毎日、わが子のためによかれと思って一生懸命子育てしているけれど、ふとしたときに「私の子育てってほんとうに正しいの?」と不安になってしまったり、この接し方を続けていいのか迷ってしまったり...そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

 

今回は、自分の子育て方針が正しいのかどうか自信がなくなってしまう3つの理由と、迷った時はどう考えていけばいいのか、ママたちの体験談もまじえて解説します。

迷う理由①他と比べてしまう

子供はどの子も日々心身ともに発達成長していますが、その度合いには大きな個人差があります。

 

頭ではそれが分かっていても、つい「私の子育てが間違っているのかな...」と不安になってしまうのは、同年齢の他の子と比べてわが子ができていないことや、やりにくい部分を見つけたときではないでしょうか。

 

「以前、支援センターで知り合った親子4組でお出かけしたのですが、電車を待つ間、うちの子だけじっとしていられずずっと追いかけ回していて。ママの1人から、ビシッと叱らないからだよ、私だったら1発たたいちゃうかもと言われました。息子は叩いたりするとパニックで収集がつかなくなるので、私としては最善の方法だったのですが、みんなから見たら間違っているのかも…と悲しくなりました」(Sさん・3歳児のママ)

 

しかし、Sさんのお子さんと、ママ友のお子さんは、生まれつきの気質も成長の段階も異なり、同じ接し方をしても同じ結果になるわけではありません。

 

よく「比べる相手は他の子ではなく、過去のその子自身」が良いと言われます。

 

たとえできないことばかりに思えても、半年前や一年前より少しでも前進しているならば、「私の育て方、間違っている?」と心配する必要はないのではないでしょうか。

迷う理由②100か0かで考えてしまう

子育てに限らず、「絶対にこうでないといけない」と思い込んでいると、そこから外れてしまったときに迷い悩むことになります。

 

「2人目が生まれたあと、育休中は上の子の相手をしてあげられず、復帰後は手作りの食事を作る時間がなくて冷凍食品に頼りっぱなし。私はなんてダメな親なんだ…と落ち込む毎日でした。今思えば、ワンオペで2人を育てながら何もかも不自由なく満たしてあげられるはずがないし、気にし過ぎず笑顔で過ごせばよかったと思えますが、当時は0か100かみたいに思い込んでしまっていて。自分を責めていましたね」(Yさん・1年生と5歳児のママ)

 

今の日本社会は、子供を安全に世話するだけでは足りず、人に迷惑をかけないように、勉強やスポーツなどの才能を伸ばす環境を用意して…と非常にハードルの高い育児が特に母親に対して求められているように思います。

 

その中で、できないことに目を向けてしまうと「やっぱりこれじゃダメだ」という極端な見方に走りやすいでしょう。

 

「今日は完璧じゃないけどここまではできた!」

 

「あれとこれができなかったけど、やってあげたい気持ちをちゃんと持ってる!」

 

のように、グラデーションで考えられるようになるといいですね。

迷う理由③相談相手がいない

大昔、ヒトが群れを作って暮らし始めた時代は、複数の女性たちが協力して育児をしていたといわれています。

 

日本でも昭和初期まではまだまだその名残があり、「自分流の子育て」を貫くことが難しい反面「本当に私のやりかたでいいのかな?」と悩む場面も少なかったといえるでしょう。

 

しかし現在、祖父母世代や親戚など3世代で暮らしている世帯は全体のの10%まで減少。

 

子供の行動や発達に気になることがあれば、そのまま「親(とくに母親)の育て方」が原因と思われてしまいかねません。

 

Iさん(4歳児のママ)は、

 

「子供が習い事でお友だちともめてしまうことが続いた時期があって。そういうときはまず夫に相談するべきなんでしょうけど、仕事で疲れてるのもあって、パパッと結論を出そうとするんですよね。そんなのガマンさせろとか、嫌なら辞めれば?みたいに。あまりしつこく言うとイライラされます」

 

と、夫婦でも安心して相談できない辛さを訴えます。

 

また、Kさん(5歳児と2歳児のママ)は、ママ友同士でも相談できないことも多いと話します。

 

「幼稚園で上の子が時々遊ぶグループのママたちは、わりと早い時期からアメやジュースをおやつに出してくれるのですが、私は自分が虫歯で苦労したこともあり、3歳までは与えないようにしていたんです。でも、うちだけ下の子が食べられずにうらやましそうに見ているので、厳しすぎるのかなと迷ってしまいます。ママ友に相談しても、あげればいいじゃんって言われるだけなので」

 

Hさん(1歳児のママ)は、

 

「実家の母にいろいろ相談したいのですが、昔と今で育児の常識みたいなものもずいぶん変わってきましたよね。泣いてもすぐ抱っこすると抱き癖がつくとか、日光浴をするべきとか、お風呂上がりの白湯や離乳食初期の果汁を与えるとか…今は違いますよね。保健師さんでさえ、年配の方と若い方で言うことが違ったりします」

 

と、誰のいうことを基準にすればいいのか迷ってしまうそうです。

 

身近に適切な相談相手がいないと感じたら、園の保育士さんや支援センターの相談員さんなど、専門知識があってたくさんの子供を見てきている人に話を聞いてもらっては。

 

ママ友との育児方針の違いで迷う時には、ふだん直接関わることの少ない、姉妹や学生時代の友人で子育て経験のある人に話してみるのもいい方法ですね。

育児で迷うのは、そもそも正解がないから

私たちが子供の頃から繰り返してきた学校の勉強には、特定の「正解」があるものがほとんどでした。

 

また会社や職場にもそれぞれの規則やマニュアルがあり、それに沿って全員が判断し行動しているはず。

 

ところが育児には、「子供が自立して幸せに生きていける日がくるまでサポートする」という共通の目的こそあれ、ではそのためには具体的に何をすればいいのか、どう接すればいいのかという唯一の方法は存在しません。

 

転んだときに、「自分で立ちなさい」と手を出さず、泣かずに立てたら思い切りほめる...という対応で強くなれる子もいれば、やさしく手をさしのべてあげたほうが安心してすくすく育つ子もいます。

 

つまり、育児で「これって正しいの?」と迷ってしまうのはごく当たり前のことだといえますね。

 

もし、自分が今回紹介した3つの理由で悩んでいることに気付いたら、

 

  • むやみに他の子と比べず、その子自身の成長を喜ぶ
  • 親として完璧を目指さず、できていることに目を向ける
  • 安心して相談できる相手を見つける

 

などを試してみて下さい。

 

少しでも育児への不安が減って、ラクに向き合える助けになれば幸いです。

文/高谷みえこ
参考/内閣府「令和2年版高齢社会白書(全体版)」 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/zenbun/pdf/1s1s_03.pdf