幼少期の母親との関係が良かった人は、そうでなかった人と比べて、年収で約870万円も差がつく研究結果が出ている──。脳科学に詳しい星渉さんは「ママと子供の関係性が将来の年収に関わってくる」と注意喚起します。
ハーバードメン研究で結果わかったこと
── 子どもの将来の年収が、幼児期の母親との関係で変わるとはどういうことですか。
星さん:
有名なものが「ハーバードメン研究」というものです。ハーバードの卒業生に対しての研究で、ハーバード大学に在学した268人に対して、75年もの間追跡調査し、2009年に結果が発表されました。
この調査では、1年に1回、健康調査、心理調査、人生がどう変わったかを記録。人生で幸福度がとても高かった人と、そうではなかった人を分析したのですが、結果、幸せになるかならないかの大きな要因は、温かな人間関係だったんです。
さらに言うと、幼少期、母親といい関係だった人は、そうではなかったという人と比べて年収で約870万円も差がつくという結果が出ています。生涯年収ではなく、年収です。
面白いことに、父親とは相関関係が見られなかったんですよね。
── ちょっと考えてしまいますね。
星さん:
みなさんとお子さんの関係性はお子さんの将来の年収に関わってきます。
── この調査でいう、温かい人間関係とはどういうものですか。
星さん:
子どもから見た温かい人間関係とは、信頼関係があるということですね。信頼関係があるとは、ちゃんと見守ってくれているな、信頼されているな、と感じられるかということです。
ちゃんといい部分を見てくれていると子どもに体感させているか。そんな声がけをしているかどうかということです。
実母といい関係を持てなかったママはどうする
── 自分自身が母親と良い関係を築けていなかったというママはなかなか難しいと思いますが、どうしたらいいでしょう。
星さん:
そういうご相談は多くて、そんな場合は、本当は自分が母親にこうしてもらいたかったのに、というリストを作る必要があります。
「こんなひと言を子どものときにかけて欲しかった」というリストを作って、それを実際に自分の子どもにやるだけです。
そのとき、「自分はしてもらえなかったのに」と恨めしくなると行動しにくい人もいるかもしれません。だから、自分自身を満たしておく必要があります。 自分がいい状態だったら、「私も子どものときにこうして欲しかった。だからしようね」となります。
自分を満たせていないと「なんだかなあ」となってできないので、自分をいい状態にすることは非常に大切だと思います。
できている部分を数えてほしい
── 最後にお母さんたちに、こういうことに気をつけた方がいいということがありますか。
星さん:
これがですね、今「気をつけた方がいいことありますか」とおっしゃいましたね。それは何か起きないようにするという発想じゃないですか。
そうおっしゃる方が多くて、日本のママたちは本当に一生懸命だと思う典型ですが、気をつける部分より、こうするとさらに良くなる部分はどこだろうって考えるのが良いと思います。
気をつけないと、という視点が出てくるのは、まだまだ自分を満たせていない状態だと思います。十分ママたちはやっていると思って、自分を認めてあげることをまず最初にやってほしいですね。
例えば、料理が上手くできなくても、手料理じゃなくても、準備はして食べさせたんですよね。できていない部分じゃなく、できている部分をカウントしていきましょう。
お風呂掃除できなくて、と言っても、お湯入れたんですよね、入れているだけいいじゃないですか。できている部分を数えて、今の素晴らしい状態を実感してほしいですね。
PROFILE 星渉さん