中学生のトニーニョくん(15歳)と3人で暮らす、漫画家の小栗左多里さんとジャーナリストの夫・トニーさん。

 

夫婦で子育てをしていくなかで「異文化で育った者同士はどうやったら折り合えるのか?」と試行錯誤した経験から感じたことや自分の幼少期の体験を、それぞれに語ります。

 

今回は、「子どものおやつ」について。トニーさんの子ども時代のおやつにまつわる思い出を語ってもらいました。

「おやつ」って、子どもの興味が詰まった最高の教材だ

おやつとは何か?場合によって、それは食べ物にもなるし、いろいろな事柄を教えてくれるものにもなる。

 

たとえば、両親がよくバックパックに入れてくれた、枝付き干しぶどう。つまりレーズンだ。

 

小学2年生のときだったと思う。紙パックに入っていたレーズンを食べ終わり、箱が空になったところで…“音楽の勉強”のはじまり、はじまり。

小栗さん連載イラスト

箱はちょうどいい大きさと素材のものだったのか、それを口に当てて強く吹けば、音が出るようになっていた。どちらかと言えば錆びた笛のような音だったけれど、何度も練習しているうちに、音程を少し変えられるようになった。

 

試行錯誤しつつ頑張って練習していたら、ついにアメリカの国歌の演奏にも成功(なんとなくだが)!

 

ただ、音楽の授業の時間帯にそれを披露したものの、先生に褒められることはなく、むしろ箱を取り上げられたような記憶がある。でも、この「レーズン箱吹き」を通じて、音色(おんしょく)や音高、リズムについてだいぶ学べたと思う。

大人に厄介者扱いされても…子どもはぐんぐん知識を吸収する

このレーズンのおやつは、“理科の勉強”にもつながっていた。

 

「先生、なぜ種がないの?」 「『種なし』という種類だから」 「ほっ。で、先生、種なしなら、どうやって次の代のぶどうができる?」

 

そんな説明を求められる心の準備ができていなかったのか、理科の先生はすぐには正解を出してくれなかった。でも、日を改めて説明してくれた。

 

「農家の人は栽培中のブドウの木の枝を切り取り、別のブドウの苗木に接着させておくんだよ。それがうまく定着したら、次の代を育てられるんだ」 「でも先生、農家の人がもし病気になってその作業ができなかったら、次の代はどうやって育つの?」 「さあ、どうなるのかな。…先生、疲れたよ」

 

種なしブドウの木の世代交代について、それ以上は学べなかったけれど。

食べっぱなしだと虫歯になる…そんな当たり前も学びのひとつ

それに、衛生・栄養に関する知識だって得られた。

 

レーズンをいっぱい食べていたら、「君たち、レーズンが大好きなのはわかるが、いつまでも食べていると歯に悪いよ」と言われた2年生の僕は、鏡を向かって口を開けた。確かに、歯のところどころに黒いものがくっついていた。

 

歯ブラシを持たずに登校していたので、歯にくっついたレーズンの破片を半日以上、取り除くことができなかった。先生からの注意を受けて、それから歯ブラシを持って登校していた…と言いたいところだけれど、そうはならなかった。

 

とはいえ、それでも一つ賢くなったとは言える。子どもは皆、「甘いものはほどほどに」や「歯を磨け」という漠然としたフレーズをさんざん聞かされて育つ。でも、僕はこの「レーズンを食べたあとの口開け体験」に恵まれたので、口腔衛生の大切さをむしろ実感した。おやつのおかげで。

 

少し後悔しているのは、算数の授業の時間にレーズンを取り出さなかったことだ。とにかく引き算がわかりやすくなるはずだったから。食べているうちに数が減って…!

文/トニー・ラズロ イラスト/小栗左多里