「イヤイヤ期が持つ意味を事前に知っておくと、身構えていたより気持ちに余裕を持つことができるかもしれません」
今回は、イヤイヤ期専門保育士の中田馨さんに、イヤイヤ期の特徴について教えてもらいました。
イヤイヤ期は子どもの成長の証
「イヤイヤ期」は、子どもにとって大切な成長過程のひとつ。個人差はありますが、一般的に1歳半~3歳くらいの時期を指します。
子どもの「イヤイヤ」は自立心の芽生え
「パパやママの手を借りず、何でも自分でやってみたい」という自立心が強まる一方で、知能は発達しているのに、まだ自分の気持ちをうまく言葉で伝えられない。
そんな、「イヤ」という言葉ひとつですべてを表現せざるを得ない状況が子どもの心の中にあるのです。
我が子の「イヤイヤ」に日々対応する親御さんも大変ですが、子ども自身も、気持ちが思うように伝えられないもどかしさを抱えています。
しかし、イヤイヤ期が来ること=心身ともにしっかりと成長している証。とっても喜ばしいことだということも忘れないようにしたいですね。
子どもの「イヤイヤ」の内容は主に2種類
イヤイヤ期の子どもの心の内には、「自分で全部やりたいからイヤ」という気持ちと、「なんでもかんでもイヤ」という気持ちの2種類があります。
「自分で全部やりたいからイヤ」というときは、「パパやママの力を借りなくても自分はできるんだ」「自立したいんだ」という気持ちが隠れています。
一方、「なんでもかんでもイヤ」と主張するときは、単純にパパママに甘えたい、自分のことを見てほしいという気持ちがあります。
この2つの感情は、とても複雑に子どもの中で混在しているので、このあいだまでは「全部自分でやる!」と言っていたのに、急に「ママやって!」ということも珍しくありません。
ですので、もう一人でできるのだからと、全部が全部子どもにやらせようとすると、親も子どもも疲れてしまいます。
親子で疲弊してしまうのはとても悲しいことですので、その時々の子どもの様子に合わせて柔軟に対応していくことを心がけましょう。
いつからいつまで?年齢別イヤイヤ期の特徴
ひと言でイヤイヤ期と言っても、年齢に応じてその特徴はさまざまです。
1歳頃のイヤイヤ期
1歳半頃は、「イヤ」という言葉を覚えたての頃。詳しい理由までは説明できないけれど、「イヤ」と言えば自分の気持ちがパパやママに伝わると気づく時期です。
「イヤイヤ」と主張しつつも、別のことを提案すれば気をそらすこともしやすいので、比較的ソフトなイヤイヤ期といえるでしょう。
2歳前半の頃のイヤイヤ期
続く2歳前半頃は、まさにイヤイヤ期のピーク。
「僕は私は、自立したい!」ととにかく自分の思いを主張したい時期なので、大人の言葉がなかなか耳に入りにくく、保護者が一番手を焼く時期かもしれません。
2歳後半から3歳頃のイヤイヤ期
言葉の理解力がぐっと上がってくる2歳後半~3歳頃になると、まだまだ不十分ではありますが、自分の気持ちを少しずつ言葉で表現できるようになってくるでしょう。
なかには、イヤという言葉以外でパパやママに自分の思いを伝えられることで、「イヤイヤ」が落ち着いてくるお子さんもいますが、まだまだ続く子も。
もちろん、「イヤイヤ」が落ち着いたと思ったら、また始まるといった風に一進一退というお子さんもいます。
それ以降
ちなみに、子どもはいくつになっても「イヤイヤ」とぐずることがありますが、これはいわゆる一般的なイヤイヤ期とは少し種類が違います。
幼児期のように、言葉の発達が追いつかないが故にもどかしくて出る「イヤイヤ」ではなく、しっかり話せて意思をもったうえでの「イヤイヤ」なので、「甘え」だったり「反抗期」の一種と考えていいかもしれませんね。
イヤイヤ期がない子もいるの?
よく「イヤイヤ期がない子がいますか?」という質問を受けますが、表面的に出ていないだけで、全くないという子はいないと私は考えています。
イヤイヤ期の時期と同様、表現にも個人差があるので、激しく泣き叫ぶ子もいれば、静かに「イヤ」と表現する子もいるでしょう。なかには心のうちで「イヤ」と思っていても、表面に出さないという子もいます。
また、子どもの気持ちは日々変わるもの。
そんな複雑な子どもの思いを汲んであげられるように、日々のお子さんの様子をしっかり見守っていくことも、大切にしていっていただきたいなと思います。
時期だけでなく表現方法も子どもによってさまざま
イヤイヤ期は、期間も表現の仕方も本当にさまざま。でも、それらすべては子どもの個性であり、心と体が大きく成長している証です。
対応に正解がないですから、悩むのも当然。ですが、悩みながら、失敗しながら、ぜひ親子で楽しい時間を過ごしてください。
PROFILE 中田馨(なかたかおり)
取材・構成/水谷映美 イラスト/林ユミ