かつては「裕福な家庭」「優秀な子」のためのもの、というイメージが強かった中学受験。しかし最近では、多くの家庭がチャレンジするようになっています。
気になるけれど、何から始めればいいのかわからない…。そんな保護者向けに、「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は「大人でも解けない」「難問奇問が出る」とも言われる中学入試の算数について。みんながどこでつまずいているのか、有効な対策はあるのか、伺いました。
中受算数が難しいと言われるわけ
中学入試の算数は、実はそれほど難しくありません。
もちろん、対策は必要ですが、8割の学校の問題は、中学受験用の教材をしっかりこなせば対応できます。
それなのになぜ中受算数が「難しい」と言われるのかというと、一部の学校が出す超難問や特殊な問題を、塾がやたら取り上げて宣伝しているからです。「塾に来ないと駄目ですよ」と言いたいわけです。
算数が苦手な子の大半は計算力不足
それほど難しくないはずなのに、点が取れない。その大きな理由は、計算力です。
九九があやふや、計算の工夫ができない、そもそも1桁のたし算でミスする…、子どもによってつまずくポイントはいろいろですが、最近は、基本的な計算力が不足している子が増えていると感じています。
計算力不足の子が増えている最大の理由は、小学校で教えるべきことが増えて、学校でしっかり演習させる時間がなくなっているからでしょう。
つまり、計算力の訓練が家庭任せになっているのです。それに気づかず手を打たないでいると、子どもはますます計算力不足になってしまいます。コロナで休校期間が長引いたことで、きちんと家庭学習できている子とそうでない子の、計算力格差も生じています。
「うちは通塾させてるから」と安心はできません。低学年のうちはパズル的な問題に特化して、地道な計算の訓練をしない塾も少なからずあります。中学受験において計算力は必須。算数につまづいている子はまず計算力を見直してみてください。
苦手克服のおすすめは百マス計算
「たかが計算力不足」と思うかもしれませんが、実はこれを修正するのが一番やっかいです。
とくに高学年になってからだと、忙しい中、基本的な計算問題に取り組む時間を取るのが難しくなっていきます。
うちの子、計算が苦手かも…と思ったら、1日も早く計算力アップに取り組みましょう。
受験塾が提供する計算問題集などは、算数が苦手な子にはレベルが高すぎることがあるので、より基本的な1行計算のドリルを徹底的にやるのがおすすめです。
できれば低学年のうちから、こつこつ計算の訓練を積んでおきたいところです。まずは百マス計算などで1桁の計算をしっかりやりましょう。
2桁×2桁の問題も、分解すれば1桁の掛け算と1桁の足し算の組み合わせです。1桁の計算がすばやく正確にできるかどうかで、発展的な問題を解くスピードが全然違ってきます。
図形センスは未就学児のうちから
難関校では、立体を切った時の断面に関する問題など、やや難しい図形問題を出してきます。難関校狙いなら、図形センスも磨いておきたいところです。
僕が子どもたちを見ていて感じるのは、図形のセンスは未就学児のうちから磨いておいたほうがいいということ。
逆に、計算などは入学前にやらせてもあまり伸びないし、下手をしたら算数が嫌いになってしまう可能性もある。
だから、入学前は積み木やブロック、パズルでたっぷり遊ばせて、入学後は計算をしっかりやらせるのがいいんじゃないかなと思っています。そして、新4年生(小3の2月)から本格的な文章題に入っていく。子どもの発達段階を考えると、これが無理なく算数の力を伸ばす方法だと思います。
難関校狙いとそれ以外では対策が違う
計算力の後に必要になってくるのが受験のための算数です。
受験算数で今伸び悩んでいる人、とくに5〜6年生に今一度確認したいのは、「あなたは一体どこの学校に行きたいのか」ということ。
実は、受験算数を学ぶための塾や教材にも適材適所というものがあります。
「筑駒や開成に合格者をいっぱい出している塾が、どの子にとってもベスト」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
難関校とそれ以外の学校では、算数の問題の種類がまったく違います。
難関校では、パターンにはまった問題がほぼ出ません。未知の問題に対してその場で自分の手を使って考える練習が必要になります。
それ以外の多くの学校は、パターン問題が出るので、まずはパターンを習得し、それを正確に使いこなす練習が必要になります。
難関校狙いではないのに、難関校向けの問題にむやみに取り組むのはナンセンス。志望校に合った塾・教材を選び、パターン問題をしっかり解いたほうが伸びますよ。
成績アップの秘訣はパターンを覚え使いこなすこと
中学受験で一番成績が上がりやすいのは間違いなく算数です。実は算数って、皆さんが思っている以上に公式が少ないんです。結局はそれをどう組み合わせるか。だから焦らないで基本問題をたくさん毎日解いて、身につけることが大事です。
どんな成績だろうと、まずは基本問題を100%解けるようにすること。基本問題ができれば練習問題、演習問題を解けるようになりますよ。
どの中学校を目指すにしても、必要になるのが確かな計算力、そして公式をきちんと使いこなせる力です。
基礎をしっかり固めたうえで、目指す学校に合った問題に取り組んでいきましょう。