小さい子どもがよく行う「指しゃぶり」。

 

手の親指を吸う動作は可愛らしく見えますが、我が子の場合は4歳になっても寝ているときに続けているのでちょっと気がかり。

 

親指の形を見ると、ボコっと変なこぶのようなものさえついています。たこでしょうか…。

 

歯科に連れて行くと「あ、まだ親指吸ってますね。前歯が出てきていますよ。指しゃぶりはやめた方がいいですね。滑舌も悪くなります」との注意も受けます。

指吸いする子

しかし、子どもに「指しゃぶり、もうやめようね」と言っても「寝るときだけ」と言って、うつ伏せになって隠れるように吸う始末。

 

このまま子どもの親指にこぶができ、前歯がニョキニョキと前に出ていくのを黙って見ているしかないものなのなのでしょうか。

 

母親の育児相談に多くのっていらっしゃる臨床心理士の帆足暁子先生に教えていただきました。

指しゃぶり「やめなきゃ」と葛藤させないで

「まず、何歳であっても指しゃぶりが必要な子には、必要なんです」と帆足先生。

 

口でチュパチュパすることが安心につながり、まどろんで安心していくとのこと。指しゃぶりをやめさせたら、眠れなくなって不眠になったというお子さんもいたと言います。

 

「眠りの方が重要で、眠るために指しゃぶりをしていいよと言ってあげた方がいいですよ」とのことです。

 

「指しゃぶりはいけない」と言われると、言葉が理解できる子ほど、自分の中で「指しゃぶりしたい自分」と、「指しゃぶりしてはいけない自分」の間で葛藤になって、せっかく指しゃぶりをしても安心できなくなり、安心しようとして執拗に指しゃぶりをするようになってしまうそう。

 

特に転居や転園など、環境が変わった場合は、頑張ってストレスが溜まっているケースもあるといいます。その疲れを癒して、次の日を生きていくための「指しゃぶり」をしているかもしれず、優しく見ていてあげた方が良いとも。

 

例えば、理解力が高い子は、園の先生などからも期待されがちです。その期待に応えようと頑張るあまり、夜は疲れきって指しゃぶりに繋がることもあると言います。

 

帆足先生の知り合いの中には、中学3年生になるまで、寝るときは指しゃぶりをしていた子もいたそうです。それでも普通に社会人になったとのこと。指しゃぶりはしていて大丈夫だと言います。

 

ただし注意したいケースも。

 

昼間もずっと指を吸ってゴロンと寝ている場合は、子どもの不安感、自主性の発達の問題として考える必要があるそう。

 

しかし、叱られたあとや夜寝るとき、テレビをみているときなどにだけ吸っているならば問題はないと話します。

なぜ吸うのか、子どもの気持ちをわかってあげて

そもそも人はなぜ指を吸うのでしょう。

 

「指しゃぶりは母親の体内にいるときから始まっていて、生まれてから母乳やミルクを摂取するための練習をしているともいわれています。同時に吸う感覚は安心感につながるのです。」と帆足先生。

 

つまり、指しゃぶりをするということは、子どもが安心を必要としている状態にあるということです。親が不安な子どもの気持ちをわかってあげることで、安心することもあります。

 

あるいは、子どもの気持ちを言葉にしてあげることで、子どもが自分の気持ちに気づき、整理できて不安な気持ちが消えていくこともあります。

 

例えば指しゃぶりをしている状況から、「指を吸っていると、安心して気持ちよく眠れるんだね」や、「なにか寂しくて指を吸っていると安心するのかな」などです。 「指しゃぶりは不安を安心に変えるストレス解消法のひとつでもあります。そういうストレス解消法を持っている子どものほうが強くもあるんですよね。

 

どうやったら自分が安心するかわかっているということですから」。

指しゃぶり、禁止されてチックが出ることも

反対に、親の理解がなく無理やり指しゃぶりなどのストレス解消法が禁止されてしまうと、安心感を得ることが出来ず、「チックの症状が出る」「いらいらして怒りやすくなる」など、別の行動が起きることが懸念されます。

 

それでも親としては歯並びが気がかりだという場合もあると思います。その為には、執拗に指しゃぶりをしなければならない状態を解消してあげることが一番大切です。

 

ですから、「親としてすべきことは、子どもを見守り、極端な心配をしないこと。また、状況をよく観察し、原因となっている子どものストレスがわかったら、その気持ちをわかってあげたり、子どもの気持ちを言葉にしてあげることではないでしょうか」

 

ちなみに、指しゃぶりをやめなさいと言い続けると、気持ちをわかってくれない悲しさが怒りになって、わざと吸って見せて、ママを怒らせようとするかもしれません。

 

「それは子どもからのSOSなんです」と最後に教えてもらいました。

 

 

その夜、私もさっそく、子どもが指しゃぶりをしていたら「安心するんだね」と言葉に置き換えて話をしてみました。すると、嬉しそうにうなづきながら指を吸っていました。

 

前より少し笑顔が明るくなったような気もします。指しゃぶりをしていた罪悪感が消えたのかもしれません。でも前歯の心配は残るのですが…。

 

帆足先生
PROFILE  帆足暁子さん 

保育士資格や幼稚園教諭1種免許を持つ臨床心理士。親と子どもの臨床支援センター代表理事。長年、育児やこころの相談に応じている。主な著書に「0.1.2.歳児愛着関係をはぐくむ保育」(学研)などがある。
取材・文/天野 佳代子 イラスト/石川さえ子