子供が言葉をどんどん覚えていく2~3歳頃から5歳頃にかけて、話し始めに「あ・あ・あのね」のように音を連続して発音してしまったり、話そうとしたときにすぐに声が出てこなかったりという「吃音(きつおん)」が現れる子がいます。
その割合は幼児から小学生では10~20人に1人ともいわれます。「意外と多い」と感じるのではないでしょうか。
今回は、子供の吃音の原因や基礎知識と、もしわが子や周りの子に吃音が見られた場合、親や大人はどう対応するのが良いのかを紹介します。
「吃音」(どもり)の原因は完全に分かっていない
はじめに、吃音には事故など特定のきっかけで起こる「獲得性吃音」と、成長過程で現れてくる「発達性吃音」の2種類がありますが、今回の記事では全体の9割を占める「発達性吃音」について取り上げています。
吃音が現われるのは2~5歳が多く、男の子のほうが女の子より4~7倍も割合が高いとされています。
現在、子供の吃音の原因と考えられているのは大きく分けて次の3つです。
- 体質的要因(生まれつき、口や舌の構造や動かし方が吃音になりやすい)
- 発達的要因(ことばや思考が急激に発達する時期である)
- 環境要因(周囲の人の接し方や生活環境)
ただ、環境の変化(引っ越しなど)や、育て方(厳しすぎるしつけなど)といった単一の原因で吃音が起こることは少なく、たまたまその時期に吃音が始まっただけ…という見方が主流です。
吃音の出ている子におすすめの接し方
もし、わが子や、身近な小さい子が話そうとするとつっかえてしまう…という場合、次のような対応は避けた方がよいとされています。
- 注意する、叱る
- からかう、笑う
- 言い直しをさせる
- 子供が話し終わる前に別の話題を始めてしまう
- 「落ち着いて」「ゆっくり話そう」「深呼吸して」などと指示を出す
叱ったりからかったりするのはダメと誰でも分かりますが、実は「ゆっくり話そう」などと指示するのも、発話に意識を向けてしまうという意味で良くないそう。
また、子供はいま話したいことがあるのに、「深呼吸して」など、別の行動を求められるのも負担になります。
いっぽう、おすすめの対応は次のようなもの。
- 手を止めて、ゆったりした気持ちで子供の話を聞く
- 子供に返事するときは、頭の中に答えが浮かんでも一呼吸置いてから口を開く
- 質問は「今日は何をしてきたの?」より「今日はお砂遊びした?」など一言で答えられるように工夫する
- きょうだいで話しかけてきたときは、「順番に聞くね」と約束する
子供同士で話し方を真似されたり、からかわれたりするのはとても辛いこと。
もしそんな場面を見たら、わざとではないこと、からかわれたら嫌な気持ちになることを教え、「一生懸命お話しているときは話の内容を聞こうね」と伝えたいですね。
吃音は自然に治る?
幼児期に吃音があった子のうち、半数から7割の子は数年以内に自然に吃音が消失または軽い訓練や指導で改善するといわれています。
しかし、吃音が出ない時期と出る時期のうちしだいに出る時期が増えてくる、話しながらまばたきしたり手足に力が入る「随伴運動」が頻繁に出るような場合は、「言語聴覚士」など専門家のサポートを受けたほうが良い場合もあります。
まずは地域の保健センターやかかりつけの小児科などに相談すると、最適な施設につないでもらえます。
一般社団法人日本言語聴覚士協会や、各都道府県の言語聴覚士会のホームページでも、言語聴覚士のいる施設を探すことができます。
おわりに
成人で吃音のある人は約100人に1人といわれています。
訓練や治療によりすらすらと話せるようになればもちろん生活しやすくなりますが、もしそうでなかった場合も、これからは多様性が尊重される時代。
話し上手な人もゆっくりと話す人も吃音のある人も、それぞれ個性として認められる社会になっていけば、より皆が生きやすくなるのではないでしょうか。
※なお、今回の記事は、書籍や公的機関等のデータをもとに構成したものであり、医師や専門家の診断に代わるものではありません。
文/高谷みえこ ※画像はイメージです
参考/書籍『保護者の声に寄り添い、学ぶ 吃音のある子どもと家族の支援:暮らしから社会へつなげるために』堅田 利明/菊池 良和 著 学苑社
一般社団法人 日本言語聴覚士協会 https://www.japanslht.or.jp/
日本医療研究開発機構(AMED)「吃音(どもり)って何?ー多くの皆様に知っていただきたいことー」 https://plaza.umin.ac.jp/kitsuon-kenkyu/guideline/v02/YoujiKitsuonCGLTenpu1.pdf
吃音ポータルサイト https://www.kitsuon-portal.jp/index.html