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こんにちは。メンズカウンセラーの中村カズノリです。

 

夫婦関係に問題を感じている読者の悩みの解決方法を探っていく本連載。前回は、ほとんど家にいないのが当たり前だったパートナーがリモートワークになったことにより、家の中がちょっとギスギスしてしまってお困りのMさん(37歳)の相談を紹介しました。

「俺も働いてるんだから働けよ」と言う夫に妻は何も言えず…

実はこのリモートワーク問題、単に「お互い物理的に狭すぎて落ち着かない」という以外の困りごとももたらしていました。

 

パートナーには、自分の仕事中にMさんが横になって休憩していたりテレビを観ていたりする状態がどうしても嫌、という気持ちがあったようです。それでつい、「何サボってるの?」なんて言ってしまう。

 

Mさんからすると、完全に難クセです。今までそうして上手くやっていたところに、いきなり入り込んできたのはパートナーなんですから…。実際、昼間に休憩しているぶん、家族が寝たあとに食器を片づけたり、ワイシャツのアイロンがけをしたり…ということもあるわけです。

 

そのあたりの事情がパートナーにはどうしてもわかってもらえない。「自分が働いている間はとにかく何か家事をしていてほしい」という思いがあるようだと言います。

モラハラ一歩寸前…回避するための“気づかい”が結局妻を苦しめる

一歩間違えれば「モラルハラスメント」にもなりかねないですし、売り言葉に買い言葉で夫婦ゲンカになってもおかしくないシチュエーションです。

 

そこで揉めごとを回避しているのは、ひとえにMさんの気づかいのおかげ、と言えるかもしれません。

 

パートナーの機嫌が悪いときはなるべく近づかない、在宅勤務のときは買い物に出かけるなどして物理的に距離をとる、家事の合間にひと息つこうとしたら「コーヒー淹れて」なんて頼まれ、カチンと来ても「まあこれぐらいは」と思い直して淹れてあげる…こういったことを特に意識せずに実行できていること自体、本当に立派です。

イライラする夫と怯える妻

実家や職場…長く置かれた環境の違いで「当たり前」は変わる

Mさんはまた、お互いの育った過程や環境の違い、パートナーの実家の様子から、「夫は家事の必要性や大変さがわかっていないのかもしれない」と推察していました。

 

Mさんのお母さんは、細やかにいろいろな家事をこなす人だったそう。いっぽうで、パートナーの子ども時代は、様々な事情もあって親から手厚くケアされる環境ではなかったようです。

 

そういった生い立ちの違いから、例えば子どもが忘れ物をした場合、Mさんが届けてあげようとすると、パートナーは「そんなの放っておけばいい」と割りきる場面もあるのだとか。

 

そのときに困った経験から、次は忘れないだろうという理屈ももっともです。でも、一人で完璧に準備ができる小学生なんて、なかなかいませんよね。

 

Mさんは「わかっているなら助けてあげればいいのに、親としてちょっと冷たくないだろうか?」と感じてしまうし、パートナーは「子どもを甘やかしすぎるのは良くない」と思っている。どちらがいい、悪いではなくて、そういう育ち方による価値観の違いが生じるわけです。

自分の「常識」を思わず押しつけてしまうことも

しかも、パートナーの職業はシステムエンジニアとのこと。僕の本業もそうなので、この業種の仕事の進め方にも関連するかもしれないと感じました。

 

システムエンジニアはたいていの場合、仕事を受けたらまず、やるべきことをダーッと書き出して順番を決めます。急な差し込み作業も想定したうえでTO DOリストを作り、その順に作業を進めるのが通例なんですね。

 

Mさんにそうお伝えしたところ、パートナーもよくリストにメモしているということなので、同じように作業していると推測できます。

吐き出すことで「気づく」ことの大切さ

家事の場合は、季節やその日の天気によって臨機応変に、その時その場で必要なことをこなしていくことが案外多いものです。Mさんは「だから夫は、私があらかじめ決まったスケジュールで動かないのが理解しづらいのかも」と気づいたと言います。

 

こういうふうに、パートナーさんの立場や事情を考えて汲んであげられるのが、Mさんの素晴らしいところだと僕は思います。

 

こういう気づきについて、誰かと話すことは実は大事なんですよね。口に出すことで初めて、「自分はこう感じていたんだ」と気づくということはよくあります。ただ、今は状況的に人と話すこと自体が難しいですよね。友達とオンラインでお茶会をするにしても、パートナーが在宅勤務では愚痴も言づらいものです。

 

そんなときは、スマホの日記帳やブログの閲覧者限定記事など、パートナーの目に触れないところに、その日あったことやそのときの自分の気持ちを書くのがおすすめです。書いてみて初めて気づける自分の思いもありますし、後で読み返したときに「あのとき、こういうこと考えていたんだ」と振り返ることもできますから。

付き合いが長くても「見えない部分がある」からうまく回る

Mさんとパートナーのように、独身時代からの付き合いが長くなるとどうしても忘れがちですが、相手も自分もお互いの全部をわかっているということはほぼないんですよね。

 

例えば学生時代にずっと一緒にいたとしても、就職した業界が違ったり、結婚して片方が家庭に入ったりすれば、それぞれの世界は当然変わってきます。それで見えなくなっていた部分があったからこそ、今まで平和に回ってきた面もあると思うんです。

 

でもコロナによって、そうやって別個に回ってきた仕事の世界と家庭が急に重なってしまった。これは誰にも予想できなかったことです。

ネット限定の逃げ場を作るのもアリ

慣らす暇もなく物理的な距離がいきなり縮められてしまった、これは大きなストレスですし、トラブルも起きて当たり前。

 

その分の逃げ場がどこかに必要です。先ほど申し上げた日記やブログなんていうのは、心の距離を取るための「自分の世界」の一例で、ゲームでも何でもいいんです。そういう意味では、ネット限定の人間関係を新たに作って、プライベートは明かさない程度の付き合いをするというのもおすすめです。

 

人それぞれ、その人に合った形で、コロナ禍を乗りきるための場所が見つかることを願っています。

文/中村カズノリ イラスト/竹田匡志