こんにちは。メンズカウンセラーの中村カズノリです。
夫婦関係に問題を感じている読者の悩みの解決方法を探っていく本連載。今回は、夫と2人の子どもとの4人暮らしのFさん(45歳)にお話を伺いました。
Fさんの相談内容
子どもたちは中学生と小学校の高学年で、進路のことなど勉強絡みの悩みが出てくる年頃。夫にもっと子どもたちとコミュニケーションを取ってほしいと常々思っています。宿題を見てあげたり学校や塾での様子を聞いたりして、積極的に関わってほしいんです。
それなのに夫は、暇さえあればスマホでゲームばかり。食事中や運転中は触らないとはいえ、気になってしまいます。
ゲーム以外にも、夫はテレビドラマ視聴やマンガ、プラモデルなどとにかく多趣味で、時間が足りない状態。買ったはいいけれど作る暇がないプラモデルも増えているほどなんです。注ぎ込んだお金ももったいないし、もう少し趣味を絞ればいいのに…と思わずにいられません。
暇さえあればゲームにテレビ…子どものことにはお構いなしの夫
これ、僕にとっても耳の痛い話でした。「妻が家事をしている間に夫だけ好きなことをしている」とか、「スマホを見てばかりで家族と向き合っていない」というのは、僕がよく妻に小言を言われるポイントでもあります。
言い訳をするなら、ゲームやSNSだけでなく仕事で使うこともよくあるのですが、妻から見ればスマホをいじっていることに変わりはなく、「こっちは3歳児の相手で大変なのに、知らん顔して遊んでる」となってしまうんですよね。
話を戻しましょう。
Fさんのパートナーの場合は、根っからのテレビ好きで、本当はずっとつけていたいタイプ。お風呂に入るときにも音があったほうが落ち着くそうで、誰も観ていないテレビがつけっぱなし…ということもよくあるそうです。
Fさんが特に心配しているのは、子どもたちへの影響です。パートナーはFさんから言われればテレビを消すけれど、子どもが宿題をしていることなどはまったく配慮しないそう。「親が何をしていようが、それで集中できなくなるのは子どもの問題」…と、良くも悪くも割りきっている様子だと言います。
コロナの影響で土日に出かけられなくなるまでは、子どもたちの勉強を見るのも全部Fさんまかせ。「学年の違う2人の勉強をひとりで見るのはすごく大変だった」と振り返ります。
育った文化が驚くほど考え方を左右する
ここまでのお話を聞いて、Fさんとパートナーの育った文化、原家庭のあり方はずいぶん違うようだと感じました。
そこで、夫婦が育った環境について、ちょっと深掘りしてみることにしましょう。
読書が趣味の物静かな父…テレビを撤去されたことも
Fさんのお父さんはゲームなどはまったくやらず、『三国志』などの歴史小説や時代小説を読むのが趣味という、物静かで厳格な人でした。
10代の頃、きょうだいとテレビのチャンネルをめぐって喧嘩したことがきっかけで一時期テレビを家から撤去されてしまい、1〜2年テレビなしで暮らしたこともあると言います。
とはいえ、Fさん自身はそのことがそれほど嫌だったわけではなく、反動から成人後にテレビにどハマりすることもなかったそう。今も観たい番組だけを観るスタイルで、テレビがなくても困らないそうです。
それで、パートナーのテレビへの執着心が不思議に思えてしまうんですね。
賑やかな大家族で育ったパートナー
パートナーの実家は、Fさんの実家とは正反対。祖父母と同居していたこともあり、大家族でワイワイ賑やか、いつもテレビがついているのが当たり前の家庭でした。
義母は好きな花の絵柄の食器を集めるなど、コレクターの一面があるのだとか。パートナーの凝り性もある意味、遺伝と言えるかもしれません。
夫婦のすれ違いの主な要因は「育った家庭環境」にある
人は無意識に、自分が育った家のやり方をモデルにします。それがパートナーと大きく異なっていると、お互い戸惑ってしまいがちです。
Fさん夫婦の例でいえば、「観ないなら消せばいいのに、なぜテレビをつけっぱなしにするの?」(Fさん)、「音があって賑やかなほうが落ち着くだけのに、どうしてそんなことで目くじらを立てるの?」(パートナー)というようなすれ違いが起こるわけです。
こういった違いは、どちらが上とか、どちらが良いとかというものではありません。ただ文化が違うだけ。たとえば、和食ではお椀を持って味噌汁を飲むのは当たり前だけど、洋食でスープ皿を持ち上げるのはマナー違反、というのと同じようなものです。
でも、お互いに自分のやり方が普通だと思っていると、すり合わせが難しくなるのもよくあること。やり方を間違うとどんどんすれ違ってしまいます。
Fさんのお宅では、パートナーが自身のこだわりを押し通そうとするようなことはなく、Fさんがやめてと頼めばやめてくれるそう。
「それなら別に問題ないんじゃない?」と思われるかもしれませんが、実はこれ、そう単純な問題ではないのです。
次回は、Fさんの本当の不満と、こうしたマイナス感情との付き合い方について、お話ししたいと思います。
文/中村カズノリ イラスト/竹田匡志