「ひと言で『お風呂に入りたくない』といっても、理由はそれぞれ。まずは“どうしてお風呂に入りたくないのか”子どもに聞いてみましょう」

 

今回は、イヤイヤ期専門保育士の中田馨さんに、子どもがお風呂を嫌がるときの声かけや対策法をお聞きしました。

お風呂に入りたくない理由はさまざま

お風呂に入りたがらない子どもは意外に多いのですが、特に「イヤイヤ期」となると、あの手この手で誘っても、なかなか思うように動いてくれないもの。

 

毎日のことなので、できれば親にとってもストレスなく対応できたら助かりますよね。

 

とはいえ、イヤイヤ期の1歳半から3歳くらいの頃は、まだうまく言葉で説明できない子がほとんどですし、自分でもどうしてイヤなのかわからない子もいます。

 

聞いても理由がわからない場合は、普段の子どもの行動やお風呂に誘う前にしていたことをもとに、親が推測してみましょう。このことこそが、イヤイヤ期の対策の大きなカギになるはずです。

子どもがお風呂を嫌がるときの3つの対策

なんとなくでも嫌がる理由の検討がついたら、次は子どもの気持ちに応じた声かけをしてみましょう。

気持ちを切り替えやすい声かけをする

お風呂になかなか入りたがらない理由としてもっとも多いのは、「遊びに夢中になっていて、その遊びを中断したくないから」ではないでしょうか。

 

この場合、子どもがみずから遊びをやめてひと区切りつけることは難しいので、気持ちを切り替えやすい声かけや工夫で親が働きかけてみましょう。

 

たとえば、 「時計の長い針が6まできたら入ろうね」


「このタイマーが鳴ったら、お風呂に入ろう」

 

などと、どうなったらお風呂に入るのかを具体的に伝えます。タイマーを使う場合はお子さんにボタンを押してもらうなどいっしょにセットするのもいいですね。

 

そして、「最初に声かけしたとき」「5分前」「最後にきりあげるとき」のタイミングで何度か声をかけ、子どもの意識を少しずつお風呂に向くようにしていく。そうすると、急に「お風呂に入ろう」と伝えるよりも、気持ちをスムーズに切り替えやすくなります。

 

なかには、「お風呂に入る=遊びはおしまい=遊んでいたおもちゃを片付けなくてはいけない」という気持ちでお風呂を嫌がる子もいるでしょう。

 

お部屋のスペースに問題がなければ「おもちゃはこのまま置いておいて、明日続きを遊ぼうか」、時間に余裕があるのであれば「お風呂から出たら、寝るまでの間、遊ぼう」といったように、可能な範囲で遊びの継続を約束してあげると、子どもは安心してお風呂に入ることができるのではないでしょうか。

グッズを利用してお風呂のイメージをプラスに

子どもがお風呂に対して何かネガティブなイメージがありそうな場合は、好きなキャラクターのグッズなどをうまく利用して、お風呂に誘うのもひとつの手です。

 

お風呂遊び用のおもちゃや、見た目が楽しいシャンプー、子どもが興味を示しそうな入浴剤を用意して、お風呂を楽しい場所、というポジティブなイメージにできるといいですよね。

 

なかには、これまではお風呂にすんなり入っていたのに、急に嫌がり出すことがあるかもしれません。この場合は、シャンプーが目に入って痛かった、お湯が熱すぎたなど、何かしらの嫌がる理由があるはず。

 

子どもに理由を聞いたり親が想像したりして、お風呂が嫌になってしまったきっかけを探ってみましょう。

 

明確な理由がわかった場合は、次はそうならないように気をつけてあげることが大切です。

 

たとえば、シャンプーハットを使ってお湯やシャンプーが目に入らないようにする、動物型の温度計でお湯の温度を確認するなどして、少しずつお風呂に対する恐怖心を取り除いてあげられるといいですね。

 

うまくいったときは、「大丈夫だったね」「強かったね」という声かけも忘れずに。

 

お風呂に誘う際は、「バイキンがいっぱいいるから」「体がくさいから」といったネガティブな声かけをするのではなく、「今日はたくさん遊んでお砂がついてるから、あわあわで洗ってピカピカにしよう!」というように、ポジティブな声かけをすると、よりお風呂が楽しい場所に変わると思います。

ときには無理をしないことも大切

場合によっては、なんとなくお風呂に入りたくない気分という日もあるでしょう。どうしても無理そうであれば、「今日は入らなくてもいいか!」と割りきっても構いません。

 

無理強いしてイヤイヤをこじらせるよりも、あっさり引いたほうが親のストレスも軽減されます。

 

1日くらいお風呂に入らなくったって大丈夫。温めたタオルで顔やお尻まわりだけ拭いて、体の汚れを落としてあげましょう。「今日はタオルで拭くから、明日は入ろうね」という声をかけて、次回のお風呂につなげられるとよいですね。

「お風呂から出るのがイヤ!」という場合はどうする?

いったんお風呂に入ると、今度は楽しくなってなかなか出ない…というケース。遊びに夢中になってしまうと長風呂になり、親のほうがノボせてしまうことも。

 

協力者がいるのであれば、バトンタッチするのもひとつの方法。子どもには「パパが出るときに、一緒にあがってきてね」と伝えます。

 

自分一人しか対応できない場合は、お風呂を出た後のこと、たとえば「今日はあの絵本を読もうか」など、寝る前のお楽しみを伝えるのもいいアイデアかもしれません。

 

また、お世話好きな子には、タオルを渡して「ママ、そろそろ出たいんだけど、背中を拭いてくれる?」とお願いしたり、「髪の毛を乾かすの、手伝ってほしいな」と子どもの仕事を作ってみてはどうでしょうか?

 

そういったママの一声が、お風呂を出るきっかけにつながることもあるでしょう。

子どもの気持ちに寄り添った対応を

子どもがお風呂を嫌がる理由は、いつも同じ理由かもしれないし、日々理由が変わることも珍しくありません。

 

ですので、その時々で子どもの気持ちを考え、汲み取りながら工夫して対応していくことが大切です。

 

どうしても子どものイヤイヤが収まらないときは、親が無理強いする必要はありません。たまにはサボってもいい、という気持ちで、ゆるく楽しく子どもと向き合ってみてくださいね。

 

PROFILE 中田馨(なかたかおり)

保育士。兵庫県西宮市の認可保育施設中田家庭保育所施設長。母が自宅で立ち上げた保育所で、幼少期から乳幼児と過ごしてきた。20年以上の保育経験を生かし、育児講座や執筆活動をしている。著書『イヤイヤ期専門保育士が答える子どものイヤイヤこんなときどうする?100のヒント』(実務教育出版)など。

取材・構成/水谷映美 イラスト/林ユミ