かつては「裕福な家庭」「優秀な子」のためのもの、というイメージが強かった中学受験。しかし最近では、多くの家庭がチャレンジするようになっています。
気になるけれど、何から始めればいいのかわからない…。そんな保護者向けに、「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は、多くの中学受験生を悩ませる国語について。大人向けの小説や評論文を出す学校も多く、「勉強してもなかなか伸びない」という声も聞こえてきます。どのような対策をすればいいのでしょうか。
「読書」以外で国語を伸ばす方法はある!?
中学受験の国語に必要なのは読書とテクニックです。
読書は時間もとられますし、効果も見えにくいもの。「もっと効率的な方法を」と焦る保護者も一定数いますが、活字をまったく読めない子の点は伸びません。入試でテクニックを発揮するためには、やはり土台となる読書経験は必要です。
低学年のうちから読書を通じて活字に慣れ、そこから語彙力を増やしていくようにしましょう。
理想は、小6の夏休みに「本屋大賞」の受賞作レベルの本を読めるようになっていること。そこから逆算して低学年のうちから本を読ませていけるといいですね。
読書で、中学入試の非日常的な題材への対応力がつく
語彙力のほかに読書で身につく大切なことがあります。それはさまざまなものの見方、考え方です。
中学入試の国語では、さまざまな世界、さまざまなテーマの文章が出るようになっています。戦争や貧困、格差、大切な人との別れ…。子どもにとって非日常的な題材の文章を読ませる問題が増えているのです。
読書を通じてそういったことに触れ、日頃から考えておくことは、入試において必ず役に立ちます。
読書が苦手ならアニメでもOK。大事なのはアウトプット
でも、そもそも本を読むこと自体に慣れていないという子もいますよね。
そういう場合は、テレビドラマを活用してみてください。親子で鑑賞して感想を言い合うのがおすすめです。嫌がらなければ、子どもに話を要約させるのもいいですね。
そうしてまずは口頭でいいので、アウトプットの練習をしていきましょう。
テレビドラマ以外なら、アニメや漫画でも構いません。未知の世界に触れて、登場人物の気持ちを想像することが、国語の得点アップにつながります。
ただし与えっぱなしでは効果は薄い。アウトプットがより国語力を高めるということを保護者は意識してください。
「日本語なんだから簡単」が最悪な理由
読書と並行して、テクニックもマスターしていきましょう。テクニックとは、ことわざ、慣用句、敬語表現、漢字の書き取りなど、覚えれば点が取れるものを確実にものにすることです。早くから身につけておけばおくほど、その後の得点が伸びます。
よく「日本語なんだから簡単でしょ」と言う保護者がいますが、これは最悪です。
国語とは、「日本語」という言語をマスターすること。自分が外国語を習いはじめたときのことを思い出してみてください。いきなり難しい文章を読んで、選択肢を選ぶことはできなかったはず。
子どもも同じです。とくに小学校低学年のうちは、日本語力がないのは当たり前。
それなのに「母国語なんだからできて当然」と言われたらやる気になれないですよね。まずは短い文章を正確に読む、単語をきちんと理解して語彙を増やす、そういう勉強をドリルなどでひたすら繰り返してあげてください。
「日本語って身近で楽しいもの」というイメージを抱かせる工夫も必要です。「お父さんは冷静沈着だね」など、身近な人や出来事を四字熟語で説明するのもいいですよ。
過去問で志望校の「クセ」を把握
6年生になると、受験での得点力を伸ばす時期に入ります。その際、国語に関して僕が言いたいのは、「模擬試験の点数は気にしなくていい」ということ。
国語の入試問題は学校によって「クセ」のようなものがあります。その「クセ」に対応できるかどうかで得点が左右されます。問題から見えるその学校の価値観との相性もあります。
だから、国語は過去問をやり尽くし、その学校の問題に「慣れる」ことが一番大事です。
過去問をやり込んで、問題のクセをつかめれば、得点20%アップも夢ではありません。
併願校の過去問はGWからやってもいい
過去問は、6年生の夏休み明けから取り組むのが一般的ですが、志望校の国語については、夏休みから取り組んでもいいと思います。
他教科の過去問は早くやり始めると未習分野があったりして戸惑いますが、国語に関しては未習分野はありません。
志望校に似た問題傾向の学校や、併願校に関しては、ゴールデンウィークから解き始めてもいいでしょう。
国語が苦手な子が過去問でチェックすべきポイント
「受験学年なのにどうしても国語ができない」と絶望的な気持ちになっている…。そんな保護者は、「個別指導に通わせなきゃ」「家庭教師つけなきゃ」と悩む前にやっていただきたいことがあります。
それは、志望校の過去問に、漢字と知識が何割あるか確認することです。
漢字や知識が4割なら、ここで満点を取れれば40点確保できます。読解が60点残っていますが、選択問題で4択なら、全部勘で書いても15点になる可能性がある。そうすると、漢字・知識と読解で合計55点いける。他科目と合わせてなら合格点を取れる。…と、そんなふうに、対策が見えてくるかもしれません。
「国語は日本語だから」と、十分なステップを踏まずにいきなり難しい問題を解かせるのはNG。
ドリルなどで基本を着実に押さえながら、活字の本やドラマなどを通じてさまざまな価値観に触れ、自分の考えをまとめる練習が有効です。