子どもがテストでいきなり0点だったら、「勉強していなかったの!?」と、親としてイラつくことがあるかもしれません。でも、子どもの同級生が0点をとってもまったく怒りは湧かないですよね。なぜでしょう。

 

脳科学に詳しい星渉さんによれば「親のストレスを減らすためには子どもへの期待値を下げること」が重要なようで──

「有難い」感謝の気持ちが期待値を下げる

星さん:

「怒り」というのは「期待」からくるものです。自分の子どもがテストで0点をとったら怒るけれど、隣の家の子どもなら怒らない。期待しているかどうかという点に自分の感情が影響されます。

── でも、過度なものでなかったとしても、自分の子どもには期待してしまいますよね。でも、それがストレスになった結果、家族にも悪影響があるのは誰も望んでいないはず。どうしたら期待値は下げられるのですか?

 

星さん:

どんなことでも「ありがたいな」と思えるようにすることです。感謝には2種類あります。恩恵的感謝と、普遍的感謝です。

 

恩恵的感謝は、いいことをしてもらったときに「ありがとう」というものです。この恩恵的感謝は、ある研究によると、繰り返すと鬱になるというものもあります。

 

なぜかというと、恩恵的感謝が習慣になってしまうと、何かしてもらわないとありがとうと言われなくなる。ありがとうと言われないと、何もいいことがないと思って気持ちが病んでいってしまうとされています。恩恵的感謝はもっと何かしてもらいたい、もっともっとと期待値を上げてしまいます。

 

一方、普遍的感謝は真逆です。何もしていなくてもありがたいなと思える感謝です。日本語だと「有難い」という感覚ですね。今日も普通に暮らせて有難い、そんな普遍的感謝をたくさん感じられるようになると、相手に対しても期待値が下がっていきます。

習慣化するには意識的な訓練を

── 理屈はわかりますが、慣れない人にとっては意識的にトレーニングする必要がありそうですね。

 

星さん:

はい。トレーニングしないと難しいと思います。寝る前に子どもと一緒に「今日は帰り道にタンポポがきれいに咲いていたたね。きれいなお花を見られてよかったね」など、普遍的感謝の出来事を互いに3つ言い合うことも期待値を下げるうえで効果的です。

 

── 些細なことに感謝できるようになることが大切なんですね。

 

星さん:

余裕がないと、「あれしなさい、これしなさい」とママは子どもにイライラして命令しがちです。でも、期待値が下げられていれば、「今日も遊びに熱中していてすごいね」と褒められるという発想の転換につながるんです。

 

── そう考えると、私たちはいろいろな豊かさになれすぎてしまい、本来は有難いことが当たり前なことだと思い込んでいるのかもしれませんね。

 

PROFILE 星渉さん

作家、講演家。1983年仙台市生まれ。心理学、行動科学をベースにした人材育成をする株式会社Rising Star代表取締役。大学時代の塾の講師をし、当時から心理学的手法を用いて子供達に勉強を教えてカリスマ講師として話題に。大学卒業後、大手損害保険会社に勤務。東日本大震災で岩手県で被災し、「自分の残りの人生は好きなことに費やす」と決意し2011年に起業。国内やニューヨーク、パリなどでも講演会を行い、1万2000人以上が参加。育成した起業家は600人以上。現在は札幌市と東京を行き来するデュアルライフを送る。著書『神メンタル』『神トーーク』『99.9%は幸せの素人』は累計30万部を超えるベストセラーに。

取材・文/天野佳代子