「そろそろ公園から帰ろうね」「やだ!」
「もう夕方だから帰らなきゃいけないの」「やだ!」
「じゃあ、帰ったらジュース飲んでもいいから」「…じゃあ帰る」
というやりとりは、特に急いでいるときなどには、やる人も多いと思います。
しかし、最初は効果的なこの作戦も、連発しているうちに
「そろそろ公園から帰ろうね」「…ジュースくれるなら帰る」
と、子供が交換条件を出すようになって困ったという人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、交換条件がクセになってしまった子供の心理や、交換条件なしで子供が行動できるようになるにはどんな言葉かけをすればいいかを考えてみました。
子供が交換条件を出すときの心理
「子供が交換条件を出すようになって困る」
というお悩みは、だんだんと会話が上手にできるようになってくる3歳頃から5歳頃にかけてよく聞きます。
この年代の子供は、身近な大人、特にママやパパの発言や行動を観察してどんどん吸収しています。
「4歳の長女が1歳の弟に向かって、もうダメでしょ!という口調が私にそっくりで焦った」
といった経験のあるママも多いのではないでしょうか。
ということは、子供が「あとでアメ食べてもいいんだったらお片付けする」「新しいの買ってくれるなら兄弟におもちゃを貸してあげる」といった発言をしたときのお手本は、もしかしてママやパパかもしれません。
実際、4歳の男の子を育てているママのUさんからは、
「私は、モノで釣って言うことを聞かせるのはエスカレートするばかりで子供のためにならないと思っているので、根気強く言い聞かせたり、待ったりして育ててきました。でも、ここ最近、夫と子供だけで過ごすときは、どうやら終始、交換条件で言うことを聞かせているらしいことがわかりショックでした…。息子に一緒に庭の草むしりをしようと声をかけたら、何かくれる?と言われて発覚したんです」
という体験談も寄せられています。
しかし、難しいのは、例えば大嫌いな予防接種のときに、
「注射がんばったらアイスを食べにいこうね」
などのご褒美や、
「おもちゃをお片付けできたら公園に行こうね」
といった声がけさえも、「嫌なことと引き換えで何かいいことがある」という考え方につながってしまう可能性があること。
上記のようなご褒美や声がけを一切しないで子育てするのは現実的ではありませんよね。
そこで、実際に3歳~5歳のお子さんを育てているママ・パパたちに、どんなふうに子供の「交換条件」と付き合っているのかを聞いてみました。
交換条件にしたくないとき、どう言い換える?
子供が、なにか頼まれたときや、やりたくないことをやらなければならないときに、交換条件を出すのを覚えてしまったら…まずは王道の方法は「本質的な目的を教える」ことだといえるでしょう。
Hさん(5歳児のママ)は、
「遊んでばかりでご飯を食べない娘に、一度、じゃあ今日はおやつなしね!と言ったら、その日はちゃんと食べたんですが、次から毎食じゃあご飯食べるからおやつくれる?と聞くようになって、しまった!と思いました。それからは、ごはんは〇ちゃんの体を作ってくれるだいじなものだから食べないといけないんだよ、ママは〇ちゃんに元気に大きくなってほしいから一生懸命作ったんだよ。と、今それをやるべき理由だけを伝えるようにしています」
と話します。
Tさん(5歳児のママ)も、
「今日は暑いから帽子をかぶろうね、そしたらお日さまがギラギラ頭を照らしても、 安心してお出かけできるよ…とか、お洋服着たらジュースをあげるよではなく、お洋服着たらもっとかわいくなれるよ、などと本来の目的を話すようにしています」
と声がけのコツを教えてくれました。
また、Sさん(4歳児のママ)は、
「私は、毎日の生活でつい交換条件を出してやらせたくなったら、子ども自身に聞いてみるようにしています。どうしてお風呂にはいらないといけないと思う?など。すぐには無理でも、だんだんと、汚いままだとびょうきになっちゃうもんね、などと答えるようになってきますよ」
というやり方も教えてくれました。
Nさん(5歳児のママ)は、
「実は4歳になったばかりのころ、ジュースやモノでいうことを聞かせていたら、何もないとやらないと駄々をこねるようになって苦労したんです。それからは、モノをあげるのではなく、〇〇してくれたらママすっごくうれしいな!と伝えるようにしました。そして本当に交換条件なしでやってくれたら、かわりに何々ちょうだいって言わずにできたね!と喜んでほめるようにしています」
と工夫しているそう。
Fさん(小3と5歳児のママ)は、
「兄弟2人とも、5歳前後に、何か買ってくれたらお手伝いするなどの交換条件を出してくる時期がありました。その時は、それだけの知恵がついたのは喜ばしいと思ったので、おっ、良い技を覚えたね~!と答え、でも買わないよと要求そのものはあっさりと却下していました。何回かやって無駄だと悟り、2人とも言わなくなりました」
と、上手なかわし方を教えてくれました。
おわりに
親は誰しも、食が細くて小柄な子には「何とかして食べさせたい」、成績が気になる子には「何とかして勉強させたい」など、「これだけは」と思うことに対しては、交換条件をつけてでも実行させようとする傾向があるように思います。
しかし、いうことを聞くからと、毎回のように引き換えになにかを与えていると、しだいに子供は交換条件を出すようになったり、「それがないとやらない」という状態になったりするかもしれません。
ときと場合によってご褒美をあげる時はもちろんあってかまいませんが、連発を避けて上手に使っていけるといいですね。
文/高谷みえこ