3.com/sns-10days/
警察庁|【児童ポルノ事犯】 被害児童の学職別・被害態様別の割合 https://www.npa.go.jp/policy_area/no_cp/uploads/kodomonoseihigair3.pdf
東京都都民安全推進本部こたエール|性的トラブル相談事例 https://www.tokyohelpdesk.metro.tokyo.lg.jp/consult/jirei/kousai.html